半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

(2013.09)
月例消費レポート 2013年9月号
東京五輪が後押し。2011年3月以来の高水準を記録した消費INDEX
主任研究員 菅野 守

1.はじめに
 更に厳しさを増した猛暑が続いた8月から一転、9月に入り、当初予想されていた厳しい残暑に比べれば、比較的しのぎやすい日々となっている。残暑と少雨でダムの貯水率が大きく下がり、取水制限が必要となっていた全国各地の河川でも、台風や秋雨前線などがもたらした降雨の恩恵により、取水制限が徐々に緩和または解除されつつある。ただ今回の渇水の影響が、これからの秋の実りにどう影響するかはなお未知数だ。
 2013年9月9日に内閣府より公表された「四半期別GDP速報(2013年4-6月期・2次速報)」によると、2013年4-6月期のGDP成長率(季節調整済前期比)は、2次速報値において、実質+0.9%(年率+3.8%)、名目+0.9%(年率+3.7%)となり、実質、名目ともに1次速報値(実質+0.6%(年率+2.6%)、名目+0.7%(年率+2.9%))から上方改定されている。需要項目別に、1次速報から2次速報にかけての、成長率(季節調整済前期比)の変化を比較すると、プラス方向で顕著な変化がみられたものとしては、民間企業設備は実質+1.3%となり、マイナスだった1次速報値(-0.1%)から大きく上方改定された。公的固定資本形成については、実質+3.0%増となり、1次速報値(+1.8%増)から上方改定されている。他方、民間最終消費支出は実質+0.7%増となり、1次速報値(+0.8%増)から下方改定された。民間住宅は実質-0.3%となり、1次速報値(-0.2%)から下方改定されている。輸出は実質+3.0%増であり、1次速報値と同じである。ちなみに、名目雇用者報酬は季節調整済前期比で+0.3%増、前年同期比で+1.1%増となり、1次速報値(季調済前期比+0.3%増、前年同期比+1.0%増)から上方改定された。実質雇用者報酬も季節調整済前期比で+0.5%増、前年同期比で+1.6%増となり、こちらも1次速報値(季調済前期比0.4%増、前年同期比1.4%増)から上方改定されている。
 今回の2次速報では、経済成長率が大幅に上方修正されており、中でも、需要の三本柱のうち唯一立ち遅れが目立っていた設備投資で、成長率がマイナスからプラスへと転換し劇的な改善が認められた点は、注目に値する。ただ、公表日の9月9日よりも前の段階から、2013年4-6月期GDPの2次速報で成長率が上方修正される可能性が濃厚なことは、メディア等でも報道されており、官民のエコノミストの間でもその認識は共有されていたようである。
 こうした認識を先取りする形でいち早く、景気判断について更に踏み込んだスタンスを示すに至ったのが、日本銀行である。2013年9月4日から5日にかけて開催された、2013年9月度の日本銀行・金融政策決定会合にて、景気判断は、前回8月の「緩やかに回復しつつある」から今回は「緩やかに回復している」へと2ヶ月ぶりに上方修正された。「回復している」との表現が盛り込まれたのは、リーマン・ショック以降では初めてのこととなる。特に設備投資に関しては、「企業収益が改善するなかで、持ち直しつつある」とし、前月8月から判断は上方修正されている。個人消費に関しても、「雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している」とし、前月8月に比べ上方修正含みの判断が示されている。
 政府の側も、9月13日に公表予定の月例経済報告(2013年9月分)で、景気判断を2ヶ月ぶりに上方修正する予定であることが、9月10日時点でのメディア等による報道で明らかにされている。既に公表されている経済統計指標の結果から、設備投資の回復の動きや所得改善の動きが確認されたことに加え、景気の本格回復へとつなげていくのに必要なあと「もうひと押し」となる材料として、アベノミクス「第4の矢」とも言われ始めている「2020年の東京五輪招致」が正式決定したことも、景気判断を巡るスタンスの転換につながっているのかもしれない。

 本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。
 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。

メンバーシップサービス会員のご案内についてはこちらをご覧ください。
メンバーシップサービス会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。
 

本論文に関連する統計データ

新着記事

2024.09.12

24年7月の「消費支出」は3ヶ月連続のマイナスに

2024.09.12

24年7月の「家計収入」は3ヶ月連続のプラス

2024.09.11

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 「紅麹サプリ問題」認知率は86%! 消費者の健康食品選びに変化

2024.09.11

24年6月の「現金給与総額」は30ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.09.10

24年7月は「完全失業率」は悪化、「有効求人倍率」は改善

2024.09.09

企業活動分析 ヤクルト本社の24年3月期は国内好調維持するもアジアの不振で増収減益に

2024.09.09

日本マクドナルドHD23年12月期は全店売上高、利益が過去最高を更新し増収増益へ

2024.09.06

企業活動分析 エスティローダーの23年6月期は、トラベルリテールの不調やドル高、インフレなどが響き減収減益に

2024.09.06

消費者調査データ 茶飲料(2024年9月版) 抜群の強さ「お~いお茶」、大手3ブランドが熾烈な2位争い

2024.09.05

24年8月の「乗用車販売台数」はふたたびマイナスに

2024.09.04

企業活動分析 ロイヤルホールディングス株式会社 23年12月期は人流増加で需要回復、増収増益に

2024.09.03

24年7月の「新設住宅着工戸数」は3ヶ月連続のマイナス

2024.09.02

企業活動分析 株式会社サイゼリヤ 23年8月期はアジア新規出店がけん引し増収増益

2024.08.30

月例消費レポート 2024年8月号 消費は緩やかながらも改善の動きが続いている-内需主導での景気回復への期待感

2024.08.30

消費からみた景気指標 24年6月は6項目が改善

2024.08.30

24年7月の「ファーストフード売上高」は41ヶ月連続のプラスに

2024.08.30

24年7月の「ファミリーレストラン売上高」は29ヶ月連続プラス

2024.08.29

24年6月の「旅行業者取扱高」は19年比で73%に

2024.08.29

24年6月の「広告売上高」は、2ヶ月連続のプラス

2024.08.29

24年7月の「全国百貨店売上高」は29ヶ月連続のプラス、猛暑で盛夏商材が好調

2024.08.29

24年7月の「チェーンストア売上高」は既存店で17ヶ月ぶりのマイナス

週間アクセスランキング

1位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

2位 2023.10.06

消費者調査データ No.393ミネラルウォーター(2023年10月版)全項目首位 一歩抜ける「サントリー天然水」、追う「い・ろ・は・す」

3位 2024.08.30

月例消費レポート 2024年8月号 消費は緩やかながらも改善の動きが続いている-内需主導での景気回復への期待感

4位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area