東日本大震災から100日余りが過ぎ、震災と原発事故が日本経済にもたらしたダメージの深さも既に明らかになりつつあり、公表されている経済指標はいずれも、景気失速・経済低迷を物語っています。とりわけ、消費の失速ぶりは、新年度に入り鮮明です。雇用環境はこれまで堅調さを保っていますが、所得環境は2010年後半以降、悪化の兆しがみられます。消費者のマインドは、大震災や原発事故を契機に大幅に落ち込んでいます。マインドの冷え込みが長引けば、消費の回復への足かせはますます重くなります。震災復興のもたつきに加え、福島原発事故のトラブルがこのまま長期化すると、消費のスランプは年内に止まらず、その先まで長引きかねないことも、今後の消費を占う上で気がかりな材料です。 今号の概要は以下のとおりです。 「Economic Outlook for Japan」では、前号が発刊された2011年1月以降、とりわけ3月11日の東日本大震災を経験した後の経済情勢を整理し、震災復興への青写真含め、先行き不透明感が高まる日本経済の見通しと今後の消費の読み方を提示します。 「消費者からみた電子書籍市場の拡大可能性」では、調査結果をもとに、消費者から見た電子書籍市場の現状と今後を概観します。電子書籍の提供サイト、フォーマット、端末のいずれをみても導入期の段階にある電子書籍市場において、成長期への移行を果たすために必要なマーケティングを示唆します。 「電子書籍:現在、近未来、未来」では、電子書籍にかんする技術の現在を確認したうえで、Web技術をふまえた電子書籍の近未来、さらには電子書籍のまだ見ぬ未来について考察を加えます。近未来予想図として現れる電子書籍の世界での競争の姿を示すに止まらず、電子書籍の本質を突き詰めた先に拓かれる電子書籍の未来像を概観します。 「商品に対するイメージのネットワークの形成とその影響」では、商品に対する複数のイメージ間の交互作用をイメージのネットワークとして捉え、その行動への影響やネットワークを成立させる条件を明らかにします。加えて、調査データに基づく実証研究結果から、交互作用に着目することで、商品のイメージ戦略の立案に役立つことを示します。 2011年夏至、日本経済の底流で生起しつつある変化の予兆を捉えて、一歩先を見据えた戦略的判断と行動の一助となることを企図して、「消費経済レビュー」第16号を実務家のみなさまにお届けいたします。
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