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HOME > 企業戦略事例集 > 戦略ケース > 戦略ケース(2008年) > 改正薬事法で変わるドラッグストアの競争軸【一般公開中】

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改正薬事法で変わるドラッグストアの競争軸
1.持続成長するドラッグストア
図表1.ドラッグストアの店舗数・売上高の推移
 多くの日本の小売業が業績低迷に苦しむなかで、ドラッグストアは成長を続けてきた。2007年度の店舗数は15,384店、売上高は4兆9,657億円と推計されている。業界統計をとりはじめた2000年度以降毎年成長を続け、2000年と対比すると店舗数で131%、売上高で187%の高成長を実現した。この業態が注目されはじめたのは1990年ごろであるから、18年間連続で成長してきたとみることができる(図表1)。
 この勢いが衰えることなく持続成長している、数少ない市場である。人口減少が続く日本市場において成長を促進する要因は多数ある。65歳以上の人口比を示す高齢化率は2000年で17%、2015年には25%、2030年には28%になると予測されている。そうなると国民医療費は現在の31兆円から倍以上になると推計されており、国は、医療用医薬品として用いられていた有効成分を一般医薬品に使用できるように切り替える「スイッチOTC」の拡大や、セルフメディケーション(自分自身での健康管理)を啓蒙している。メタボリックシンドローム該当者は920万人、予備軍980万人と推計されている。さらに生活習慣病の推定人数は高血圧症3,100万人、高脂血症3,000万人、糖尿病740万人となり、国民の47%はこの三つのいずれかに該当するとみられている。このように、市場にはヘルスケアニーズが高まるという追い風が吹いており、業界では2012年には10兆円産業にまで発展させることを目指している。
 そのなかで大きな転機が訪れようとしている。2009年春に施行される改正薬事法である。ここでは、改正薬事法が与えるインパクトとドラッグストア業界に起こる変化について考察していきたい。

2.改正薬事法のインパクト
 来春に施行される改正薬事法のポイントはふたつある。ひとつは、大衆薬を成分がもつリスクの高さからA、B、Cの三つに区分していることである。もうひとつは、この区分に応じて販売資格者が異なることである。これまでは薬剤師が常駐していなければすべての大衆薬を販売することが不可能であったが、今回の改正でB、C区分については「登録販売者」がいれば販売可能となる。この登録販売者制度が業界の競争を変える引き金となる。
 登録販売者制度は、各都道府県が実施する筆記試験に合格すればよいのだが、受験条件には「実務経験1年以上」という条件が課された。他業態から見れば大きな参入障壁となり、一見ドラッグストアに有利なようにみえるが、不利な条件になる可能性が高い。筆記試験の難易度が当初の想定よりも高いものとなるからだ。昨年9月に厚生労働省から出された「試験問題作成のための手引き」では5分野合計120問、正答率70%以上で合格となる厳しさである。登録販売者を育成するためのコストがかかると同時に、登録販売者を維持するためのコストが上昇することが大きな問題としてクローズアップされている。なぜ維持コストが上昇するかというと、資格取得者の引き抜きに対抗する必要があるからである。せっかくの時間とコストをかけて育成した人材をスーパーやホームセンターに引き抜かれては意味がないからである。当初は資格取得者に対し月額5,000円程度の手当が相場とみられていたが、現在では3万円前後を検討する企業が増えているのである。これに拍車をかけるのが、業界で言われている「2010年問題」である。薬学部が6年制へ移行した影響で2010年から2年間、薬学部卒業生が不在となり、人材確保にさらにコストがかかる可能性が高いのである。この販売コストの上昇は、これまでの業界の競争を大きく変えていく引き金となる。

3.変わる業界構造 - ふたつのシナリオ
 もともとは地域密着であったドラッグストアはこの間、M&Aを通じてスケールメリットを活かした価格競争力を武器に、スーパーやコンビニの需要を奪い成長してきた。そのその結果、5大グループが形成された。マツモトキヨシグループ、イオン・ウエルシア・ストアーズ、富士薬品グループ、コクミン・セガミ・セイジョーを中心とするWINグループ、くすりの福太郎・ジップを中心とする十社会である。上位寡占化がすすみ、業界統計のベースとなる610社中上位10社で33%、5大グループでは40%と高い集中度である。
 改正薬事法がもたらす販売コストの上昇により、この構図を大きく変えようとしている。ふたつのシナリオが考えられる。
 第一のシナリオは、スケールメリット競争により拍車がかかり、しかも異業種を交えた再編になるというものである。販売コストの上昇でもっとも影響を受けるのは年商100~300億円規模の中堅企業だ。これらの企業は、スケールメリット競争についていくために合併をするか、大手グループの傘下に入るか、つぶれるかの選択を迫られることになる。改正薬事法が制定された2006年から、ドラッグストア各社はこれを先取りした動きが出てきている。M&A件数は2006年が34件、2007年は37件と2000年の13件から大幅に増えている。2008年に入ってもアインファーマシーズと経営統合を目論んでいたCFSコーポレーションがイオンの出資拡大で同グループ内に止まり、マツモトキヨシグループだった高田薬局もイオングループと資本・業務提携をした。マツモトキヨシはホールディングカンパニーを設立し、子会社化、業務提携、FC展開と様々な形でその勢力を拡大しようとしている。

図表2.ドラッグストア再編の動き


 この2大勢力を基軸に再編がすすむとみられているが、そうでもなさそうだ。異業種からの参入である。スーパーやホームセンター、コンビニが本気で参入を考えるのであれば、自社店舗に売場をつくっても成果は知れている。成長市場で大きな成果を売るためには新業態開発やドラッグストアの買収など選択肢が視野に入っているはずだ。国内企業だけでなく、外資系企業でもこうした検討がされているはずである。
 もうひとつのシナリオは、スケールメリット競争から人的販売・サービス競争へ競争軸が転換し、業界構造も大きく変わることである。これまでのようにスケールメリットを追求した大量仕入・低価格販売路線の行き着く先は2大勢力が大きくなるという結果で勝ち目がない。販売コストの増加をカバーするには付加価値販売しかなく、マネのできない差別化、競争優位につながる。そうした企業が台頭していくという見方だ。市場には人的販売・サービスを受け入れる余地は大きい。高齢者は安さよりも人的販売やサービスを求めるだろう。高額商品やサービス消費に旺盛なことからも明らかであり、街の電器店が復活している背景にはこうしたニーズがあることを証明している。
 その兆しも出てきている。イオングループとの提携を解消し、積極的なM&Aを続けながら既存店売上高が28ヶ月連続で伸びているスギ薬局の強みはカウンセリング販売である。イオングループとの提携は維持しているが、十社会に所属していたくすりの福太郎に資本参加し子会社化するツルハホールディングス、WINグループの中核であったセガミメディクスとセイジョーが経営統合してできるココカラファインホールディングス、十社会に所属するジップドラッグとライフォートが経営統合したアライドハーツホールディングスなど、この間動き出した企業は単なる規模拡大ではなく、人的販売サービスを武器にしようとしている。
 どちらのシナリオもこれまでの5大グループの構図はおろか、2大勢力とみられる動きをも変えようとしている。改正薬事法を契機にドラッグストアは新たな競争フェーズに入ることは確かである。

(2008.04)

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