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(2011.05)
月例消費レポート 2011年5月号
頼みの海外経済にブレーキ感。国内消費INDEXは下降カーブ描く
菅野 守



1.はじめに
 東日本大震災から2ヶ月半余りを経て、震災と原発事故が日本経済にもたらしたダメージの深さが、徐々に明らかになりつつある。
 2011年5月24日公表の2011年5月の月例経済報告によると、景気の現状については、前月4月に「景気は、持ち直していたが、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっている。」とし、基調判断は半年ぶりに下方修正されたが、5月には「持ち直していたが」の文言が外され、「景気は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっている。」とし、基調判断としては据え置きとなったものの、下方修正含みの判断が示されるに至った。先行きについては、前月と同様、「当面は東日本大震災の影響から弱い動きが続くと見込まれる。その後、生産活動が回復していくのに伴い、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待される」とし、短期的には弱含みながらも、中長期的には改善の見通しをにじませている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、「電力供給の制約やサプライチェーン立て直しの遅れ、原子力災害及び原油価格上昇の影響等により、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。」としており、前月にも言及のあった「電力供給の制約」や「サプライチェーン立て直しの遅れ」、「原油価格上昇の影響」に加えて、「原子力災害(の影響)」といった文言が新たに盛り込まれている。福島第一原発の事故の影響が、電力供給の問題や、放射性物質の飛散や漏出といった物理的被害に止まらず、消費マインドへの悪影響も含めて、経済全般にダメージを与える一種の「災害」とみなさざるを得ない状況に至っていることを、政府自らが図らずも認めた格好だ。
 個別項目を見ると、個人消費は、前月の「持ち直しの動きがみられたものの、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きもみられる。」から、5月は「持ち直しの動きがみられたものの」の文言が削除されるとともに、「東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられる。」と、明確にネガティブな判断が示されている。設備投資は、前月の「持ち直している。」から、5月は「東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられる。」へと下方修正された。住宅建設も同様に、前月の「持ち直している。」から、5月は「東日本大震災の影響もあり、弱い動きがみられる。」へと、判断は下方修正されている。輸出は、前月の「持ち直しの動きがみられたものの、東日本大震災の影響による減少が懸念される。」から、「持ち直しの動きがみられたものの」の文言が削除されるとともに、「東日本大震災の影響により、このところ減少している。」とし、前月時点では懸念に止まっていた輸出の減少が、今月は現実のものとなっている、との認識だ。生産については、前月にはあった「持ち直していたものの」の文言が5月には外されて、「東日本大震災の影響により、このところ生産活動が低下している。」とし、生産の低下が断言されている。企業収益も、前月にはあった「改善しているが」の文言が5月には外されて、「東日本大震災の影響により、下押しされている。」へと下方修正され、企業収益悪化の認識も明確に示されている。雇用情勢については、前月の段階では「東日本大震災の影響が懸念される。」に止まっていたものが、5月には「東日本大震災の影響により、一部に弱い動きもみられる。」へと文言が変わり、判断がよりネガティブな方向へ変更されている。
 海外経済の現状については前月同様、「世界経済は、全体として回復している。」とし、判断を据え置いている。先行きについても、前月同様「回復が続くと見込まれる。」とし、判断は据え置いた。海外経済の先行きに対するリスク要因についても、前月と同様、「欧米の景気が下振れするリスクがある。また、原油価格の高騰をはじめとする一次産品価格の上昇を背景に、急速に景気が冷え込むリスクに留意する必要がある。」としている。
 地域別にみると、ヨーロッパ地域に関しては、景気の現状について前月同様「景気は総じて持ち直しているものの、国ごとのばらつきが大きい。」とし、判断は基本的に据え置かれているが、新たに「フランスでは緩やかに回復している。」の文言が加えられ、景気回復の地域的拡がりが示唆されている。先行きについては、前月同様「ヨーロッパ地域の先行きについては、基調としては緩やかに持ち直していくと見込まれる。」とし、判断を据え置いている。今後のリスク要因についても、前月同様、「ただし、各国の財政緊縮による影響に留意する必要があるほか、一部の国々における財政の先行き不安を背景に金融システムに対する懸念があること、高い失業率が継続すること等により、景気が低迷するリスクがある。」との文言が踏襲されている。アメリカ、中国、インド、その他アジア地域に関しては、現状と先行きともに判断を据え置いている。
 政府としては、先行きに対する期待感を示したいという願望とは裏腹に、時間の経過とともに拡がりをみせ深さを増してくる震災と原発事故の経済的ダメージを前に、それらの影響を完全に織り込み切れるまで、事実上の判断留保に近い現状維持のスタンスを示した格好だ。被災地域を中心に、復興はおろか復旧すらもなかなか進まず、腰の重い政府の下では「会議は踊る、されど進まず」で、徒に時間だけが過ぎていく。このままでは、被災した街や村はそのまま捨て置かれ、被災者の今の生活ばかりでなく、将来への希望までも摘み取られかねないありさまだ。

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