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東京メガ市場への浸透戦略
-流通営業の東京再集中と小商圏アプローチ
舩木龍三
山田朗彦
 この論文では、多くのメーカー営業が採用し、今後のモデルと見られていた「有力小売企業への個別対応政策」は拡売費の増加を招き、メーカーの収益低下の大きな要因であると分析しています。これにかわる新たな営業モデルとして小商圏アプローチというコンセプトと四つの顧客浸透政策を提示しています。このアプローチを成功に導くためには、小商圏対応と企業対応のバランスがとれた組織、店頭提案サポートシステムが鍵であるとしています。
1.問題提起
 90年代、メーカー営業は、小売流通の規制緩和とグローバル競争下での組織小売業化の加速化、企業間格差拡大への対応として有力小売企業への個別対応政策を採用してきたが、その効率を低下させている。
 個別対応政策に代わる新しいチャンスは、都市市場にある。地価下落を背景に都市への人口再集中が起こっている。人口再集中を契機に、「職・住・商」機能が統合され、新しい需要を生み出す源泉となっている。
 メーカー営業が採るべき基本戦略は、都市市場、特に東京という巨大市場に経営資源を再集中すること、具体的需要を生み出す小商圏における個店連動アプローチ政策を採用することである。
 本論では、90年代の個別企業対応政策の効率性、新しい成長市場としての都市の可能性を検証し、小商圏における個店連動アプローチという新しい営業戦略の枠組みを提示する。

2.90年代の個別企業対応政策の効率性検証
 初めに、多くのメーカーで採用された有力小売企業への個別対応政策の効率性について、収益性と投資効率という側面から検証する。

(1) 90年代採用された営業政策

 90年代の流通は激変した。大店法の規制緩和と廃止、トイザらス、コストコに代表されるグローバル流通企業の参入が進み、競争は一段と激化した。これまでの業種小売業の衰退、組織小売業の成長というパラダイムから組織小売業の再編時代に突入したのは周知のとおりである。この結果、起こったことは次のふたつの格差である。ひとつは業態格差である。GMS、百貨店が衰退し、ドラッグストア、ホームセンター、ディスカウントストア、一部の地域スーパーなどのカテゴリーキラーが成長してきた。そして、90年代後半には競争激化から企業間格差へと進展した。GMS業態ではすでに勝ち負けがつきつつあり、大手5社グループという概念はなくなった。成長業態であるドラッグストアでも中期的には4~5企業グループ程度に再編されるだろう。
 こうした流通環境の激変への対応として多くの企業で有力小売企業への個別対応政策が採用された。2001年に実施した40事業の分析1によれば、83%が組織小売業への対応強化を行い、78%が卸・小売業の重点選別化をしていることが確認できる。典型例が味の素である。同社は90年に他社に先駆けて広域営業部を設置、94年には広域営業本部へ拡張し、総勢100名を超える体制で大手流通企業5グループを中心とする企業別営業体制を確立した。また、花王も95年にジャスコ(現イオン)との戦略同盟に取り組みはじめ、98年の販社統合を機に、エリアマーケティングからチャネル別マーケティングへの転換を実施した。

(2) 主要消費財メーカー23社にみる収益性変動

 個別企業対応政策の効率性を検証するために、主要な消費財メーカー23社2を取り上げ、この間の収益構造の変化を分析してみる(図表1)。
 第一に確認できることは、全体として売上を減少させながら利益改善をしていることである。売上原価の削減に成功しているが、拡売費3が飛躍的に増大したため、営業利益率は0.3%の改善にとどまっている。
 第二に確認できることは、拡売費の投入効率が低下していることである。23社中21社とほとんどの企業が拡売費を増加させている。そのうち売上拡大が実現できたのは14社であるが、拡売費の投入効率が改善された企業はわずか3社であり、投資効率の低下が確認できる。また、拡売費を増加させても売上増加が実現できなかった企業が7社、拡売費削減企業2社は売上減少となっている。


本稿は当社代表・松田久一からの貴重な助言のもとに執筆されました。ここに謝意を表します。あり得べき誤りは筆者の責に帰します。

注釈
JMR生活総合研究所(2001)「持続競争力調査」
加工食品、菓子、酒類、日用雑貨、化粧品メーカーをさす。
各社によって定義は異なるが広告宣伝費を除く「販売促進費」「販売奨励金」「販売手数料」といった営業関連に費用計上される費目を拡売費と定義した。


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