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2008年のヒット商品
沈む消費、再選択される商品
大場美子

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 2008年初頭まで堅調を保ってきた消費が急速にスローダウンした。当初は、給料があがらないのに、食品や日用品などの断続的な値上げにより日常的支出が増えた結果、家計は支出を抑制しようとした。秋以降は物価が沈静化したものの、企業の雇用削減、残業カットの動きが急速に進み、雇用不安と収入減が消費マインドをさらに悪化させている。
 その結果、個別商品サービスの販売動向を調べてみると多くが苦戦したが、その中で浮上するものもあった。

図表.明暗を分ける商品サービスと流通
 情報通信機器では、ネットブック、ウルトラモバイルパソコンと呼ばれる5万円を中心とした10万円以下の小型PCが売れた。火をつけたのは台湾メーカーのアスースが1月に発売した5万円PCで、その後HP、デルが続き、東芝、NECなどの国内メーカーも参入して、PC市場の新価格帯市場を形成して約25%を占めるまでに拡大した。用途を限定すれば圧倒的なコストパフォーマンスが魅力である。一方、携帯電話は4月の価格体系の変更による割高感によって沈んだままである。「iPhone」も話題性は高かったが、販売は期待されたほど伸びなかった。
 安・近・短の国内旅行が伸びて、旅行代金に上乗せされる燃油サーチャージ料の高騰で海外旅行は沈んだ。
 百貨店やファッションアパレル業界が全般的に沈む中で、SPAで独り勝ちとなっているのが「ユニクロ」である。昨年の「ヒートテック」以降、ブラカップ付きのトップス「ブラトップ」、「速乾Tシャツ」などの機能性訴求でヒットを飛ばし、前期比2ケタの増収である。
 「GAP」を抜いて衣料品ブランド店舗数で世界一となったH&Mの日本上陸も入店待ちの行列が話題になった。9月の銀座店、11月の原宿店出店に続き、09年には渋谷店、新宿店と出店攻勢をかける。低価格帯カジュアルでも、ベーシックアイテムの大量生産販売中心のユニクロに比べて、強みは品揃えが広く商品回転率が早いことで、同じ服の他人と出会う確率が低そうなことであるが、消費者の品質評価はこれからである。

 昨年来のガソリン高で車の利用を控えた人が、ガソリン価格が大幅に下がっても戻ってこない。車から乗り換えた自転車が2ケタ伸びて、中でも電動アシスト付き自転車が売れている。タクシー業界は2007年末の値上げによって客離れがすすみ、値上げの効果より客数減の方が大きく、売上を落としている。
 ビール類は、数年前から発砲酒、第3のビールが拡大してビールが縮小傾向にあったが、値上げ後に、ビールから第3のビールへのカテゴリースイッチがさらにすすんだ。同時にプレミアムビールのなかで値上げしなかった「ザ・プレミアム・モルツ」だけは好調さを保った。
 値上げ幅の大きかったナショナルブランドのカップ麺は沈み、かわってスーパーや生協などのプライベートブランドが浮上した。PB商品は大手メーカーがつくっていることも多く、味や品質がNBに比べて遜色のないレベルにアップしていることが、これまで手を出さなかった顧客に受容された。
 食品では値上げの仕方によっては売上が増加したものもあった。ヤマザキパンは、食パン値上げの際に、原料のマーガリンをバターに変えるなどして原料品質向上の訴求を行い、既存顧客を維持して新たな顧客の獲得にも成功した。
 値上げは正負の両面の効果がある。割高感がブランドスイッチ、カテゴリースイッチのきっかけになり、新カテゴリーにトライアルされてそのままスイッチされる場合と、品質が納得されて多少高くてもこのブランドがよいという再評価によって顧客のロイヤリティがアップする両方の作用が働いている。

 コナカの「シャワークリーンスーツ」は、自宅のシャワーで汚れが洗い流せ、アイロンもいらずクリーニング代が節約できる。価格は5万円とコナカの売れ筋よりも高い価格設定であるが、紳士服市場の低迷の中でヒット商品となった。
 省エネタイプの白物家電、ハイブリッドカーなどが売上を伸ばした。いずれも購入時には標準品よりも高くつく。短期間では購入コストが相殺できないとしても、ランニングコストを重視する選択がされている。

 08年4月からはじまった「メタボ健診」は長期トレンドの健康志向をさらに先鋭化させ、関連するヒット商品も多く生まれた。
 食品飲料では、花王の「ヘルシア」、日清オイリオ「ヘルシーコレステ」などのトクホ(特定保健用食品)はサイズは小さめで高価格であるが売上を伸ばし、ハウス食品が2006年から発売している「プライムジャワカレー」は、標準品のジャワカレーよりも2割ほど高価格だがカロリー30%カット、油脂量50%カットが支持された。
 任天堂「Wii Fit」、ワコール「クロスウォ-カー」は、運動によりカロリー消費を促進する。タニタ、オムロンの寡占市場である体重計は体組成計として進化して、体脂肪や内臓脂肪率、骨格筋量など、メタボのリアルな該当者に止まらず、予備軍や美容志向層の体測定ニーズに応えてヒットしている。

 「外食離れ」、「内食もどり」が鮮明だ。米、食パン、弁当箱、水筒、土鍋が伸びている。総菜などの「中食」、レトルト食品やパスタソースなど一から手作りではない「内食お助け商品」や、割高でも小容量の調味料が伸長しているのは、これまで外食していた独身男性層の内食需要によるところも大きい。ちなみに、昨今のもてる男の条件は料理上手で、外食するよりも自宅で手料理をふるまうというのがトレンドである。
 食品関係の不祥事や、冷凍食品の農薬混入問題など、食品に対する消費者の信頼が揺らいでいる中で、メタボ対策や節約志向もからんで、「内食もどり」がすすんでいる。

 消費者は節約志向を強めているが、単に価格志向に走ったり、購入数量を減らして支出を抑えているわけではない。ムダと感じられるモノの支出が見直される反面、美容健康や趣味などに関係する商品サービスについては、むしろ高価格で付加価値の高いものの方が伸びている傾向もみられる。また、値上げは顧客を失う脅威であるが、やりかたによっては逆に顧客を獲得するチャンスにもなりうる。また、自動車は所有するよりもレンタル、持ち家よりも賃貸など、ストック型の消費からフロー型の消費へという消費スタイルの変化が若い世代を中心に進んでいる。
 消費者は節約して生活の質を下げるのではなく、むしろパフォーマンスを高めようとしている。言い換えると商品サービスの選び直しが行われているのだ。今後景気後退により企業業績が悪化し収入の減少が目に見えてくると、もう一段の選別が進むことになるだろう。選別に生き残るためには、不安・不信の時代だからこそ品質への信頼の獲得が鍵になる。

(2009.01)
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