最新版「消費社会白書2018」
―顧客接点のメルティングとアイデンティティ消費
のポイント

2017.10 代表 松田久一

 消費社会白書2018年版を刊行いたします。

 1991年の地価をピークとするバブル崩壊から約27年、日本経済は低成長を続けてきました。この間、消費は経済成長にまったく寄与しませんでした。2012年の安倍政権誕生後に、異次元金融緩和による円安、輸出企業の株高、地価の上昇などによって、資産効果による消費浮上が一部にみられました。しかし、2014年の消費税増税で、再び消費低迷に陥りました。増税から約3年、世界経済の回復、円安による企業収益の回復、雇用増加、賃金上昇、官製バブルの継続による資産効果で、マクロにみれば消費は堅調に推移し、巡航軌道に乗ったようです。

 この白書では、主に五つのファインディングが柱になっています。

 ひとつ目は、世代交代による価値意識と社会ネットワーク関係の変化です。特に、若者期の価値観が、世代交代ですっかり変わりました。「アイデンティティ」志向の高まりです。将来不安で自信なき「嫌消費」世代から、自信に溢れる「自己表現」世代へ交代しつつあります。さらに、血縁、地縁、社縁を基礎とした社会関係から、ネットを通じた社会関係への広がりと融解です。若者は、ネットで友人をつくり、「世間体」よりもネットの「インスタ映え」を気にするようになりました。

 ふたつ目は、堅調な消費を牽引している三層の分析です。第一の層は、景気と雇用に敏感な「20代女子」です。第二の層は、共働き子育て層です。このライフステージは、嫌消費のバブル後世代です。共働きで収入増のダブル効果があり、子供への支出が必然的に増えるステージです。第三層は、60才以上の高資産層です。地価や株価の資産効果が最も大きいです。この三層が消費を堅調なものにし、一方で非正規やシングルの低収入層は依然消費税増税の影響を強く受けています。

 三つ目は、購買行動のネット化の進展による「円環的循環化(堂々巡り)」です。購買行動は、認知、評価、態度、意向、購入といった段階的な行動として長い間捉えられてきました。しかし、購買行動を、ピンボールのようにさまざまな情報源にぶつかって、ランダムな方向に飛ぶというモデルで分析してみると、購入に収斂する経路は実に多様で堂々巡りする複雑なものであることが再発見されました。消費者説得のためのコミュニケーションは、根本的に変えるべきです

 四つ目は、現代の消費欲望についてのファクツです。現代は自己実現欲求で捉えられるものではなく、自己表現欲求を含み、食などの低次な欲求対象だと思われていたものが実は高収入層の生きがいであったり、モノへの欲求が情報欲求と不可分な関係にあったりと通念を超えたものです。特定の選択的耐久財が、階層差を表現することも明らかにしています。

 五つ目は、小売「業態」の分析です。大都市圏はコンビニエンスストアが流通の覇者となり、リアル流通はアマゾンなどのネットに侵食されていくという通念を検証してみました。結果は現在、業態の覇者は存在せず、業態の多様化とロングテール化がどんどん進んでいくというものでした。

 2018年のマーケティング戦略の立案に役立つヒントが、たくさんあると自負しています。

[2017.10 MNEXT]

書籍イメージ

2017.11 発行
版形:A4版カラー
本体9,260円+税

顧客接点のメルティングとアイデンティティ消費

発刊以来15年間の知見とデータから「今」を鋭く分析し、「半歩先」を提案
オリジナルの時系列調査から現在の消費者の実像に迫る
中長期だけでなく、短期のマーケティング戦略を構築するための基本データが満載