価格差別化とは、価格設定能力のある(ある程度のマーケット・パワーまたは独占力を有している)企業が、市場において複数の消費者が存在することが分かっている場合に、製品・サービスを、コスト差に基づいたものでない2種類以上の価格差で販売することです。このような価格設定により、企業は自らの利潤を最大化することが可能となります。
価格差別化には、顧客セグメント別、製品形態別、イメージ別、場所別、時期別といったタイプがあります。
価格差別化が効果を発揮するためには、以下のような条件が必要となります。
- 市場がセグメント化でき、また各セグメントで需要水準が異なっている
- 低価格で購入しているセグメントの構成員が、高価格を支払っているセグメントに対して製品を再販売できない
- 高価格が設定されているセグメントにおいて、競合他社が自社より低価格を設定できない
- 市場のセグメント化や管理のコストが、価格差によってもたらされる追加収益を超えない
- 価格差別化の実施によって顧客の恨みや反感を買わない
- 価格差別化が合法である
近年、商品・サービスや流通の多様化は目覚ましく進展しています。様々な情報源から必要な情報を収集する機会コストも飛躍的に上昇していると考えられ、消費者が豊富な選択肢の隅々まで完全に知り尽くすことは、現実には不可能になっていると思われます。一物一価ではなく、むしろ一物多価が成立する状況が生まれていると考えられます。企業にとっても、インターネットの普及や流通多様化を源泉に、様々なシグナルを活用して個々の消費者を識別し、利潤を高めることが可能となりつつあり、価格差別化を実践しやすくなっています。
企業が経済活動とその意思決定を行う動機は、利潤最大化にあることは言うまでもありません。利潤の規定変数は、売上数量、価格、コストの三つですが、今日、あらゆる市場が成熟期を迎え、売上数量を増やすことは難しく、また、コスト削減の余力も限られてきているなかで、価格が企業の利益水準を決める重要な変数であることは自明であり、価格を戦略的に利用し利潤を向上させる価格差別化戦略はますます重要性を高めるものと思われます。
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参照コンテンツ
- マーケティングFAQ 価格設定の方法
- マーケティングFAQ 新製品の価格設定
- マーケティングFAQ 「需要の価格弾力性」とは
- JMRからの提案 価格差別化戦略-利用チャネルをシグナルとした戦略的プライシング
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