半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

消費延期化を解除する鍵
-90年代消費の分析
大場美子

 90年代の消費は、それ以前と様相を異にしている。可処分所得に占める消費支出の割合である平均消費性向が低下し続け、消費と所得の間の乖離が拡大している。所得の増減だけでは90年代消費の動向を説明することはできない。我々が消費動向を左右する要因として推定しているのは、価値意識の変化と、消費の主体である家族と個人の生き方の変容である。はじめに消費の動向を確認した上で、弊社で継続している生活研究を踏まえて90年代消費を分析し、ヒット商品の理由からアプローチのヒントを探る。

90年代の消費動向
 消費の全体的な状況を捉えるために、家計調査より平均消費性向の推移を概観してみる。家計調査が始まった1953年以来、消費性向は低下し続けていた。しかし、70年代後半から80年代前半にかけて、上昇した時期があった。この時は、さらなる高齢化の進展によって、平均消費性向が上昇し続け、貯蓄率が低下し、企業の投資にまわる資金が縮小してしまうことが懸念された。しかし結果は逆で、82年以降消費性向は再び低下し続けている。
 消費性向の低下は、消費は所得に依存するという一般的な前提が崩れ、所得と消費の間が乖離していることを示す。実際に所得と消費の変化傾向をみるために、70年時点の可処分所得と消費支出金額をそれぞれ1.0として伸び率をみると、99年の可処分所得は4.67倍、消費支出が4.19倍と乖離が拡大している(図表2)。グラフで明らかなように80年代後半から所得と消費の間に乖離が生じ、90年代に入って一層鮮明になった。常に所得の増加率よりも消費が下回り、所得が増加しても消費が増えない。これが消費不況といわれる90年代の消費動向である。
 次に家計費を、必需的支出、選択的支出、家計黒字に分けてその構成比をみてみると(図表3)、99年には必需的支出が約40%、選択的支出30%、黒字率30%になっている。この10年の構成比の変化では、必需的支出が減少し黒字率が拡大しており、黒字の中で貯蓄率が増加していることが確認できる。
 90年代消費の背景に、家計費の長期的な構造変化があって、その結果、資源配分を決める主体としての個人の消費意識や価値意識が消費に与える影響が大きくなっていると推測される。貯蓄は「未来の消費」といえるが、昨今のほぼ0%という超低金利状況からすると貯蓄は経済合理性に合わない。「未来の消費」というよりは消費の「延期化」が起こっていると捉えた方がよいと考えられる。

 本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。
 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。

メンバーシップサービス会員ご登録についてはこちらをご覧ください。
メンバーシップサービス会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。


お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

新着記事

2024.04.12

成長市場を探せ ビスケット市場、4年連続プラスで初の4,000億超えに(2024年)

2024.04.11

24年1月の「現金給与総額」は25ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.04.10

マーケティング用語集 イールドカーブ

2024.04.09

24年2月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも悪化

2024.04.08

企業活動分析 任天堂の23年3月期は主にハードウエアの売上減が響き減収減益

2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

2024.04.04

企業活動分析 NTTの23年3月期はITサービス拡大で増収増益、過去最高更新

2024.04.03

24年3月の「乗用車販売台数」は3ヶ月連続の2桁マイナス

2024.04.02

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 20代男性の内食志向にマッチして伸びる冷凍餃子

2024.04.01

24年2月の「新設住宅着工戸数」は9ヶ月連続マイナスに

2024.03.29

企業活動分析 KDDIの23年3月期は法人向け好調等で増収、過去最高益更新

週間アクセスランキング

1位 2024.04.02

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 20代男性の内食志向にマッチして伸びる冷凍餃子

2位 2023.04.05

日本人の7割はチーズ好き ぜいたくニーズに支えられ伸長

3位 2016.03.16

【マーケティングFAQ】どうすればブランド力を強化できるか

4位 2024.03.28

月例消費レポート 2024年3月号 消費は足踏み状態が長期化している-インフレ見通しや消費マインド改善などによる消費回復の後押しに期待

5位 2024.04.03

24年3月の「乗用車販売台数」は3ヶ月連続の2桁マイナス

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area