売れない時代が続いている。家計の消費支出は93年以降、9年連続の実質減であり、現在も明るい兆しがみえない。「もはや売り上げが落ちるのは当たり前、落ち幅が小さければいい」と考え、目の前にある商機を逃してはいないだろうか。
今回の提案は、生活者の「需要のリズム」に着目して拡販することで売り上げを増やすためのヒントである。
どんな商品でも、需要の山というのが1年の間に何回かある。需要の山に合わせて、売場スペースをおさえ、生活者への訴求テーマに合わせて商品を展開し、ピンポイントで効果的に売り上げを増加させる方法だ。
ビデオカメラを例にみてみよう。この商品は年に3回の山がある。3月、5~7月、10月だ。3月は卒業・新入学需要、5~7月はゴールデンウィークの旅需要や夏休み直前需要、10月は運動会シーズンである。ビデオカメラの需要は子供を持つファミリーの生活サイクルと密接に関連している。
ソニーは、このことに着目し、三つの山に合わせて、店頭展示活動を集中させ、テレビ宣伝やネットでの告知活動を連動させることで、量販店で圧倒的なシェアを獲得している。さらに、期初にこのような年間の販促スケジュールを提案することによって、バイヤーの信頼を得ている。ソニーといえば商品ばかりが注目を集めるが、このような店頭における当たり前の事実に着目した地道な活動が、量販での強さに繋がっている。
このような需要のリズムは様々な商品でみられる。背広なら3月の入社前・期がわり、6~7月の衣替え、12月のボーナスシーズン、時計は入社・期がわりシーズンと衣替えの時期、履物は5~7月の家庭訪問シーズンと年末に売れる。拡販のチャンスは年に何回かある。このような商機に力を注ぐことが大切である。何をすればいいか。ポイントは三つある。
(1)店頭スペース拡大とテーマに基づく商品展開
売れるシーズンにおける生活背景を見極め、季節の生活催事をテーマ化し、テーマに基づいて、商品・関連品、及びツールを店頭のあらゆる提案スペースで展開する。
ソニーは、シーズンには、「入学式」「海水浴」「運動会」などのテーマをもうけて、既存コーナーに加え、新たに店前提案スペース、ビデオカメラコーナーのエンドをおさえ、大量のPOP・季節演出ツールと、アクセサリー(三脚・防水グッズ・ショルダ-ケース・集音マイクなど)を展開している。
(2)期初における年間販促スケジュール提案
年間の販促スケジュールを期初にバイヤーに提案することである。提案書に盛り込むべき項目は、1)週、または月別の販売データ、2)需要の山と生活背景、3)月別の販促テーマ、4)売場での展開イメージの四つだ。
(3)実売指数
担当店舗・チェーンにおける、自社の商品の月または週別の販売金額データを分析し、需要の山をみつける。これが需要リズムに合わせた営業の全ての出発点である。
提案営業は大事だが、それを、いつ、どんなテーマで持っていくかが大切。どの月も通り一遍の活動をしていてはダメだ。需要リズムに合わせたピンポイントの需要獲得がひとつのヒントである。
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