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HOME > 企業戦略事例集 > 戦略ケース > 戦略ケース(2008年) > 法規制で縮む健食通販

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法規制で縮む健食通販
本稿は、「週刊エコノミスト2008年10月7日号」掲載記事のオリジナル原稿です。
井坂勝也
牽引役が足踏み
停滞する健康食品
 通販市場の最近10年間の成長を支えてきた健康食品が、ここへ来て足踏み状態になっている。保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)を除く、いわゆる健康食品の市場規模は2007年で約1兆1,000億円と推計されるが、2005年をピークに2年連続して減少に転じている。健康食品の最大の販売チャネルは、約4割を占める訪問販売であるが、販売員の高齢化や新規顧客開拓の難しさから、ここ数年成長が鈍化している。訪販に次いで大きい販売チャネルが約3割を占める通信販売である。健康食品の販路の中で唯一成長基調で推移してきたが、総市場減少を反映し、2006年から減少、2007年は前年比▲約3%と翳りが出ている。

立ちはだかる法規制
 健康食品市場は、近年の健康志向の高まりや今年4月から始まった「特定健康診査・特定保健指導」(メタボ診断)などの好材料がある反面、「コエンザイムQ10」や「大豆イソフラボン」などヒット素材のブーム沈静化や新規参入業者の増加に伴う価格競争の激化などから踊り場を迎えている。
 さらに、健康食品の通販が縮み始めた要因には、法規制の影響が大きい。健康食品には法律上の定義は無く、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指している。国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たす特定保健用食品や栄養機能食品とは異なるため、効果や機能を根拠なく表示することができない。医薬品と誤認されるような表示は薬事法で、また、より公正な競争を確保し一般消費者の利益を保護するという観点では不当景品類及び不当表示防止法の規制を受ける。
 2006年には、ヒット素材のひとつであった「アガリクス」で、厚生労働省が、キリンビールの子会社「キリンウェルフーズ」(東京都江東区)に、発がん促進作用があることが動物実験で確認されたとして、販売停止と自主回収を要請、同社では4種類のアガリクス製品について販売停止と自主回収を行った。また、同年、公正取引委員会が「やずや」(福岡市)が、酢の加工食品「熟成やずやの香醋(こうず)」広告で成分を誇大に表示していたことを取りあげ、景品表示法違反の優良誤認に当たるとして、再発防止などを求め排除命令を出した。2007年には、厚生労働省は「薬事法抵触懸念の商品名改善通知(いわゆる「4.13事務連絡」)」として62品目を指摘した。商品名が医薬品的な効果効能を暗示するという理由だ。62品目のうち56品目がファンケル、小林製薬、DHCの商品で、厚生労働省では2007年5月末を目処に商品名の変更を指導した。例えば、ファンケルの「休足サポート」は「フェアリーメリロート」に、小林製薬の「休カンヘルプ」は「牡蠣&ウコンセット」などに改名されている。
 こうした動向から、消費者の健康食品の安全性や成分、内容の確からしさに対する懸念が芽生え、さらに、広告表現の規制強化により「どんな健康の保持増進に資する商品なのか」も分かりにくくなり、健康食品購買の壁となっている。
 加えて、今年、経済産業省は2002年策定の「電子商取引及び情報財取引などに関する準則」の改訂を実施した。健康食品やペットフードなどの宣伝広告を想定し、薬事法や健康増進法の規定違反の可能性がある事例を初めて明示した。例えば、健康改善が目的の健康食品において、事業者が開設したインターネット上の掲示板に書き込みされた効果効能に関する内容を積極的に販売に活用した場合は効果効能についての広告であると見なされ、薬事法違反の可能性があることや、健康食品やその成分に関する効果効能が記載されたサイトに、事業者が自社サイトからリンクを張る行為についても、同様に薬事法違反の可能性があることを明示した。規制や監視は強まる一方であり、本来、商品の価値をじっくりと伝えやすいチャネルとして起用されてきた通販のメリットがさらに薄れる可能性も出てきた。

鍵を握る価値伝達コミュニケーション
 健康食品通販大手のやずや、DHC、ファンケルなどが規制対応に追われて業績が停滞する中、気を吐いているのがサントリーである。昨年度は、「セサミンEプラス」「DHA&EPA+セサミンE」「グルコサミン&コンドロイチン」が順調に伸びた上に、美容ブランド「conoha(コノハ)」、動物用サプリメント「ペットヘルス」など新規分野にも注力し、売上は過去最高の305億円(前年度比114%)を達成した。続く2008年度も「セサミンEプラス」など基幹3商品を中心に「自然の力シリーズ」を強化し、新商品の投入も進め売上335億円を目指している。同社の強みは、「セサミンEプラス」に代表されるような、サントリー健康科学研究所による特許取得を通じたエビデンス(科学的根拠)、毎年のアイテムの拡充と大量の広告宣伝によるトライアル需要の喚起、管理栄養士など専門家も含めたコールセンターの充実などが支えている。
 健康食品の価値を伝えやすいチャネルとして通販は今後も有力であると考えられる。しかし、製品差別化の源泉となる機能性素材の探索、客観的なエビデンス評価体系の確立、そして、何より厳しくなる法規制を遵守しながらの適切な価値伝達コミュニケーション方法をいかに創造するか。市場停滞を打ち破るための課題は多い。


本論文執筆は、当社代表松田久一による貴重な助言や協力のもとに行われました。ここに謝意を表します。
(2008.10)

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