半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2021年12月06日

消費動向速報
外出関連の選択的サービス中心に低迷が続く第3次産業
主任研究員 菅野守


図表の閲覧には有料の会員登録が必要です。
登録済みの方はこちらからログインしてお読みください。

 コロナ禍で、消費動向が変化しています。その変化をいち早く把握し、ビジネスに役立てるために、官公庁などが発表する統計データから気になる動向をご紹介します。


第3次産業はコロナ下で低迷が続き、未だコロナ前の水準を回復できていない。
コロナ感染拡大が第3次産業に与えた大きなダメージは、限られたごく少数の業種、とりわけ生活娯楽関連サービスに属する業種に集中している。
生活娯楽関連サービスに属する全35業種中、当該指数の低迷に寄与しているものは計13業種存在する。その多くは、旅行・レジャー・イベント・外食といった、外出関連の選択的サービスに類する業種である。
そうした業種を中心に、生活娯楽関連サービスで低迷・悪化が続いている。一部には改善の兆しも散見されるが、生活娯楽関連サービスの中で多数派を占めるには程遠い状況だ。

1.コロナ下で低迷が続く第3次産業

 第3次産業はコロナ下で低迷が続き、未だコロナ前の水準を回復できていない。

 経済産業省公表の「第3次産業活動指数」によると、第3次産業活動指数〔総合〕の季節調整済指数は2018年1月以降、緩やかな上昇傾向の後、2019年10月の消費税増税に伴う駆け込み需要と反動減を経て、概ね横ばいで推移してきた(図表1)。


図表1.第3次産業活動指数〔総合〕の時系列推移

ログインして図表をみる


 第1回目の緊急事態宣言下にあった2020年5月には大幅な落ち込みをみせた。その後は、コロナ感染の波に左右されつつも回復の動きをみせていたが、2021年3月をピークに低下傾向に転じている。

 総合の指数の数値も、2020年3月以降は一貫して100を割り込み、コロナ感染拡大直前の2020年2月の水準(101.4)を下回ったままだ。


2.コロナのダメージは生活娯楽関連サービスに集中

 ただ、同じ第3次産業といっても、指数の水準は業種間で大きく異なっている。コロナ感染拡大のダメージは特に、生活娯楽関連サービスに集中しているようだ。

 第3次産業活動指数で採用されている11大分類の各業種の推移は、大別すると三つのグループに分けられる。

 ひとつめのグループは、2020年3月以降、総合を一貫して上回る推移をみせている業種群である。具体的には、「医療,福祉」「金融業,保険業」「物品賃貸業」「事業者向け関連サービス」「情報通信業」「不動産業」の計6業種が、これに該当する。これらの業種でも、2020年5月に指数は大きく落ち込んだが、いずれも総合に比べれば軽微なもので済んでいる(図表2)。


図表2.第3次産業活動指数 2020年3月以降、総合を一貫して上回る業種の指数の推移

ログインして図表をみる


 ふたつめのグループは、2020年3月以降、総合の水準前後で変動している業種群である。具体的には、「電気・ガス・熱供給・水道業」「小売業」の計2業種が、これに該当する。特に小売業は2020年4月に、総合の2020年5月の水準を更に下回る程の大きな落ち込みを経験しているが、その後は2021年4月と8月を除き、総合を上回る水準で推移している(図表3)。


図表3.第3次産業活動指数 2020年3月以降、総合の水準前後で変動している業種の指数の推移

ログインして図表をみる


 三つめのグループは、2020年3月以降、総合を一貫して下回る業種群である。具体的には、「卸売業」「運輸業,郵便業」「生活娯楽関連サービス」の計3業種が、これに該当する。

 中でも、生活娯楽関連サービスの低迷ぶりは際立っている。2020年3月以降で指数の水準が最低となった2020年4月の数値は48.5、同期間で最大となった2020年11月でも81.5に止まる。直近の2021年9月には70.1にまで再び落ち込んでおり、2020年3月の水準すら下回っている(図表4)。


図表4.第3次産業活動指数 2020年3月以降、総合を一貫して下回る業種の指数の推移

ログインして図表をみる


 今回のコロナ感染拡大は、製造業などの第2次産業よりも、第3次産業により大きなダメージを与えた。しかもその大きなダメージは、限られたごく少数の業種、とりわけ生活娯楽関連サービスに属する業種に集中したまま、低迷状態が続いているのが現状だ。


3.旅行・レジャー・イベント・外食関連業種の多くで低迷・悪化が続く

 コロナ感染拡大による大きなダメージが集中した生活娯楽関連サービスに属する個々の業種をみても、ダメージの受け方は様々だ。

 ここでは、生活娯楽関連サービスの低迷に影響している業種を特定する狙いから、生活娯楽関連サービスの中で一番下のレベルにあたる小・細分類の業種・全35業種のうち、2020年3月以降総合の指数を一貫して下回っているものを選別すると、計13業種、存在している。

 まず、2020年3月以降生活娯楽関連サービスの指数をほぼ一貫して下回り続けており、2021年7月以降指数の低下が続いている計6業種を、「悪化が続いている業種」とした。この6業種は更に、指数のピークや底の時期、各時期からの変化傾向など、推移のパターンの類似性から、1)「ボウリング場」「パブレストラン,居酒屋」 2)「ホテル」「旅館」「リネンサプライ業」 3)「結婚式場業」 の三つに分けられる(図表5)。


図表5.生活娯楽関連サービスで悪化が続いている主な業種

ログインして図表をみる


 次に、指数がゼロ近傍で低迷を続けている「海外旅行」1業種と、生活娯楽関連サービスの近傍で推移しつつ2021年6月以降は生活娯楽関連サービスの指数を下回り続けている「喫茶店」「食堂,レストラン,専門店」の2業種の、計3業種を「低迷・伸び悩みが見られる業種」とした(図表6)。


図表6.生活娯楽関連サービスで低迷・伸び悩みが見られる主な業種

ログインして図表をみる


 最後に、2021年9月に指数が上昇しており、2021年1月から9月にかけて指数が上昇傾向にある計4業種を、「改善の兆しが見える業種」とした。この4業種は更に、指数のピークや底の時期、各時期からの変化傾向など、推移のパターンの類似性から、1)「フィットネスクラブ」 2)「浴場業」「遊園地・テーマパーク」「国内旅行」 のふたつに分けられる(図表7)。


図表7.生活娯楽関連サービスで改善の兆しが見える主な業種

ログインして図表をみる


 これら、生活娯楽関連サービスの低迷に影響を与えている13業種の多くは、旅行・レジャー・イベント・外食といった、外出関連の選択的サービスに類する業種である。そうした業種を中心に、生活娯楽関連サービスでは依然、低迷・悪化が続いている。一部には改善の兆しが見える業種もみられるが、それらが生活娯楽関連サービスの中で多数派を占めるには、まだ程遠い状況だ。



参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

2024.04.22

JMR生活総合研究所 ゴールデンウイーク期間中の営業のお知らせ

新着記事

2024.04.26

消費からみた景気指標 24年2月は10項目がプラスに

2024.04.26

24年3月の「全国百貨店売上高」は25ヶ月連続のプラス、インバウンドや物産展が好調

2024.04.26

24年3月の「ファーストフード売上高」は37ヶ月連続のプラスに

2024.04.26

24年3月の「ファミリーレストラン売上高」は25ヶ月連続プラス

2024.04.25

月例消費レポート 2024年4月号 消費は足許で持ち直しの動きが見られる-「いつも通り」の消費の風景が戻ってくるようになれば消費回復の見通しもより確かなものに

2024.04.24

24年3月の「チェーンストア売上高」は既存店で13ヶ月連続のプラス、食料品がけん引

2024.04.24

24年3月の「コンビニエンスストア売上高」は4ヶ月連続のプラスに

2024.04.23

24年2月の「旅行業者取扱高」は19年比で78%に

2024.04.23

24年2月の「広告売上高」は、3ヶ月連続のマイナス

週間アクセスランキング

1位 2024.04.12

成長市場を探せ ビスケット市場、4年連続プラスで初の4,000億超えに(2024年)

2位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

3位 2022.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2022年5月版) 「レッドブル」「モンスター」認知率拡大、上位の牙城揺るがず

4位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

5位 2021.05.25

MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(1)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area