なぜ、「外国人」社長が大手企業で多くなるのか - コーポレートガバナンスの罠
日本でよく知られる企業、セブン&アイ・ホールディングス次期社長にスティーブン・ヘイズ・デイカス氏が、日産の社長兼最高経営責任者(CEO)に、イヴァン・エスピノーサ氏が選任された。日本人にとっては、今後も少々わかりにくい「外国人」社長選任が多くなることが予想される。
わかりにくさは、日本の会社なのに「外国人」という愛国心にもとづく情緒、そして、いわば「天の声」として従業員の信頼関係のもとで選ばれてきた伝統意識からくる異和感である。
私は、会社は、社会に価値を提供することによって社会的存在が承認され、価値とは、人々の生きがいや欲望に寄与することだと理解している。さらに、会社は、所有の中心が従業員になるべき有機体であり、「紙」ではない、と認識している。この考えが、日本企業を成長させ、日本文化に根ざした統治である。但し、この理念は真理であっても、制度のなかではまったく担保されていない。この理念を実現するには、上場廃止しかない。また、制度化されない不透明性が、従業員のやりがいを喪失させかねない事態になるかもしれない。こうしたリスクもあり、さらに、多くの人々の資本を受け入れない、つまり、巨大投資ができなくなる可能性を決めねばならない。個人的には、セブン&アイ・ホールディングスが一時期目指した非上場化を進めるしかない。それほど、現状のコーポレートガバンス制度は、株主だけの価値を追求し、一部経営者の私的欲望を満たす制度になっている。
なぜ、日本の歴史風土に根ざす本質的な経営ができないのか。日本の文化風土に培われた人材が、社長に選ばれないのか。
情況の戦略判断シリーズ - 連載構成
- 1.シリーズ展開にあたり 一寸先は闇での戦略判断 (2025.02.27)
- 2.減税政策は人気とりのバラマキ政策か (2025.02.27)
- 3.トランプを支えるネット世論 - 正体は「ルサンチマン」 (2025.02.27)
- 4.値上げ安堵に潜む日本ブランドの危機 (2025.03.10)
- 5.関税政策に日本企業はどう対応すべきか (2025.03.04)
- 6.なぜ、「外国人」社長が大手企業で多くなるのか - コーポレートガバナンスの罠 (2025.03.17)
- 7.中国メーカーの多様化戦略への対応 - 垂直差別化では勝てない(2025.03.24)
- 8.ポートフォリオ戦略からダイナミック・ポートフォリオ分析で統合経営へ (2025.04.21)
- 9-1.トランプ関税の正義、賢愚、そして帰結 - ポストグロ-バル経済と自由貿易体制(上編) (2025.04.21)
- 9-2.トランプ関税の正義、賢愚、そして帰結 - ポストグロ-バル経済と自由貿易体制(下編) (2025.05.23)
- 10.なぜ井上尚弥選手はダウンしたのか (2025.05.07)
- 11.トランプ関税を裏づける「購買による征服」の理論 - 安全保障の論理 (2025.05.09)
- 12.自分で火をつけ自ら消火して英雄に - トランプ関税の顛末 (2025.05.14)
- 13.寡占米市場の高い米価の行方 - 値下げ政策の賢愚 (2025.06.02)
- 14.もうひとつの日本 - 世界都市・東京と取り残された地域日本 (2025.06.23)
- 15.米価格の歪さ、都議選自民大敗北させた第2世論、そして、世界を不確実性に引き込むトリックスター大統領の性格 (2025.07.02)
- 16.トランプ関税25%は十分乗り切れるが、とばっちりの農業には手厚い支援を(2025.07.09)
- 18.参議院選挙で登場した「第3の世論」―自民大敗北を底上げした世論の正体(2025.07.23)
- 19.なぜ自民支持層で高市氏支持が低く、首相続投が相半ばするのか - 「見落としがちな理由」(2025.08.05)