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(2015.04)
ジレット
「レイザー&ブレードモデル」(ジレットモデル)による成長とP&Gによる再生
戦略研究チーム



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1.レイザー&ブレードモデルが出来るまで

 ジレット社の創始者であるKing Camp Gilletteが使い捨て型の剃刀を思いついたのは1895年のことである。当時セールスマンとして働いていた王冠メーカーCrown Cork and Seal社の社長であるウィリアム・ペインターによる、「使い捨ての商品を発明すれば、客が安定する」という助言を参考として発想した。当時の技術では使い捨て型の剃刀に必要となる薄い刃を作ることは困難であったものの、MIT出身の技術者ウィリアム・ニッカーソンの助けを受けて技術開発に成功。1901年にはジレット社の前身であるAmerican Safety Razor社を設立し"替刃式T字型剃刀"の販売を開始した。替刃式T字型剃刀を発売した当初からレイザー&ブレードモデルが確立されていたわけではない。剃刀本体(柄)と12枚の替刃のセットを$5で、12枚の替刃を$1で販売しており、剃刀の実質的な価格は$4であった。当時の$5は平均的な労働者の週給1/3に相当する金額である。消耗品ではなく、プラットフォームである剃刀本体で利益を追い求めておりレイザー&ブレードモデルとは言えない販売方法であった。

 ジレット社の初年度の替刃式剃刀の売上は剃刀51本、替刃168枚という燦々たるものであった。加えてジレット社の商品を参考に複数の企業が同様の替刃式剃刀を開発するなど、ジレット社は苦境に立たされる寸前であった。ジレット社を救ったのが1904年に認められた「刃が取り換え可能な剃刀」の特許であった。特許に守られ、ジレットは高価格での剃刀と替刃の販売を続けられた。特許に守られたものの、替刃式剃刀は高価格であることや一般的に馴染みのない商品であったため思うように普及は進まなかった。

 飛躍のきっかけは第一次世界大戦中1917年の、米軍からの個人用標準装備用本体350万本、替刃3,200万枚の大量発注である。利益への貢献もさることながら、米軍兵士への大量配布によって替刃式T字剃刀はアメリカ人男性に広く浸透することになった。

 ジレット社の黎明期を支えた特許は1921年に失効する。競合他社による替刃式剃刀市場への参入を予想していたジレット社は、大きな戦略転換を行う。替刃を高価格に据え置いたままでの、剃刀本体の価格の大幅な引き下げである。剃刀本体と替刃のセットの値段は発売当初の$5から13年に$3.79に、特許が失効する21年には$1へと値下げし、剃刀の本体価格を実質無料としたのだ。プラットフォームを値下げし購入を促したうえで、消耗品である替刃で利益を稼ぐというレイザー&ブレードモデルを確立したジレットは21年以降の飛躍を遂げることとなる。

 盤石に見えたジレット社だが、栄光は長くは続かなかった。1921年の「替刃式剃刀」の特許失効に伴い、ジレット社は「三つの穴の替刃」という新たな特許を獲得していた。他社による替刃式剃刀市場への参入に備えて、ジレット社の剃刀にはジレット社の替刃しか使えないように剃刀本体と替刃の接合部分である三つの穴を特許申請していたのだ。自社のプラットフォームに他社の消耗品が使われないようにするベンダロックインである。この特許をすり抜けたのが、剃刀メーカーAutoStrop社の一部門であるProbak社である。Probak社は三つの四角形と丸が直線に並び、その中心を一本の直線が横に刺さるマークを特許申請しそれが受理されると、トレードマークを接合部分にした剃刀と替刃を販売した。Probak社の替刃は自社の剃刀に装着出来るだけでなくジレット社の剃刀にも装着が可能であったが、逆にProbak社の剃刀本体にはジレット社の替刃は装着が出来なかった。つまりジレット社は剃刀と言うプラットフォームを消費者に提供しながら、利益を生み出す替刃はProbak社に奪われると言う状況に陥ったのだ。

 その後、AutoStrop社との特許訴訟に発展すると、ジレット社は疲弊し、1930年にAutoStrop社との合併提案を受け入れることになる。ジレット社に比べ遥かに規模の小さな企業であったが、AutoStrop社によるジレット社の吸収合併であるという評価であった。実際、合併後に創始者であるKing Camp Gilletteは会社を追われ、AutoStrop社のHenry Gaismanがジレット社の新社長に就任した。


高付加価値型へのシフトとその後の苦境、再生にいたるまで 
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