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公開日:1999年01月01日

シリーズ「1キロ圏の空腹バスターズ-外食産業のエリア食需要獲得競争」第3回
株式会社ナカノス
食品市場適応のカンパニー制度導入-動き出した業務用カンパニー
戦略分析チーム 川口

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 「食の構造変容」つまり、内食から外食・中食への胃袋ウエイトのシフトは、外食企業や食品流通企業だけでなく、食品メーカーにも業容の変革を要請している。スーパーや食品小売店を中心とした、いわゆる「家庭用市場」だけでなく、外食やCVS弁当を核とした「業務用市場」への対応ウエイトが高まってきた。

 今回は、外食産業の熾烈な食需要獲得競争の真っ只中にあって、直接的な顧客である外食関連企業の競争力を支える食品メーカーの外食産業への対応事例を取り上げる。

 現在の食品市場のポテンシャルは明らかに「外食・中食市場」の方が高い。ところが食品メーカーとすると、縮小傾向にあるとはいえ、既存のボリュームの大きい家庭用市場が施策の中心となってしまう。結果として拡大している市場、伸ばすべきところで伸ばし切れない。中埜酢店はこうしたジレンマを解消するため、1998年12月に「分社型カンパニー制」を導入に際し、業務用事業カンパニーとして「株式会社ナカノス」を設立させた。


1.食品市場の変化適応に向けたミツカン「分社型カンパニー制」導入

 中埜酢店の分社型カンパニー制は、それまでの中埜酢店グループを「コーポレート」と「六つのカンパニー」に分割・再編し、その具体策として、「機構改革」「マネジメント改革」を実施した。その概要は以下の通りである。

(1)市場適応の機構改革

  1. 六つのカンパニーを統括するコーポレートとして、「株式会社ミツカングループ本社」を設立した。コーポレートは以下の五つの役割を担う。
    • グループの理念、ビジョン浸透
    • グループ全体の戦略策定
    • 経営資源の最適配分
    • 海外事業の推進
    • 既存事業の基盤強化と新規事業創出のための研究開発
  2. 「家庭用」「業務用」「チルド」の3事業に分割、分社化し、各々をカンパニーとした。三つの事業カンパニーはグループの方針に基づいて自カンパニーの戦略を策定・実行し「売上・利益・キャッシュの拡大」の役割を担う。そのために5カ年の中期計画を策定し、それぞれに執行責任を負わせた。
  3. 事業をバックアップする機能面も「生産・調達」「事務・管理・物流」「不動産・資金」の三つのカンパニーとし、3事業カンパニーと得意先に対する「サービスの向上と効率化」の役割を与えた。

 つまり、コーポレートはグループの戦略策定と全体の求心力を保持すること。6カンパニーは市場環境、競争条件の異なる各事業と機能が市場変化に迅速かつ的確に対応して、それぞれが競争力をつけることにそれぞれ重点が置かれている。これによって各カンパニーの業績評価を明確にしていこうという狙いである。

(2)マネジメント改革

図表1.マネジメント改革
図表
株式会社ナカノス プレスリリースより抜粋


  1. 社員から役員を登用し、起業家精神を浸透させ、組織の活性化を図る(3名)
  2. これまでの「常務会」と「本部長トップ報告」というふたつの意思決定機関を「常務会(社長・副社長・常務取締役3名の計5名)」に一本化した。その審議案件も、グループ全体の経営計画、経営資源配分、基幹人事制度、新規事業などグループ全体の戦略に関する案件に絞り込んだ。これに伴いカンパニーの業務執行上必要とされる権限は各カンパニーに委譲された。具体的には、1億円未満の投資案件、カンパニー内人事(異動・昇進)がこれに該当する。
    これまで月2回開催されていた常務会は週1回に増やし、各カンパニーとの円滑な連動を図るため、月1回はカンパニー長を含めての開催となった。
  3. 常務会によるグループ全体の戦略に基づいた各カンパニーの業務執行上の意思決定機関として、「カンパニー経営会議」を新設した。
  4. また、これらの改革にあわせて、より「役割と業績重視の人事制度」を志向し、管理職以上についての年俸制が導入された。

 正当な業績評価をするために、それぞれのカンパニーの役割と責任を明確にし、それに応じた権限委譲を行い、迅速な意思決定を促すために組織と人事制度、会議体を整備したのである。


2.業務用事業カンパニー「ナカノス」の設立

 こうしたカンパニー制度への移行の中、業務用カンパニー制導入の目的は、「業務用の風土を醸成することにある」(ソリューション本部企画1課長 松本幸夫氏)。つまり、「カンパニー制を導入したことにより様々な意思決定がスピーディーにできるようになり、役割・責任・権限が明確化させる」(同)ことにある。

 これまでも食品メーカーでは市場を大きく「家庭用」と「業務・加工用」に切り分け、営業部門についてはそれぞれ担当を設置してきた。ただ企業全体の施策の優先順位としては常に家庭用が中心であったのが現実である。

 例えば、営業機能は市場別に分かれているが、実際の商品の企画開発は一元化されていることが多い。従って家庭用市場での知名度が高いNB商品を業務用に転用して展開しているケースが多く、業務用として強いブランドが育たないような土壌があった。もちろん、強い家庭用NB商品での展開は営業の上ではやりやすいということは間違いない。しかしそれに甘えていては家庭用とは性質の異なる業務用市場で業務加工食品の企画開発から販売までの差別性の高い仕組みは構築できない。

 ナカノスが設立時に掲げたスローガンは「ソリューションカンパニー」。つまりユーザー(飲食店)の抱える問題・課題を解決できる企業がその到達点である。


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「業務用カンパニーが目指すソリューション」

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