連載 情況の戦略判断シリーズ

トランプ関税25%は十分乗り切れるが、とばっちりの農業には手厚い支援を

2025.07.09 代表取締役社長 松田久一

 トランプ関税が書簡で通告され、8月1日より、日本には、当初より1%高い25%の関税が課された。その影響を概算すると、図表1のとおり。

 課税額をすべて価格転嫁し、「需要の価格弾力性」によって需要が減少すると仮定すると、約5.5兆円になる。2025年度の予想GDPの0.9%の押し下げ効果である。日本製品は、ブランドロイヤリティが高いので、恐らく、100%関税を売価に転嫁しても、30%以内なのでブランドスイッチは起こらない可能性が高く、需要減少の上限は約5.5兆円だ。もっとも輸出の多い自動車や部品の影響力はもっと少ないはずだ。実需のマーケティング視座では約1兆円ではなく、0.6兆円程度だと予測する。現在の消費の勢いに掉さすほどの影響ではない。但し、マインドへの影響が懸念される。

 最も深刻な打撃を受けるのは、農林水産物だ。世界商品になった抹茶(Matcha)は、国内でも供給不足の状況だが、他の農林水産物は厳しい。約5,835億円の売上減少が予想されるが、産業規模の小さい農林水産業には厳しい。産業規模は、8.8兆円、従事者数は高齢者を中心に約193万人。

 

 アメリカに対し輸出し、純「輸出」の増加を景気刺激に戦後、一貫して続けてきた結果、アメリカは貿易赤字を受容できる経済力を失った。その結果が、乱暴なトランプ関税である。そして、とばっちりを受けるのが農業従事者というなんともいえない悲劇だ。7回もアメリカ詣でし、返礼が約1%の関税上乗せでは、情けないを通り越している。



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