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(2016.04)
【特集:消費を読む】
想定外の消費の落ち込みをどう読むか
-2016年3月期の家計調査データより
主任研究員 菅野 守

 総務省「家計調査報告」(平成28年3月分)によると、二人以上世帯での、消費支出の名目増減率と実質増減率はともに-5.3%となり、再びマイナスに落ち込んだ。落ち込みの幅も、2015年3月に次ぐ大きさとなっている。

 消費支出の伸びは、2015年5月をピークに低下傾向で推移した後、12月を境に上昇傾向に転じたが、2016年3月に再び大きく落ち込み、支出全般の回復傾向にブレーキがかかった。

 消費支出10大費目別に、2016年3月における名目と実質それぞれの変化率をみると、名目増減率は10費目中、プラスが4費目に対しマイナスが6費目、実質増減率は(「その他の消費支出」を除いた)9費目中、プラスが3費目に対しマイナスが6費目である。名目と実質のいずれでも、マイナスの費目の数がプラスの費目の数を上回った。

 マイナスの費目に着目すると、交通・通信、光熱・水道、被服及び履物では、名目増減率のマイナス幅が二桁台となっており、その他の消費支出も二桁に近いマイナス幅を記録した。特に、交通・通信と被服及び履物の2費目は、実質増減率でもマイナス幅が二桁台となった。

 10大費目の中でも、耐久財や奢侈財が、消費の足を引っ張っている。交通・通信の中では自動車等購入、被服及び履物の中では婦人用シャツ・セーター類、その他の消費支出の中では身の回り用品などが、その典型例である。特に、自動車等購入に関しては、新車販売台数の3分の1を占める軽自動車で、2015年4月より増税がなされたことが効いている。加えて、残業代の低迷が1年余り続いていることも、自動車購入にマイナスに働いていると推察される。

 2016年に入り回復の兆しがみえつつあった消費にも、再びブレ-キがかかった。新年度入り後の消費の足取りに期待したかったところだが、残念ながら脆くも崩れ去ってしまっている。

 2016年4月14日に発生した熊本地震は激甚災害に指定され、熊本地震に伴う経済的被害は既に、農業などの第一次産業や工場を中心とした第二次産業に止まらず、観光地などの第三次産業にまで拡がっている。復旧・復興が当初の予想よりも長引くおそれもある。支出行動とマインドの両面で、少なくとも2016年4月の消費はマイナスに振れる可能性が高いと見るのが自然だろう。

 熊本地震の影響をどの程度と見るかで、政治的懸案事項に対する評価も異なってくる。仮に、影響を軽微とみれば、強気に消費税再増税へと踏み込むかもしれない。ただ、その読みが狂った場合には、消費に与えるダメージはより深刻なものとなりそうだ。


 

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