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攻めと守りのブランドロイヤリティづくり
本稿は、MNEXT「攻めと守りのブランドロイヤリティづくり」関連コンテンツの一貫としてとして執筆されています。
消費研究チーム
やわらかいロイヤリティ層が多数派
 ブランドロイヤリティづくりの第一歩は問題と解決策を明らかにすることだ。複雑で高度な統計分析をしても有効な解決策がでなければ実践価値はない。課題と解決策はユーザーのセグメントの方法で決まる。
 ブランド競争に勝ち抜くには、三つの軸の組合せによって市場を区分する。第1は、攻めか、守りかをはっきりさせるためにユーザーを自社と他社で捉える、第二に、ブランドスイッチの可能性を捉えるロイヤリティの固さ、第3にブランドスイッチの手段が、価格か、価値で起こるのかである。
 この三つの組合せからユーザーを五つのセグメントで捉え直すことができる。当社ネット調査から現在のビール市場を例にみると、トップを争うX社のロイヤリティセグメントは、「自社の固いロイヤリティ層」が18%、「他社の固いロイヤリティ層」が35%である。18%のお客さまが利益の源泉であり、他方で、35%の他社顧客の説得は難しいと諦めざるを得ない。問題は、残りの約47%の「やわらかいロイヤリティ」層である。この層が、自社と他社へのロイヤリティがやわらかく、品質で説得できる層と価格訴求でブランドスイッチ可能な層に分かれる。恐らく、他の寡占市場でも、守るべきは約20%であり、攻めるべきは約50%、説得が難しいのは約30%のお客さまであるという分布だと推測できる。これで課題がはっきりする。次は解決策だ。

ロイヤリティプログラムの開発
 顧客は、商品ブランドに満足していてもブランドをスイッチする。調査データでは、ブランドスイッチした人の8割が、以前使用していたブランドに「満足していた」と答えている。製品属性上の満足を追求してもロイヤリティは維持できない。ブランドロイヤリティを高めるマーケティングの要は、守るべき約20%の「自社の固いロイヤリティ層」(愛用者)を創造し維持するロイヤリティプログラムの開発である。ロイヤリティプログラムとは、自社ブランドを継続して使い続けていただくことの価値を高めるサービスである。
 米国における先行研究(航空会社での実験結果)では、世帯年収によって、効果的なサービスや特典の内容が異なっていた。世帯年収が高い層ではより自由度の高い旅行やラウンジなど常連客限定サービスが継続してその航空会社を選ぶ動機として効果的であった。一方、世帯年収の低い層では、ディスカウントやキャッシュバックが効果的という結果である。世帯年収の高い層にとってディスカウントは継続の動機として作用しない。
 自社の愛用者の特性を無視した的外れなロイヤリティプログラムになっている危険性はないだろうか。自社の愛用者がどういう層で構成されているのか、より関心を持ち、使い続けていただく動機となるサービスとは何かを把握する必要がある。

ロイヤリティ層づくり
 自社のブランドロイヤリティ層をどうつくるか。それがブランド戦略の成功の鍵だ。答えは、教科書のように他社のブランドを一切使わせないような囲い込みをすることではない。世界一選択の鋭い日本のお客さまには通用しない。お客さまはいつも六つ程のお気に入りのブランドがあって、そのうちの半数を購入されている。多数のブランドが好きで複数のブランドを購入され、なかなか変更されない「柔らかいロイヤリティ層」だ。そのなかから大のお気に入りに選ばれることが現実のお客さまづくりのポイントだ。
 大のお気に入りに選ばれるには『認知的不協和』* と呼ばれる感情を利用することだ。およその常識とは反対に、自社のブランドがお気に入りのお客さまには他社のブランドの情報を積極的に知って頂き、試してもらう方がいい。囲い込むのではなくもっとオープンな対応をするのである。こうすると、実は、自社のブランドがもっと好きになってもらえ、大のお気に入りに選ばれる可能性が高くなるのだ。みんなが叩くサッカーや野球のチームほど強力なファンがいることを思い起こせばこの心理がわかる。
 具体的な戦術は説得である。強いロイヤリティづくりには、自社ブランドの肯定的な情報だけでなく否定的な情報もオープンにし、自社ブランドの良い面、悪い面の双方を提示したうえで訴求ポイントを強調する「両面説得」の方が、良い面ばかりを訴える「片面説得」よりもブランドに対する魅力度は増す。売りの現場でもっとオープンな情報を増やし、説得の工夫をすることが柔らかいロイヤリティ層獲得の鍵だ。

*『認知的不協和』
思考と行動の不一致によって不安や葛藤が生じる恐れがある時に、それを認めず正当化・無視するよう態度を変化させること

品質でスイッチする層を狙え
 他社ブランドから自社ブランドへのスイッチを促し、シェア拡大を図るためには、闇雲に他社ユーザーを狙うのではなく、ブランドスイッチしやすい人を狙うことである。現在は他社ユーザーであるが「品質で説得できる層」と「価格訴求でブランドスイッチ可能な層」が存在する。価格訴求で獲得した顧客は、他社の価格訴求で取り返される。価格で「買わされてしまった」ブランドの再購入率は低い。攻めるのは「品質で説得できる層」だ。
 スイッチングの説得には、自社ブランドの良い情報を継続的に発信し、他社ブランドの陳腐化を図る片面説得と店頭での実物接触によるブランド価値の伝達が基本施策になる。ここで、ブランドスイッチのきっかけをうまく準備することがポイントだ。弊社の調査では、ビール系飲料の場合、ブランドの上質さ、味わいの本格感や原材料の良さといった品質に関連する情報だけでなく、その企業の経営や業績などの状況や評判といったブランドの価値を補完的に高める情報がブランドスイッチのきっかけになっていることが確認されている。自社ブランドの価値情報で片面説得し、ブランド接触の実体験を通じて納得して頂き、企業のよい評判で後押しする。照準を合わせるのは、ユーザーの間で悪い評判が出始めている、あるいは情報の鮮度が落ちている他社ブランドだ。
(2006.11)



お知らせ

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当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

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