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(2013.12)
月例消費レポート 2013年12月号
8月に並ぶ高水準を記録。2013年に入り上昇に弾みがつく消費回復
主任研究員 菅野 守

1.はじめに
 2013年の暮れも押し迫り、年末恒例のイベントなどもメディアをにぎわせている。2020年東京五輪招致の立役者の一人であった猪瀬直樹・東京都知事は、医療法人「徳洲会」グループの公選法違反事件に関連して浮上した5,000万円の裏金疑惑で知事辞職に追い込まれ、更には贈収賄事件として東京地検特捜部の追及を受けるという苦境に立たされつつある。経済に関しては比較的良好な状況が続いたまま年の瀬を迎えつつある一方で、政治に関しては、前述の徳洲会事件や特定秘密保護法案を巡る政治的対応などで、有権者の政治に対する信頼感を若干揺るがす事態が、最近1~2ヶ月で目立ってきている。政治に対する信頼感は、「アベノミクス」も含めた安倍内閣の円滑な政権運営に対する、消費者側からの心理的な支えとして重要な役割を果たしている。それだけに、暮れにかけて顕在化してきた政治的リスクが、今後の経済運営の足を引っ張るおそれも決してゼロではない。
 2013年12月9日に内閣府より公表された「四半期別GDP速報(2013年7~9月期・2次速報)」によると、2013年7~9月期のGDP成長率(季節調整済前期比)は、実質+0.3%〔第1次速報では+0.5%〕、名目+0.3%〔第1次速報では+0.4%〕となり、実質、名目ともにプラス成長を保ちはしたが、1 次速報値からは下方改定されている。需要項目別に成長率(季節調整済前期比)をみると、特に需要の三本柱のうち、民間最終消費支出は実質+0.2%〔第1次速報では+0.1%〕、名目+0.5%〔第1次速報では+0.4%〕となり、いずれも1 次速報値から上方改定された。他方、民間企業設備は実質+0.0%〔第1次速報では+0.2%〕、名目+0.2%〔第1次速報では+0.4%〕となり、いずれも1 次速報値からは下方改定されている。また、財貨・サービスの輸出は実質-0.6%〔第1次速報では-0.6%〕、名目+0.8%〔第1次速報では+0.8%〕となっており、ともに1 次速報値と変わりはない。残りの需要項目についても確認すると、公的固定資本形成は実質+6.5%〔第1次速報では+6.5%〕、名目+6.6%〔第1次速報では+7.6%〕であり、名目成長率に関しては1 次速報値からは下方改定されている。民間住宅は実質+2.6%〔第1次速報では+2.7%〕、名目+3.2%〔第1次速報では+3.4%〕であり、いずれも1 次速報値からは下方改定されている。民間在庫品増加の前期比寄与度は、実質+0.2%〔第1次速報では+0.4%〕、名目+0.1%〔第1次速報では+0.3%〕であり、寄与率はいずれも1 次速報値からは下方改定されている。他方、財貨・サービスの輸入は実質+2.2%〔第1次速報では+2.2%〕、名目+4.5%〔第1次速報では+4.5%〕となっており、ともに1 次速報値と変わりはない。
 今回の2次速報での改定状況を総合すると、実質GDP成長率の下方改定に加え、前回の1次速報において実質でプラス成長に寄与していた民間企業設備、民間住宅、民間在庫品増加(すなわち、企業による意図的な在庫の積み増し、あるいは意図せざる在庫の増加)などの項目で、実質成長率や実質寄与率の低下が目立っていることが確認される。中でも、需要の三本柱のひとつである民間企業設備の実質成長率が、2013年4~6月期の+0.9%から、7~9月期には(符号はプラスではあるが)ゼロ%にまで大きく低下することとなったのは、景気の先行きにとってはあまり芳しくない材料ではある。他方で、前回の1次速報よりも上方改定されている項目は、民間最終消費支出ただひとつだけである。この点は、消費の底堅い推移を印象づけるものとなってはいるが、マイナス方向に足を引っ張っている民間企業設備、民間住宅、民間在庫品増加での成長率の落ち込みを完全にカバーしきれるほどの力強さには、やや欠けている点は否めない。
 今回公表された2次速報の結果に対し、一部メディアからは、「景気拡大の勢いは鈍化しつつある」「政策(特に金融緩和)の効果は認められず景気回復には程遠い」といった論調が示されたりもしている。他方、エコノミストや市場関係者の間での見方としては、実質成長率の数値自体は事前予想よりも下振れする結果となってはいるが、内容を見る限りでは景気の先行き判断について本質的な変更を加える程の材料とはみなしていない、というのが大勢のようである。
 需要の三本柱のうち、弱い動きがみられた設備投資の先行きを見極める材料としても注目されたのが、2013年12月16日に日本銀行より公表された「第159回全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)である。今回の12月短観では、全産業、製造業、非製造業のいずれでも、大企業、中堅企業、中小企業の全てで、業況判断は前回よりも改善している。特に前回9月調査時点では、全産業、製造業、非製造業のいずれでもマイナスとなっていた中小企業は、今回の12月調査では業況判断がともにプラスに転じている。企業マインドの改善は更に進展していることが、今回の12月調査でも確認された形だ。ただし、3ヶ月後の「先行き」の業況判断については、全産業、製造業、非製造業のいずれでも、大企業、中堅企業、中小企業の全てで、現状よりも悪化すると見ている点は注意を要する。
 設備投資計画として、ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資額)の2013年度計画伸び率をみると、全規模合計では、全産業で+5.7%〔前回調査からの修正率:-0.1%〕、製造業で+6.7%〔前回調査からの修正率:-1.6%〕、非製造業では+5.2%〔前回調査からの修正率:+0.7%〕である。企業規模別にみると、大企業では、全産業で+4.6%〔前回調査からの修正率:-1.6%〕、製造業で+5.5%〔前回調査からの修正率:-1.6%〕、非製造業では+4.0%〔前回調査からの修正率:-1.6%〕である。中堅企業では、全産業で+6.4%〔前回調査からの修正率:+0.8%〕、製造業で3.1%〔前回調査からの修正率:-1.0%〕、非製造業では+8.5%〔前回調査からの修正率:+2.0%〕である。中小企業では、全産業で+10.7%〔前回調査からの修正率:+6.3%〕、製造業で17.2%〔前回調査からの修正率:-2.4%〕、非製造業では+7.3%〔前回調査からの修正率:+11.9%〕である。日銀短観の設備投資計画からは、大企業は総じて、中堅企業と中小企業では製造業で、設備投資のスタンスが(前回の9月調査時点と比べ)若干弱気になっている面があるものの、中堅企業と中小企業の非製造業では(前回の9月調査時点よりも)設備投資のスタンスがより強気な方向にシフトしていることが読み取れる。前々回の6月調査時点では大企業主導で始まった設備投資への前向きな動きが、時間の経過とともに、中小企業から更には中堅企業へと広がってきていることは確かだ。ただし、先行してきた大企業で設備投資の回復の動きが足許で鈍化している点は、気がかりな材料だ。
 2013年12月19日から20日にかけて開催された2013年12月度の日本銀行・金融政策決定会合にて、景気判断は、前回11月と同様、今回の12月も「景気は、緩やかに回復している」とし、3ヶ月連続で判断を据え置いている。需要の三本柱である個人消費、設備投資、輸出に対する判断に着目すると、個人消費は「個人消費は、雇用・所得環境が改善するなかで、引き続き底堅く推移している。」としており、雇用・所得環境の改善状況については前回11月よりも踏み込んだ表現がなされている。輸出は「持ち直し傾向にある。」とし、設備投資は「企業収益が改善するなかで、持ち直している。」としており、いずれも前回11月の判断を踏襲している。景気の先行きに関しては、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。」としており、消費税増税のマイナス・インパクトに対する警戒姿勢は示しつつも、その悪影響を十分に乗り越えうるくらいに景気回復の動きは底堅いとみているようだ。他方、政府は、2013年12月24日に公表予定の2013年12月分の「月例経済報告」において、景気の基調判断は3ヶ月連続で据え置く見込みだが、物価に関する基調判断から「デフレ」という表現を削除する方針を明らかにしている。デフレの表現がなくなるのは「緩やかなデフレ状況にある」とした2009年11月以来4年2ヶ月ぶりのこととなるが、この背景として、消費者物価指数の上昇が続くなどデフレ脱却の動きが進展していることを踏まえてのものといえる。
 政府・日銀双方とも、景気の現状認識並びに先行きに関する諸々の判断からは、今後の日本経済について強気な方向へのスタンスの転換が示唆されている。エコノミストや市場関係者の側も概ね、一部経済指標でみられたような足許での弱い動きなどを、殊更材料視はしていないようである。需要の三本柱(個人消費、設備投資、輸出)を中心に回復への足場を固め、成長余力として、消費税増税のマイナス・インパクトを吸収できるだけの「バッファー」を今のうちにできるだけ蓄えておけるかどうかで、増税後の景気の先行きは分かれてくることとなろう。とりわけ消費に関しては、12月のボーナス商戦、年末商戦、年末・年始のレジャー動向等々が、回復の底堅さを確かめる場となってくる。

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