半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2021年09月27日

月例消費レポート 2021年9月号
コロナの状況が好転 消費回復へ展望が開けつつある
主任研究員 菅野 守

※図表の閲覧には会員ログインが必要です。

 消費は前月の悪化の動きに一旦歯止めがかかり、持ち直しの動きがみられる。

 雇用環境は改善が続き、収入環境は改善傾向を保っている。ただし、消費マインドが悪化に転じているのは、気がかりだ。

 コロナウイルス新規陽性確認者数は既に、低下トレンドに転じている。政府は、10月から11月にワクチン2回目接種完了することを見越して、ワクチン接種済みなどを条件に行動制限を緩和していく方針だ。

 今後、コロナ感染を取り巻く状況の好転で政治的なボトルネック打開への気運が高まり、行動制限緩和が決定すれば、消費回復に向けてより確固とした足掛かりを得ることとなるはずだ。

 JMR消費INDEXは、2021年7月時点で80.0となり、前月よりも上昇した。近似曲線も、2019年9月頃を底に上昇トレンドを維持している(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数をみると、支出関連3指標が揃って改善となった。消費支出は再び改善し、平均消費性向は5ヶ月連続で改善している。預貯金も取り崩しの動きが続いている。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)は、2021年7月時点で前月よりも改善の数が増えている(図表2)。

 2021年7月からみて、コロナ前の一昨年同月にあたる2019年7月時点と比較すると、INDEXの全15指標中、改善はファーストフード売上(一昨年同月比伸び率:104.7%)、食料品(同:114.9%)、家具・インテリア売上(同:108.5%)、家電製品売上(同:135.5%)の4指標である。プラスとなった領域数は、前月よりも増加している。

 消費支出の伸びは名目と実質ともに、再びプラスに戻した(図表4)。ただし、一昨年同月比は、名目と実質ともにマイナスが続いている。

 10大費目別では、2021年7月は、名目では前月よりも改善し、プラスが5費目に対しマイナスが5費目と拮抗している。実質では前月同様、プラスが4費目に対し、マイナスが6費目となっている(図表5)。2021年7月に前年同月比と一昨年同月比の双方で伸びがプラスとなっているのは、名目では食料の1費目だけである。実質では該当する費目はひとつもない。

 一方で、前年同月比と一昨年同月比の双方で伸びがマイナスとなっているのは、名目では光熱・水道、保健医療、教育、その他の消費支出の4費目、実質では住居、光熱・水道、保健医療、教育、その他の消費支出の5費目である。

 販売現場では、スーパーは6か月ぶりに改善となり、一昨年同月比でもプラスを保っている。ドラッグストアは一昨年同月比でも改善が続いている。家電大型専門店、ホームセンターでは悪化が続いているが、一昨年同月比ではプラスを保っている。コンビニエンスストアは改善が続くも、一昨年同月比はマイナスのままである。

 小売業全体の売上は、5ヶ月連続でプラスとなっている。ドラッグストアは、3ヶ月連続で改善している。コンビニエンスストアは、5ヶ月連続でプラスとなっている。百貨店は、再びプラスに戻した。スーパーは、6か月ぶりにプラスに転じた。一方で、ホームセンターは3ヶ月連続で悪化している。家電大型専門店は、マイナスが2ヶ月続いている(図表9図表10)。

 外食売上は、全体では2021年4月以降プラスが続いている。業態別では、ファーストフードは2021年3月以降プラスを保っている。一方で、ファミリーレストランとパブ・居酒屋は2ヶ月連続で悪化となっている(図表18)。一昨年同月比では、2021年7月は、ファーストフードはプラスに戻したが、全体やファミリーレストラン、パブ・居酒屋ではマイナスが続いている。

 新車販売では、乗用車(普通+小型)の伸びは、6ヶ月連続でプラスとなった。軽乗用車の伸びは3ヶ月連続でマイナスとなっているが、前年同月比伸び率の値は上昇している(図表11)。ただし、一昨年同月比では、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている。

 家電製品出荷では、AV機器と白物家電はいずれもマイナスに転じている。情報家電のうち、スマートフォンはプラスであるが、ノートPCはマイナスが続いている(図表12図表13図表14)。AV機器では、BDレコーダーとスピーカシステムは一昨年同月比でもマイナスである。白物家電では、401L以上の電気冷蔵庫と洗濯乾燥機は一昨年同月比でもマイナスである。ノートPCも一昨年同月比でもマイナスである。

 新設住宅着工戸数は5ヶ月連続でプラスとなっている。持家では2020年11月以降プラスが続いている。分譲住宅・一戸建ては、3ヶ月連続でプラスである。分譲住宅・マンションもプラスへ戻した(図表15)。

 三大都市圏別の推移をみると、持家では、首都圏、近畿圏、中部圏、その他など全ての地域で4ヶ月連続プラスとなっている。マンションでは、首都圏、近畿圏、その他でプラスとなっている。特に首都圏は、3ヶ月連続のプラスである(図表16図表17)。

 一昨年同月比では、2021年7月は、分譲住宅・マンションでプラスとなっている。特に首都圏では、持ち家は3ヶ月連続のプラス、マンションは2ヶ月連続のプラスである。

 雇用環境は、改善が続いている。2021年7月時点で、完全失業率は2ヶ月連続で低下し、有効求人倍率は2ヶ月連続で上昇している(図表6)。

 収入環境では、改善傾向を保っている。2021年7月時点で、現金給与総額、所定内給与額、超過給与の全てで、伸びは再びプラスとなっている(図表7)。

 一方で、消費マインドは悪化している。消費者態度指数は2ヶ月連続でマイナスとなり、景気ウォッチャー現状判断DIは3ヶ月ぶりに悪化に転じた(図表8)。

 総合すると、消費は前月の悪化の動きに一旦歯止めがかかり、持ち直しの動きがみられる。

 消費支出は再びプラスに戻し、10大費目でも改善に転じる動きが散見される。マイナスが続いてきたスーパー売上もようやくプラスに転じた。外食では、ファーストフードでいち早くコロナ前の水準への回復の動きが認められる。

 家電製品出荷では総じてマイナスに転じる動きが目立っている。しかし、新車販売は改善傾向を保ち、新設住宅着工戸数は首都圏を中心に改善が続いている。

 雇用環境は改善が続き、収入環境は改善傾向を保っている。ただし、消費マインドが悪化に転じているのは、気がかりだ。

 全国のコロナ新規陽性確認者数は、8月20日をピークに低下トレンドに転じた。直近の9月21日時点で、全国の新規陽性確認者数は2,000人を切り、1,758人となった。

 9月13日の政府公表によると、国内で新型コロナウイルス・ワクチンの2回目接種を終えた人の割合が全人口の50%を超えた。

 政府としては、10月から11月の早い時期に、希望者全員のワクチン接種を完了する目論見だ。そして、早ければ10月以降、ワクチン接種済みなどを条件に、新型コロナウイルス対策の行動制限を緩和していく方針を打ち出している。

 菅義偉首相が自民党総裁選不出馬を表明したのを機に、政治的なボトルネックの打開への気運が高まっている。コロナ感染を取り巻く状況の好転は、そうした気運を後押ししていくと期待される。

 今後、行動制限緩和への道筋が定まれば、消費回復に向けてより確固とした足掛かりを得ることとなるはずだ。


図表を含めた完全版を読む

完全版を読むには無料の会員登録が必要です。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2024.11.08

消費者調査データ No.416 レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア

2024.11.07

企業活動分析 楽天グループの23年12月期は27期連続増収も、モバイルへの投資で4期連続の赤字

2024.11.07

24年9月の「新設住宅着工戸数」は5ヶ月連続のマイナス

2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

2024.11.05

企業活動分析 ファンケルの24年3月期算は国内売上がけん引し、3期ぶりの増収増益へ

2024.11.05

企業活動分析 コーセーの23年12月期は、国内好調も中国事業低迷で増収減益に

2024.11.01

成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場(2024年)

2024.10.31

月例消費レポート 2024年10月号 消費は緩やかな改善が続いている-政治が消費回復のリスクに

2024.10.31

消費からみた景気指標 24年8月は6項目が改善

2024.10.30

24年8月の「広告売上高」は、4ヶ月連続のプラス

2024.10.30

24年9月の「ファミリーレストラン売上高」は31ヶ月連続プラス

2024.10.30

24年9月の「ファーストフード売上高」は43ヶ月連続のプラスに

2024.10.29

MNEXT やはり起こった「雪崩」現象―「岩盤保守の正体」

2024.10.29

24年9月の「全国百貨店売上高」は31ヶ月連続のプラス、高額品やインバウンドがけん引

2024.10.28

企業活動分析 富士通の24年3月期は増収減益へ、サービスソリューションへの重点シフト明確化

2024.10.28

企業活動分析 カシオ24年3月期は増収減益、収益基盤強化に向けた事業構造改革に取り組む

2024.10.25

24年9月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月連続のプラスに

週間アクセスランキング

1位 2024.10.29

MNEXT やはり起こった「雪崩」現象―「岩盤保守の正体」

2位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

3位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2024.09.24

MNEXT 価値で捉え、群れ集団を狙えー2025年のマーケティング

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area