半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:1999年01月01日

カゴメ株式会社
農業食品企業"カゴメは「野菜工場」で生トマトを作る
戦略分析チーム 川口

全文の閲覧には有料の会員登録が必要です。
登録済みの方はこちらからログインして全文をご利用ください。

 農地や土にこだわる減農薬・有機農法などが脚光を浴びる一方で、室内で人工光源などを利用することで、外界の天候に影響されずに安定数量を収穫できる「野菜工場」が広がっている。価格変動を抑えられることで需要家だけでなく、生産者にとっても収入のメドがたちやすいなどの利点もあり、先進的な営農家が将来有望なビジネスと見込んで取り組んでいる例が多い。施設は野菜や果物での従来のビニールハウスより数段進歩したもので、温室管理、養液管理などはコンピュータで24時間自動処理される。日本植物工場学会によれば、1998年度は全国17カ所にある工場から野菜だけで年間7百万トンが出荷された。

 積極的にこの事業に取り組んでいるメーカーがカゴメである。農地法の規制で株式会社は農地を持てないが、カゴメは同法の制約を受けない工場生産方式で野菜ビジネスに参入している。


1.「農業食品企業」までの紆余曲折 -多角化の成功と挫折-

 カゴメは1899年創業。今年100周年を迎えた。現在でこそカゴメは「農業食品企業(メーカー)」を標榜し、「野菜とトマト」を中核とした事業展開を推進しているが、今から遡ること約15年、1980年代はじめ、「総合食品メーカー」を目指し、多角化と国際化を推進した。

(1)SKY計画(1983年~1987年)の成功

 低迷していた業績の中、700億円企業からの脱却を図り、中長期(5カ年)経営計画をスタートさせた。その第一段となるのが1,000億円企業へ羽ばたこうという意味を込めて展開されたSKY計画である。SKYとは、「S=積極性、K=効率化、Y=躍進性」を示しており、実際にいくつものヒット商品を生み出し、海外企業とのビジネスを成功させた。またトマト加工品自由化に際し、アメリカ進出という積極的な対応を見せるなど、目標通り1,000億円企業への成長を果たした。

(2)ニューSKY計画(1988年~1991年)の頓挫

 SKY計画で自信を得たカゴメは、SKY計画の3年目に若手社員により「21世紀委員会」を発足させた。彼らに21世紀のビジョンを作らせ、ポスト・SKY計画づくりのベースとして活用ようとしたのである。こうして打ち出されたのが、SKY計画を越えて「多角化・国際化」を目指し、1,500億円企業を目指した「ニューSKY計画」である。脱トマトを狙うCI戦略により、穀物や乳加工品といった食品新規分野のみならず非食品分野への参入を図った(ちなみに現在でも引き継がれている「自然を、おいしく、楽しく」というキャッチフレーズはこのときに採用れている)。1年間に100アイテム以上を市場に投入し、最盛期には1,200アイテムまで達した。しかし、次第にカゴメらしくない商品があふれ、どんどん店頭から消えていった。折しも1991年4月のバブル崩壊が重なり1990年、1991年と2年続けての低収益にあえいだ結果(業績推移参照)、1991年に5カ年中期計画の4年目にして頓挫してしまった。

(3)運動スタート(1992年~現在)

 ニュースSKY計画を失敗と認識し、早急に打ち切ったカゴメは「カゴメらしさとは何か」を再度追求した。その結果、2000年の101周年を迎えるに当たり、より強いカゴメを作ろうを合い言葉にスタートしたのが「カゴメ101運動」である。ここでドメインを「農業食品企業」に再設定し、五つの指針を確認した。

  1. 人中心の経営
  2. 収益力の極大化
  3. 経営基盤の拡充
  4. 業務改革の推進
  5. 農業食品メーカーの実体化

 これ以降、主だって展開された施策を列挙すると、以下の通りである。

  • 基幹商品への戦略集中化:1995年までに400アイテム強に
  • 新取引制度(1993年):公平かつ透明感のある取引制度へ
  • ケチャップの価格改定(1994年):平均20%引き下げ
  • カゴメ・ロジスティクスシステム(KLS:1990年~):物流効率化

 こうした施策を通じ、「キャロット100」(1992年発売)のロングセラー化や「価値訴求営業」と呼ばれる営業活動変革などにより、売上は1,000億円台で推移しながらも収益性を回復させ、現在に至っているのである。


続きを読む
「『ケチャップは野菜です』 -畑からの価値訴求から野菜工場の展開へ-」

続きを読むには有料の会員登録が必要です。


参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2025.02.13

24年12月の「消費支出」は2ヶ月連続のプラスに

2025.02.13

24年12月の「家計収入」は3ヶ月連続のプラスに

2025.02.12

24年12月の「現金給与総額」は36ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.02.12

24年12月は「有効求人倍率」は横ばい、「完全失業率」は改善

 

2025.02.10

企業活動分析 エバラ食品工業株式会社 24年3月期は業務用好調で増収も原価率上昇で減収に

2025.02.10

企業活動分析 東洋水産株式会社 24年3月期は価格改定が奏功し売上利益ともに過去最高更新

 

2025.02.07

消費者調査データ チョコレート(2025年2月版) 首位「明治チョコレート」は変わらずも、PBのリピート意向高まる

2025.02.06

25年1月の「乗用車販売台数」は3ヶ月ぶりのプラス

2025.02.05

提言論文 新しい群れ集団が生む市場ダイナミズム

2025.02.04

24年12月の「新設住宅着工戸数」は8ヶ月連続のマイナス

  

2025.02.03

企業活動分析 本田技研工業 24年3月期は、販売台数増加により増収増益、営業利益は過去最高に

2025.02.03

企業活動分析 日産自動車株式会社 24年3月期は、販売台数増加に加えコスト管理により増収増益

  

2025.01.31

消費からみた景気指標 24年11月は7項目が改善

2025.01.30

24年12月の「ファーストフード売上高」は46ヶ月連続のプラスに

2025.01.30

24年12月の「ファミリーレストラン売上高」は34ヶ月連続プラス

2025.01.29

24年12月の「全国百貨店売上高」は2ヶ月連続のプラスに

2025.01.29

24年12月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月連続のプラスに

2025.01.29

24年12月の「コンビニエンスストア売上高」は13ヶ月ぶりのマイナスに

2025.01.29

24年11月の「商業動態統計調査」は8ヶ月連続のプラス

2025.01.28

24年12月の「景気の先行き判断」は4ヶ月連続の50ポイント割れに

2025.01.28

24年12月の「景気の現状判断」は10ヶ月連続で50ポイント割れに

2025.01.27

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター No.168 管理職は筋トレ率2倍! 20〜30代の美容・健康意識がプロテイン市場をけん引

週間アクセスランキング

1位 2024.08.02

提言論文 値上げほどの値打ち(価値)はないー消費者の主要30ブランド価値ランキング

2位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

3位 2025.02.05

提言論文 新しい群れ集団が生む市場ダイナミズム

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2013.03.22

MNEXT ビックカメラによるコジマの買収はメーカーを巻き込んだ衰退業界再編の始まり

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area