急速な円高が進んだが、現状は「構造的円安の地合いの中で、介入とポジション調整(キャリートレードの巻き戻し)が重なって生じた循環的な円高局面」と整理するのが妥当。前回分析した貿易構造・内外金利差という構造要因自体に変化が出たわけではありません。残念ながら円高基調への転換、特に、根拠なき日本経済衰退パラダイムが転換していません。
現在の円高をもたらしたのは、ベッセント財務長官の2度にわたる発言と日米協調介入です。アメリカの利害として円安による日本の輸出攻勢は歓迎されるものではない。しかも、投機による過度な円安は、アメリカ国債の保有者である日本が国債売りで円安是正(ドル売り円買い)をするかもしれないという懸念を生みます。しかも、円安の要因は、日米金利差を利用した投機的なキャリートレードです。特に、ベッセント発言後の急速な円ショートの買い戻しと強い相関を持っています(図表)。もともと行き過ぎた円安は、日米金利差と「思い込み」による日本経済衰退論のパラダイムで形成されています。この構図のなかでの口先介入なので構造は変わっていません。
金利差が確実に縮小するという信念と日本経済は再成長期に入ったという展望に変われば円高基調へと転換します。巨大な財政赤字があっても、アメリカとは異なり、日本政府の貸借対照表(B/S)も健全であることが知られる必要があります。長期金利の上昇も日本の財政破綻への懸念だけでは説明できません。リフレ策、財政出動による国債発行懸念と日本政府の財政破綻は常にセットでマスコミに利用されます。日本で低金利で借りて運用益を稼いでいる投機筋は、日本経済は衰退し、財政破綻するという見方が大きな利益をもたらしています。
しかし、金利差の解消で、円高基調への転換は確実ですが、今回は、まだ、転換したとまでは言えません。2026年9月17~18日の金融政策決定会合の結果とその後の総裁発言がひとつのポイントです。マーケターとして日本の市場価値が上昇している点に注目したいところです。これは消費財産業、小売流通産業や輸入産業には有利に働きます。
「円安上等」のその先にあるものを読む → 7/24日掲載
投機筋の円ショートの積み増し・買い戻しが、 異次元の円安局面の短期変動を増幅 →