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(2005.04)
どこまでいくか、ヤマダ電機
-家電流通市場の寡占化
流通研究チーム 大澤



 今春、ヤマダ電機(群馬県前橋市、以後ヤマダ)が専門店としてはじめて売上1兆円を超えることになった。家電流通市場が8兆円前後であることを考えれば、1社で実に1割強のシェアである。10年以上前にはその1割にも満たなかった。確かに、薄型テレビやDVD等の情報家電が好調な市場ではあるが、それは他の企業も同じ条件である。何故にヤマダが急成長を遂げたのか、そしてその背景には何があるのだろうか。本小論では、家電流通市場、特にヤマダを中心に、市場の寡占化が進行していること、寡占化によるメーカーの弊害について言及し、日本における寡占化市場の到来について論じていく。

(1) 家電流通市場のこれまで-系列店の衰退・家電量販店の隆盛
 ヤマダのように家電を大量に販売する家電量販店が登場する前の家電流通の主流はメーカー系列店であった。メーカー→販売会社→販売店といういわば閉鎖的な縦割の流通システムが、戦後、高度経済成長期を経て強固に形成されていった。その後、消費者は様々な商品、品揃えや他メーカーとの比較を求めるようになり、またメーカー側も販路拡大の必要性が高まった。
 このようなニーズを満たす販売形態として登場したのが家電専門の量販店である。これらの量販店を束ねる役割を果たしたのが、1972年に設立されたNEBA(日本大型電気店連合会)である。NEBAの設立趣旨が「家電流通業の合理化・近代化」「良いものを適切な価格で提供」等をあげ、ある意味で系列店に挑戦状をたたきつける形になったといえる。定価販売を主としていた系列店に対し、大量仕入れ・大量販売による低価格販売を実現したNEBA(や非NEBA)の量販店は大衆の支持を受け、80年代後半には全家電流通市場の三分の一を占めるまでに至ったのである。
 このNEBAの勢いを止めたのが、家電専門の「ローコスト経営」を実現したディスカウンター、更に郊外型の大型家電量販店「コジマ」(栃木県宇都宮市)の台頭である。
 今でこそヤマダの陰に隠れた形になっているコジマだが、バブル崩壊後も積極的な低価格販売により着実に売上を伸ばしていった。コジマがNEBA系の量販店と異なる点は「ローコスト経営」。販管費を抑え、郊外立地等によって更なるコスト圧縮を実現、競合店よりも低価格で販売しても利益が残る構造にしたことである。こうして、躍進を続けたコジマは98年3月期にはNEBA系の雄であったベスト電器(福岡県福岡市)の売上を超え、日本一になったのである。
 「郊外型」の量販店がある一方で忘れてはならないのは、駅前立地のカメラ系量販店である。ヨドバシカメラ(東京都新宿区)、ビックカメラ(東京都豊島区)ともに80年代に躍進を遂げ、両社あわせた売上は1兆円を迫る勢いである。

(2) ヤマダのこれまで-90年代後半の大躍進とNEBAの衰退
 家電量販店が伸長するなかで、ヤマダは、1973年に山田昇氏が前橋市でいわゆる「まちの電器屋さん」を創業。翌年、「有限会社ヤマダ電機」を設立、83年に株式会社化し、89年に店頭公開、2000年には東証一部上場、02年にはイトーヨーカ堂から「ダイクマ」を買収。05年3月期には売上が1兆円を超え、「まちの電器屋さん」から約30年で「日本一の」家電量販店になった。
図表1.ヤマダとコジマの売場面積推移
 このヤマダも10年前の売上は1000億に満たず、「その他大勢」の量販店であった。ヤマダがコジマを追い抜き、「日本一」になったのが02年3月期である。他の家電量販店に対して、ヤマダの強みは大きくふたつ考えられる。
 ひとつは、積極的な「大型店舗」の展開である。ヤマダが積極的な出店を始めたのが90年代に入ってからで、現在の上位量販店の中ではむしろ後発組である。この弱みが強みに転じたのが「大店法」の緩和、「大店立地法」の施行であり、大型店舗の出店が容易になった。既に中小規模の店舗を展開していた各量販は既存中小店舗の統合や整理を強いられることになり、大型店舗出店への足かせになってしまった。その一方で、ヤマダは規制緩和の波に乗り、大型店舗を積極展開していったという構図である。
 仮に同じ場所に同じ店舗がある場合、大型店舗を利用する方が消費者の効用が高いということを示したのが「ハフ・モデル」である。売場面積の増加に対して消費者の効用は逓減(=売場面積の増分による消費者効用の増分が、売場面積が拡大するにつれて減少していくこと)していくが、家電量販店においては売場面積の増加による効果が消費者効用の増加に、現時点では大きく寄与していると思われる(図表1)。
図表2.03年度粗利益率
 ふたつめは、「徹底したローコスト経営」である。比較的初期にPOSシステムを導入、物流の効率化を推進、上述の大型店舗出店による店舗あたり売上増加など、各量販店がいわば「身を削りながら」低価格競争を戦う中で、ヤマダは経営の効率化を図りながら低価格を実現していったのである。
 ヤマダのローコスト経営の状態を粗利益率、販管費率、売上高人件費率、商品回転率の四つの指標から確認してみる。
まず、粗利益率で見ると、ヤマダが19.6%とトップになっている。次いで、ヨドバシの19.4%となっており、これら2社が他社と比べて1%以上高くなっていることが分かる(図表2)。

図表3.03年度販管費率
 販管費率では、一見、ヤマダが他社よりも高くなっている(エディオンは参考値)が、これは「ヤマダポイントカード」による引当金を販管費に組み込んだ(02年度)ことが要因であると思われる。そのため、他社も同様な会計処理を行った上での販管費率を算出しない限りは、比較は難しい。そこで、ヤマダの決算報告書等から「ポイント引当金」等を他社と同様の処理を行うと、3~5ポイント程度販管費率が低下すると推定される。そうなると、ケーズやカメラ系に次いで販管費率が低いことになる(図表3)。

図表4.03年度人件費率
 次に売上高人件費率を見ていくと、ヨドバシの2.4%が際立って低い。次いでケーズの3.8%、そしてヤマダが4.1%となっている。ここでもヤマダがコジマの5.4%、ベストの6.8%など、同種の郊外型量販と比べると比較的低コストで人材を活用していることが分かる(図表4)。

図表5.03年度商品回転数
 商品回転数では、ヨドバシの23.1回転は驚異的であるが、これは駅前立地によるところが大きい。その一方で、郊外型量販のヤマダは11.6であり、ベストの6.6、ラオックスの9.2と比較するとかなり高いことが分かる(図表5)。ヤマダは売れ筋を着実に店頭で陳列し、在庫管理を適正に行っている。
 駅前型であるカメラ系の効率の良さが目立つものの、郊外型というくくりで見れば、ヤマダは、人件費率などでケーズよりも高かったりする面もあるが粗利益率でみると10ポイント近く離れており、「総合的」に見るとヤマダのローコスト経営化が進んでいることが分かる。
 一方、かつての家電流通市場で主流であったNEBAが05年8月に解散することが3月18日の理事会で決定した。地域の家電量販店の経営破綻や再編・統合とヤマダの成長によって存在意義がなくなったという判断からである。

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