日本のふたつの顔
日本はふたつの顔を持っている。世界経済の3トップにある東京と、成長から取り残された日本である。現在、日本でスポットライトがあてられているのは、成長から取り残された日本である。
名目GDP関連の指標で、相次いで、日本が諸外国に抜かれているという統計的事実が報道されている。主に、IMFが発表する速報が多い。インドに抜かれた、購買力平価でロシアに抜かれた。ひとり当たりGDPでは、韓国に6年連続で抜かれ、台湾にも抜かれるということが報道されている。
為替や経済学に疎い読者がこの報道に接し、「日本は貧しくなった」と騒いでいる。相対的貧困率は高いが、絶対的貧困は多くなく、「生活保護」という「セーフティーネット」もある。
しかし、これは統計的真実性の半面に過ぎず、もうひとつの面ではまったく違う様相を示している。
1ドル100円になるとドイツを再逆転
ここでは、ふたつの事実に注目したい。「もし」という設定は、社会歴史を読み解く上での切り口だが、もし、仮に、10年ほど前に慣れ親しんだ1ドル100円を想定すれば、日本の名目GDPはどうなるか。
日本の現在の名目GDPは約609兆円で約6.09兆ドルになる。この数字は、ドイツの4.19兆ドルを約1.9兆ドルと45%も上回る。1.45倍である。世界ランキングは第3位である。社会主義中国を除くと第2位である。さらに、ひとり当たりGDPでは、48,744ドルとなり、世界6位になり、韓国を12,000ドル上回る。
それでは、為替が1ドル100円という時代が来るかと言うと、現在のトレンドを延長すれば、2年内に実現する可能性が高い。
日本の誘導長期金利は、0.5%である。日本銀行は、利上げ方針であり、年0.5%ずつあげる意向にあり、日本銀行のデフォルト政策になっている。アメリカは、4.5%で下落傾向にある。連邦銀行(FRB)も利下げの方針である。仮に、日本の誘導レートが、ドイツ並みの2.5%になると為替はどうなるか。
金利平衡説をとれば、約101円になる。
つまり、1ドル100円の時代は、目前に迫っていると言える。その際に、マスコミはどう報道するのか。「日本がドイツを名目GDPで抜いて世界第3位」、「日本がひとり当たりGDPで韓国を抜いて世界第6位」との見出しが掲載されるかもしれない。
愛国者としては、溜飲は下がるが、生活者としては嬉しくない。生活が楽になる訳でも、収入があがる訳でもない。まして、生きがいややり甲斐が増進するものでもない。ただ、また、生き甲斐に繋がり、疲れた心が癒される海外旅行に行って、「やはり、日本はいい」と思える機会が増えるだけだ。それが一番かもしれない。
もはや、ドルベースの名目GDPは、日本の達成目標でも何でもないということだ。ただ、海外への支援金は確実に増え、経済パワーを生かせることになるのは確かだ。名目GDPによるランキングは、あくまでも参考程度でよいということだ。
世界都市東京という事実
しかし、もうひとつの統計的事実は、実際の経済活動を行う上で大切だ。それは、東京が、世界経済の都市化にともなって、世界経済の中心になっているということだ。都市化とは、人口が集中する地域のことであり、社会や経済活動がその都市地域に集中することである。
日本の場合は、圧倒的に東京だ。東京の捉え方も、人口3,000万人を擁する千葉、神奈川と埼玉を含む東京圏、人口1,000万人の東京都23区、人口約50万人の千代田区、中央区、港区の都心3区、という捉え方などがある。ここでは人口を1,000万人にする。1,000万人にすると、ニューヨークやロンドンとの比較がうまくできるからである。人口1,000万人以上の都市と国の名目GDPとひとり当たりGDPを比較してみる。
