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III.経済・情報産業組織について
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3.時代の流れを読む
NEXT VISION 2006 NEXT STRATEGY 2006
デジタルコンバージェンス時代の
新しい競争優位づくり−プラットフォーム戦略
代表 松田久一
プリント用画面(PDF)
本コンテンツは、2005年11月30日に行われた当社イベント「NEXT VISION 2006」の講演録と、同日使用したプレゼンテーションをもとに構成したものです。
構成

はじめに
1.産業融合の時代
2.産業融合の時代の新しい勝ち方
3.新しい競争優位の鍵−プラットフォーム戦略
4.携帯端末をめぐるデジタルコンバージェンスの行方
5.プラットフォーム戦略による競争優位づくりのポイント


はじめに

 お話は大きく五つに分けて、進めさせていただこうと思います。デジタルコンバージェンスというのは、情報家電とかデジタル家電、通信、放送を中心とした業界でよく使われる言葉ですが、一般的な消費財メーカーで考えていきますと、恐らく、産業融合の時代になっているということを、ご案内させていただこうというのが、一番最初のお話です。
 二番目に、その産業が融合されていく時代、例えば、化粧品ですともう当たり前のことですけれども、薬品とか、あるいは、トイレタリー商品とは、殆ど一体となっております。そういう形で、産業の融合が起こってくるということです。その産業の融合の時代に、これまでとは違う勝ち方が必要なんだということです。それが競争優位作りということですが、それを二番目にお話してみようと思っております。
 それから三番目に、その事例としまして、これは私どものオリジナルの調査で、「消費社会白書」の中に入れていくつもりですが、ご存知の通り、今急速に、auがDoCoMoを追い上げております。これは、プラットフォーム戦略というものが、大きく寄与したせいだと考えています。そこで、何故auが追い上げているのか、NTT DoCoMoが追い上げられてるのかということを、この融合の時代のキーとなります、プラットフォーム戦略の事例として、お話していきたいと思っております。
 恐らくこのプラットフォーム戦略の事例というのは、単に携帯電話の世界だけではなく、これからの消費財メーカーのビジネスモデルを考えていく上で、大きなひとつのヒントになるのではないかと思っております。
 四番目に、ではこれからauが、ずっと追撃していって勝つのかといいますと、どうもそうではなさそうだと思われます。もっと大きな変化が起こってきそうだということです。それが四番目のお話でございまして、デジタルコンバージェンスは、これからどういう風になるのかというお話です。
 最後に、事例をお話した後、消費財メーカーが、これから考えていくべき、新しい競争優位作りについて、どんな風にしていったらいいのかというのを、最後にまとめまして、五つのお話とさせていただきたいと考えております。

1.産業融合の時代

 さて、最近「脳を鍛える大人のDSトレーニング(脳トレ)」というのをやっているわけですが、バカ野郎と思いますね。俺は昔頭良かったんだと思って、脳トレやりましたら、年齢が85歳と出て。ガクッとしましてですね、大変苦労してるんですけど、任天堂DSですが、大ヒットですね。続いてPSPで出てます「脳力トレーナー ポータブル」。東北大学の川島先生も大変なものを開発したと思いますけれども、大ヒットしています。そしてPSPから「トークマン」が今月発売ということでございますけれども、こういうゲームと携帯と、それからPDA、そういうものが一体となって、今大きく変化しようとしております。
 電通が、ついにネットで民放テレビ局5社と映像配信を始めるということになりました。楽天とか、ライブドアの問題というのは、実は表層的な問題でして、その背後には電通・博報堂があったことは確かなのですが、いよいよ動き出しました。そういうことを事例にしながら、これからお客様のニーズが多様化し、そして高度化していく、そういう世の中、時代におきまして、何が競争作りのポイントになっていくのかということをお話させていただこうと思っています。
 これからのひとつの業界の捉え方としまして、21世紀に入って急速にブロードバンド・インターネットが普及して参りました。NTTのおかげで、これだけ光ファイバーが張り巡らされている国というのは、世界のどこにもありません。それが急速に普及し、同時にデジタル技術も普及して、もう放送と通信の区別がなくなってきました。パソコンの区別もないという風になってきました。そこで、ビッグバンが起こり、それが21世紀に入って、2000年以降、急速に変わって参りました。それを産業の方からいきますと、垂直分業という区分けが、少し変わって参りまして、水平分業も変わってくる。そんな風に変わってきたわけです。製造業と、それから関連するコンテンツ、情報関連産業との間の関係も変わってきたということですが、図のように、先ず技術開発があって、部品、原料を作って、アセンブルして、端末を作って、何らかのゲートウェイ、プラットフォームを通じて、アプリケーション・プラットフォームもまた通じまして、コンテンツサービスを提供して、初めてユーザーニーズが充足するということです。こういう風に、ハードウェアとコンテンツが一体となるというように、垂直分業が一般的には行われています。
 横というのはテレビであったり、通信機であったり、パソコンであったりするわけですが、今、放送とネットの融合の時代が起こっています。この融合の時代の特徴というのは、今までは、技術開発から、端末を作る所までは縦にテレビメーカーがやっていたことです。その先は放送局、代理店がやっていたという分業が、崩れています。通信機メーカーでも同じことが言えまして、パソコンでも同じですが、更に横の分業、「水平分業」と言っていますが、日本企業は縦の分業すなわち「垂直分業」が得意であったわけが、それがどんどん横の分業に変わっていく。横が繋がっていくようになってきて、現段階は放送とネットの融合の時代ですが、いよいよ来年度に携帯電話で、「H264」というビデオ圧縮技術を利用し、地上デジタル放送を使った、ワンセグ放送が始まりますが、恐らくこれを引き金にして、大変な融合が起こってくると思われます。一言で言いますと、放送とネットとエレキの融合、こういうのが起こってくるのではないかということです。

図表1.放送、ネットとエレクトロニクスの融合の時代


 消費財メーカーにとっても、例えば、米は全く売れませんけれども、コンビニで売るおにぎりというのはどんどん増えまして、何と今は1日1,000万個売れております。食パンは全く売れませんけれども、ディズニーランドで食べるお昼のメニューとしてのサンドイッチは増えております。醤油、焼酎は、1リットル100円以下で買わないという主婦が沢山います。つまり、メーカーの作っていく「物」というのは、情報とかコンテンツが入って初めて価値を持つということです。ユーザーのニーズが高度化していく時代といえます。それと同じように、垂直分業が、今まではものづくりでした。情報サービスの方は、どちらかというと、水商売的な仕事になっていきます。それは我々のやる仕事ではないんだという構造ではなくなってきているということです。そういう意味で、垂直分業がひとつの統合された形になって、更にそれが横にバラバラになっていって、そして、この横のバラバラになった所が繋がっていく、そういう形で産業の水平的な分業も、垂直的な分業も変わっていく。私どもとしては、それが今の日本のエレクトロニクス産業が置かれている状況であると、認識しております。それを、放送、ネットとエレクトロニクスの融合の時代と呼びます。そういう時代が、来年度にもやってくるのではないかという認識しています。
 そういう中で、日本企業は、日本の産業といってもいいと思いますが、何が強かったのかといいますと、これは、製造装置を含めて、川上が大変強いということです。シェアで、国内と海外でいきますと、国内が54%で、電子材料になりますと65%です。それから電子部品51%というように、川上が大変強く、そこそこの世界シェアを持つという構造なのです。

図表2.ものづくりの強さ−川上と垂直統合による摺り合せが強み


 ものづくりの今の強さというのは、川上が強い、つまり部品や製造装置が強いと同時に、垂直統合の部分を、統合することによって、そこで摺り合わせによって、他社とは違うものを作り出すという、ただ単なるそういう強みであったということです。それが今、世界的にグローバル市場の中で融合の時代になりまして、水平分業が、メインの融合のポイントになってきている、そういう段階において、全ての商品で、パソコン化が進んでいます。

2.産業融合の時代の時代の新しい勝ち方

 パソコン化が進んでいくとどうなるかといいますと、日本企業の、日本メーカーの出番は全くなくなります。80年代、パソコンというのは、NEC98、富士通FMV、シャープMZというような、懐かしいブランドがあったわけですが、これは技術開発から、プロセッサー、デバイサー、アセンブル、OSミドルウェア、アプリケーションまで、一貫してひとつのメーカーが提供していました。ここでNECがひとつの天下を創ったのですが、それがDOS規格というひとつの規格が出たために、水平分業がどんどん進んでいきます。そうすると日本企業は、出番がどんどんどんどんなくなっていきまして、アセンブリになってるということです。今や殆どがアセンブルも中央部で行われておりまして、日本の家電メーカーの、メイドイン何とかという所を見ますと、殆どがメイドイン・チャイナになっております。勿論iPodも同様ですが、日本企業は、現在では、部品も含めて殆ど全く出番がない状態です。従って収益は出ないということです。そういう構造になっております。
 その後10年遅れで追いついてきておりますのが、追いついて欲しくなかったですけれども、携帯端末でございます。90年代、セットメーカーがあって、一生懸命やってきたわけです。日本の携帯電話というのが世界一だと思われておりますけれども、これは大変な錯覚でございまして、どんどんどんどんパソコン化が、つまり水平分業が進んでおりまして、近未来においては殆ど出番がなくなるんじゃないかと危惧しています。組み込みMPUや、ベースバンLSI、LCD、メモリとか、電池。今の段階で日本メーカーが残れる場所は、電池ぐらいかなと思われます。後は、OSでも、リナックス、シンビアンとか、BREWとう、クアルコムのベースがあるわけですが、MSモバイルも含めて、日本でアプリケーションのプラットフォームとして残れるものは、なかなかないんじゃないかとみております。狭まる得意な垂直分業と、その中で進む水平分業化というのがあるわけです。これが融合の本質で、日本のメーカーの得意分野は、ものづくりで摺り合わせるということですね。液晶パネルがありまして、液晶テレビへの、チューナーをつけていく部分で、何らかの独自の組み合わせ、摺り合わせによって、例えばシャープだと、亀山工場でやるわけですが、そこでの独自の摺り合わせです。同じ日本語で、違う仕事をしている人が、一緒に瞬時に働けるということです。そこから作り出される薄さとか、有田焼のデザインとか、そういうものが、日本のものづくりの強さを作っているわけですが、世界的なグローバルな流れからいきますと、それは、これからも永遠に差別化できるかというとそうはなりません。そうすると、別の強み、別の強さを出してかないといけないということになります。

図表3.融合の本質ー垂直分業から水平分業へ


 では、水平分業の中でもうひとつ、どんなことが起こってるかというと、徹底してコスト競争に敗れていっているということがあるわけです。37インチ液晶パネル、先週の金土から年末商戦がスタートしておりますが、シャープ製品含めて、液晶テレビ37インチの場合は殆どがもう、1インチ1万円を切っております。1インチ1万円を切るというのはどういうことかというと、売れ筋の価格まで行ったということですね。で、シャープが一番、2005年時点でいうと、シャープとサムスンと、チーメイ(奇美電子)の3社が、多分1インチ1万のコストを達成してるだろうと思われます。図表では、縦軸に1日当たりの単位、横軸に生産量をとっております。
 シャープは次にどうするかということですが、サムスンは、SLDC含めて、ソニーと一緒に、もう3,500億の投資をすることを決めています。どうなるかと言いますと、2009年で、1インチ日5,000円を切るということになります。そこで、シャープは次の投資をやるかどうかということが、今問題になってきてるわけです。これをやらないと、1インチ5,000円まで行きません。更に中国まで普及させようとしますと、1インチ1,000円まで落としていく必要があります。そのための投資競争というのが、なかなか日本企業、単独1社ではやれないということになっています。水平分業になっていきますと、殆ど差がなくなってきますから、投資で、量産優位を築いていかないとどうしようもない。日本企業の強さというのは、昔、EUと日本とアメリカと合わせて、大体3億人ぐらいの市場で取った量産優位なんです。そこに中国の沿海部の人口が入ってきて、韓国の5,000万人が入ってきて、東南アジアの、1人当たり1万ドルの年収の人々がどんどん入り込んで、5億6億の人口になった。つまり、6億の、1万ドル以上の世界人口に対応した、量産優位というのは、今の日本のメーカーで築けている所はないんです。そこで、量産はもう儲からないと、決めつけてるわけですね。そういう形で37インチ液晶パネル、まあシャープに是非頑張って欲しいと思いますし、プラズマでは松下に頑張って欲しいと思いますけれども、なかなか、1年の経常利益が1兆円を出すサムスンと、経常利益が500億、600億で、よく頑張ったと言ってる企業との間の投資競争のレベルというのは、愕然と差がついてきてるということです。ところが、残念ながら日本全体となると、1,400兆円という、膨大なお金が回ってると、そういう状況にあるということでございます。水平分業で勝てないということです。

図表4.コスト競争(37インチ液晶パネルのケース)


 同じことが携帯電話で言えます。日本で1台当たり、1万7,000円とか、4万円とか、最近のソフトが大変高い状況の中ですと、1台20万円という話もありますが、これを韓国のサムスンと、日本の1番トップシェアのメーカーとの価格競争で同じように、縦軸に、単位当たりコストをとりまして、横軸に累積生産量をとりますと、2004年と2010年と、恐らくこれは予想でございますけれども、5分の1ぐらいのコストの差が開いてるということです。ブランドで勝負出来るのは、価格差30%までですね。そうすると、5分の1まで開きますと、もう勝てない。日本企業というのは、1億の人口のマーケットを考えていますが、韓国のサムスンぐらいになってきますと、世界のマーケットを考えていますので、そもそも想定している需要の大きさが違うわけです。日本企業には、世界に出て行くつもりはないと、まず日本で勝って、それから世界に出て行こうという、そういうのが長々と、習慣としてありますから、なかなか勝てないという状況があるわけです。

図表5.コスト競争(携帯電話のケース)


3.新しい競争優位の鍵−プラットフォーム戦略

 融合の時代、水平分業がメインになっていく時代は、価格競争、量産競争が勝負になります。量産競争=コスト競争になります。コスト競争=投資競争です。そして、その投資競争ですが、日本企業というのは、DVDの規格に見られますように、どうしても協調がなかなか出来ないようです。コンセンサスが得られないということです。そういう状況の中で、要は水平分業の中で、グローバルな市場では敗れていかざるを得ないというような厳しい側面が出ているということを、ご案内させていただこうと思います。
 そうすると何で勝つかということです。もうひとつ、プラットフォームという勝ち方がありますよと申し上げたい。つまりコスト競争で勝たない場合は、どうしていったらいいかというと、ひとつの勝ち方はプラットフォームで勝っていくということです。
 携帯電話では、ずっとNTT DoCoMoが市場をリードしてきました。iモードというプラットフォームを作って、大変世界中から評価されたわけですが、ここに来て、3GFOMAが少し足踏みしまして、その結果、2002年の4月から、au by KDDIが、急速とは言いませんけれども、徐々に徐々に追い上げてきています。何故こんな追い上げが起こってるのかと、あれだけ強かったNTT DoCoMoが、あるいは、NTTの技術というのは、現在でも世界一だと私は思っておりますけれども、最高の技術を持ちながら、何故敗退しようとしているのかということです。

図表6.携帯端末市場のコンバージェンス−追い上げられるドコモ


 いくつか調べたものがございます。ひとつは、約30項目について、お客様の立場から両者を比較してみました。コンテンツはどうなのか、ゲートウェイはどうなのか、それからアプリケーション・プラットフォームはどうなのか、端末はどうなのか、それから価格はどうなのか、ユーザーはどうなのかと、いうことを見て参りました。そうすると、明らかに分かることは、au by KDDIの方が、コンテンツが豊富だということです。ナビゲーションシステムがあるということです。そういうナビゲーションシステムを含めて、コンテンツがNTT DoCoMoよりも豊富で、かつ、早かったということです。NTT DoCoMoは、ナビゲーションシステムというのをつい最近作ってきているのですが、ここではやっぱりJAVAというひとつの大きなソフトウェア・アプリケーションが、auのBREWと比較して、若干難しい面がございまして、そこで遅れをとっている状況があります。こんな風に、勝っている項目をマーキングしますと、皆さん見ていただいてるような、色の組み合わせになるわけです。NTT DoCoMoが明らかに勝っていると思われますのは、テレビ電話機能、つまり技術者としての夢を追いかけすぎたという面もあるわけですけれども、それであります。それ以外、つまりコンテンツ、お客様が使いたい、利用したいコンテンツという所を中心に、au by KDDIが、非常に優れた優位性を持っているということがお分かりいただけると思います。
 その背景には何があるかというと、ひとつの見方はBREWという、クアルコムのチップでしか動かないアプリケーションのプラットフォームです。それをベースにして作りますと、世界中どこのクアルコムのチップの上でも、ほぼ動くというものであります。これは、開発メーカーにとっては、非常に効率的なソフトウェア・アプリケーションの開発が出来るということに繋がります。DoCoMoの方は、マルチプラットフォームといいまして、JAVAだとどこのプラットフォームでも動くし、どこのメーカーのチップでも動くわけですけれども、移植しようとすると、同一メーカーの違う機種になっても、JAVAをいちいち書き換えないといけないということになります。ソフトウェアの効率が、非常に低いということになります。その結果、NTT DoCoMoが優れているのは、テレビ電話が使えることと、多数のメーカーの品揃えが、29機種もあるということになります。

図表7.明暗を分けるプラットフォーム


 そういう姿勢が、結局は競争優位に繋がらず、そして、これにナンバーポータビリティが加わりますと、NTT DoCoMoのシェアというのは、これからどうなっていくのかということがあるわけです。その繋がりでみていきますと、固定電話がどうなっていくのかということもあります。スカイプのような無料電話がありますが、ライブドアが提供しているような無線LANを使って、そしてスカイプを導入すれば、携帯電話そのものが、スポットではタダになっていくという状況が出てくるということでもあります。

 申し上げたいのは、このプラットフォームがどうも融合の時代のひとつのキーの戦略になりうるということです。追撃成功の背景を、ここで四つ挙げます。世代交代のタイミングでの上手い攻勢、機動、KDDIはこれを上手くかけたということです。それから、戦略的なプライシング。新規導入、機種変更、どれを取りましても、auの方が安いということです。ところが、利用料金はauの方が高いということになっております。三番目には、これはソニーのハワード・ストリンガー社長の言葉ですけれども、without content electronic devices are just gavageということですね。つまり、コンテンツがなければ、電子デバイスは、ただのゴミ、ただの箱に過ぎないということなんですが、これを見事に立証したのが、携帯のコンテンツというものがあって、初めてお客様がそれを使ってくださるということです。テレビ電話というのは、夢の電話でしたけれども、これはなかなか実際のユーザーニーズを掴んだことにはならなかったということです。四番目に、やはりプラットフォームが挙げられます。ソフトメーカーを惹きつける、魅力的で効率的なプラットフォームの提供をしているということが、追撃、ある程度の追撃に成功している大きな背景として、あるんではないかということです。
 このように、コンテンツとハードウェアを結ぶプラットフォーム、そして、具体的には、ソフトウェア・プラットフォーム、その大きなプラットフォームというものが、ひとつの融合の時代の戦略、つまり、価格競争、水平分業で量産優位に対して勝っていける唯一の顧客志向の戦略になってくるんではないかというのが、申し上げたいポイント、事例のご案内でございます。

 では、このまま、auが、勝っていくかということが課題になるわけですけれども、ここでその前に、我々が推計したプラットフォーム価値をご覧ください。これは、顧客の生涯価値というものをベースに、お客様がどれぐらいコンテンツを利用されているのか、そして、どれぐらいこのプラットフォームで協力している開発メーカーが、売り上げ利益を出しているのか、そういうものを換算しながら、キャッシュディスカウントして、プラットフォーム価値を測定した、我々の新しい試みです。auの現在の株式時価総額は、DoCoMoの29%の価値しかございません。しかしながら、プラットフォーム価値を推計していきますと、DoCoMoの72%に迫ります。更にそれを、番号ポータビリティを含めて、いわゆる、移動を含めますと、DoCoMoの94%まで迫ってくるというのが、我々のプラットフォーム価値の推計です。
 このようなプラットフォーム価値の推計というものが出てまいりますと、恐らく株式の時価総額というようなものも、大きく変わってくるんではないかということがございます。このように価値が測定出来るように、産業融合の時代、プラットフォームの持っている価値というものが、競争作りの大きなポイントになってくるんではないかということのご案内でございます。

図表8.プラットフォーム価値の推計


4.携帯端末をめぐるデジタルコンバージェンスの行方

 その上で、これから、このauがこれからも勝ち続けるかといいますと、そこを少し、我々の「消費社会白書」の中で分析しております。この融合の時代に、何が競争の鍵となっていくのか、どうしたら競争優位作りに結びつくことが出来るのかということを、調査データもとに、ご案内したいと考えております。
 普段、お客様は沢山の携帯端末を持ち歩いておられます。大体ひとり平均2.0台です。6台以上という方も4.0%いらっしゃいます。4〜5台という人も、7.4%いらっしゃいます。2〜3台というのが、39.1%です。
 石井威望先生という、IT関係でよく書かれている、有名な元東大の先生がいらっしゃいますが、一度お会いした時に、その先生も大変そういうものがお好きで、ザウルスとかPDAとか、ゲーム機とか色々持っていらっしゃいました。私も結構好きな方で色々持ち歩くのですが、カバンの中は殆ど、PDAとかそういうものでいっぱいになってしまうんです。石井先生はこうやって、スキッと立ってるわけですね。「先生もそういうものをお好きなはずなんですけど先生はどこにお持ちなんですか」とおたずねすると、背広の上着をパッと開けて、見てくれやって。完成品じゃなかったですけど、全部上着に入ってるわけですね。それぐらい、好きな方は持ち運びに困ります。ひとつにしてくれよと思うわけです、携帯端末を。これが基本的には、コンバージェンスの、お客様側からのニーズです。携帯端末を持ち歩く際の不満は、色々あります。複数で重い、どうするんだということがありますし、ファイル間の交換や移動がなかなか出来ないとか、色々ございます。そこで、デジタルコンバージェンス、つまりひとつのものにしてくれよというのを、収斂の期待と見ますと、やはり台数を持っている人ほど、大きな収斂期待があるということです。それから、収斂ニーズを持っている人ほど、機会費用、先ほど「消費社会白書」の、消費のデータの所でご案内しておりましたけれども、機会費用が大きいということがあります。平均2,310円の機会費用を持ってらっしゃる。費用がかかってるということでございます。
 こういうユーザーが、そのコンバージェンスニーズを持っている、つまり、収斂するニーズを持っているというのが、これから、ゲーム機も、携帯電話も、iPodも、iPod miniも、iPod nanoも、iPod shuffleも、全部ひとつになっていくと、いうことの根拠です。

図表9.携帯端末ユーザーのコンバージェンスニーズ


 ユーザーのそういう、携帯端末に対するニーズを、50個ほど提示しまして、それをいくつかの分析方法を使って、ニーズを分類しました。その結果、全部で四つのニーズに分かれます。まず一番大きいのは、48.1%のニーズのグループで、「エニーエンターテイメント端末期待タイプ」です。韓国に、「いつでもどこでも」という、「anycall」というブランドがありますが、それと同じように、「エニーエンターテイメント」を期待するタイプです。いつでもどこでもエンターテイメントを楽しみたいというものです。1日2時間の通勤電車の中で、何としてでもエンターテイメントしたいんだという期待です。
 それからもうひとつは、「スマートフォン期待タイプ」です。これが昨今、NTT DoCoMoのM1000の導入も含めて、一番期待されていて、スマートフォンに関する期待です。ここに12月初旬に、ウィルコムから、シャープとマイクロソフトが組んだ、「WS003SH」というのが出ますけれども、それは16.6%です。
 それから、「タウンアシスタント端末期待タイプ」。これがauが作り出した、独自のニーズですね。街を色々歩くのに、街の中を歩くのに、あるいは秋葉原をウロウロするのに、タウンをアシストしてくれるような、そういうニーズを持ってらっしゃる方々です。
 そして、11.9%っていうのは、「コンビニエント端末期待タイプ」で、いつでもブラウジング出来て、そして、決済が出来るというニーズです。
 そんな風に、四つの携帯端末への期待があり、そこに向けて、色んなものが、現行商品がポジショニングされます。どんな風にポジショニングされるかといいますと、図のようになっております。スマートフォンに入りますのは、やはりNTT DoCoMoのM1000です。こういう期待を持ってる人は、こういうニーズの所に、スイートスポットに近く、ポジショニングされます。そんな風にポジショニングしていきますと、こんな風になります。

図表10.携帯端末への期待


 ひとつのポイントは、この「スマートフォン期待タイプ」の期待の所でやっぱり、M1000というものが、期待が大きいということと、それから、その一番大きな「エニーエンターテイメント端末期待タイプ」でスイートスポットに入っていってるのは、iPod、アップルのiPodであるということです。ところが日本では、iPodは、全く使えない。アメリカではiPodは、ディズニーと組みまして、ディズニーの人気番組がありますが、そういうドラマを、翌日配信するという仕組みがあります。それをiPodにダウンロードをして、見ることが出来るわけですが、日本の場合は、そういう提供サービスをやっておりません。実はアップルiPodというのは、日本では殆ど使い物にならないわけですけれども、イメージ上のポジションとしては、ど真ん中を突いているわけです。それに比べて、ソニーSEのPSPというのは、大変優れものでございまして、別にソニーの回し者ではございませんけれども、ロケーションフリーTVの機能を使いますと、無線LANスポットで、テレビも見られるようになっています。だから、実際の問題としては大変、PSPというのは、「エニーエンターテイメント端末期待タイプ」ニーズに近いのですが、しかし残念ながら、ポジショニングとしては、スイートスポットに入ってるのは、アップルiPodということになっています。次に近いのが任天堂DSになります。そしてその、ど真ん中にあるこの軸の真ん中にあるのが現状の携帯電話のニーズということになります。つまりこれは、四つの方向に分解しながら、収斂していくということを示しております。その中で、それぞれの製品がポジショニングされながら、これから競争が淘汰されていくということです。これが既存製品のポジションであります。

図表11.既存製品のポジション


 そして、今、どんな風に競争が行われているかと言いますと、非常に激しい新製品導入が行われているわけであります。ここでは、非常に面白い商品がいっぱい導入されています。その中でも一番重要なポイントは、来年の4月1日から始まるワンセグ放送です。もちろん、DoCoMoですと、パナソニックのワンセグ放送を受信出来る携帯電話ということになりますけれども、ここを目掛けて、どこまでシェアが取れるのか。それからPQIというものがございますけれども、いわゆる家電業界では、こういうのを「筋の悪い商品」と言いまして、なかなか売れない商品なわけですけれども、発想が面白いわけですね。何が面白いかというと、韓国ドラマ、プリインストール済みDVDなんです。これは、写ルンですと同じようなもんですね。もう初めから、つまり冬ソナが入ってるということです。韓国ドラマ、しつこいから、長いですよね。53話。チャングムなんか見ようと思うと、大変なことになります。しかし今一番TSUTAYAで売れてるソフトは、チャングムということになっておりますが、それがプリインストールされているわけです。ハードは二束三文の値段ですが、そういうものが台湾のメーカーから出ております。これは面白い発想ですね。つまり、ハードとソフトウェアを、ひとつに結びつけていくためのプラットフォームの考え方のひとつでもあるわけですけれども、そういうものが出ております。で、auの、ここのマーケットっていうのが、やはりauはキチッと収めておりますし、そのナビゲーションを内蔵する携帯電話っていうのは、今までの携帯電話と違ったジャンルを形成するんじゃないかということであります。そして、今、16.6%という小さなマーケットになるんですが、全てのメーカーが共通に期待してるのは、ここの世界でして、NTT DoCoMoのM1000、それからウィルコムのW-ZERO。ソニー・エリクソンのP990。それから、アメリカではサムスンのI700というのが出てますし、ブラックベリー、これは日本ではありませんけれども、ブラックベリーの7100iっていうのが出ております。全ての商品が、ここに向けて投入されています。この中で、ある所は、これからどんどんどんどん収斂されながら、競争が進んでいくということです。今申し上げておりますのは、これからのその、産業の融合が起こって、色々な商品、ここに食品とか、薬品とか、あるいは化粧品とか、そういうものを入れていただいても結構ですし、食品と、そういうものを入れていただいても結構かと思いますけれども、産業が融合が起こっていく段階において、こんな風に、いくつかのポイントで、競争が行われるんだということでございます。

図表12.新しい携帯端末の市場導入


 で、申し上げたいことは四つございます。結局この市場を制覇するためのキーポイントというのは四つあるということです。ひとつは、新製品、アプリケーション開発力が、やはり一番のポイントになってくるんではないかということです。それに対して、今の日本メーカーというのは、アプリケーション開発能力が非常に低下しています。つまり新製品をどんどん出せない状況にあるわけです。怖がって出せないということがあります。何といっても、世界でNO.1のお客様、金持ちで口うるさいお客様が揃っているわけですから、それを活かした商品開発をどんどん投入していって、成功したものがヒット商品になるというような、いわゆる連射型の新製品開発というのは、これから多分必要になってくるんじゃないかと思います。幸いお客様の財布は、若干、緩んでおります。そういう意味で新製品を投入していくチャンスであり、そこが狙い目だと考えております。それがひとつであります。
 それからもうひとつは、もう世界シェアを目指していかないと、国内シェアで生き残ったって、価値がないということです。量産競争で勝ち抜いていく、投資競争で勝ち抜いていくためには、やっぱり最初から世界シェアを目指していくことしかありません。私どもは、10年前、トヨタがグローバル10というコンセプトを出した時に、ハッキリ申し上げまして、なかなか大きな夢を出すもんだなと思いました。ところが、今や、グローバル10どころではございません。世界市場で10%のシェアを取るっていうようなことでございません。今もうNO.2になろうとしているわけであります。やはり最初から量産で勝っていくと、そういう考え方が必要なんではないかと思いますし、日本の自動車メーカーというのは、最初から世界市場を目指していっているという強みがあるんではないかと思います。それが二番目のポイントで、最初から、もう量産を捨ててはダメだと思います。
 三番目は、ソフトウェア・アプリケーションについてです。ソフトウェア・プラットフォームというのが、非常に重要になるということです。この中でソフトウェア・アプリケーションとして、BREWが、今、au by KDDIの強みと言いましたが、BREWがこの中で生き残っていけるかどうかは、全く未知数ということになります。NTT DoCoMoのM1000はシンビアンでございますし、ウィルコムのW-ZEROは、マイクロソフトのモバイルを使っております。そんな風にして、いかにして、ソフトウェア・プラットフォーム、つまり効率的なソフトウェアの開発メーカーを惹きつけて、そしてお客様が喜んでいただけるコンテンツを開発してもらえるかという、それの決め手となるアプリケーション・プラットフォーム、こういうものが大きなキーになっていくということでございます。で、残念ながら、こういう携帯の世界において、日本が打ち出していってるアプリケーション・プラットフォームというのは、今の所はない、それぞれメーカー独自のものを作っている段階にあるということであります。
 最後に、四番目に、何が重要かと言いますと、先ほどご紹介しましたこのPQIというメーカーがありましたように、やはり最終的には、ソニーのストリンガーがよく仰っておりますように、コンテンツがあってはじめてデバイスが価値を持つんだということです。そのコンセプトも逆のことが言えるわけで、コンテンツがなければ、ただの箱と言えると同時に、デバイスがなけりゃ、コンテンツなんていうのは、ゴミにもならない、そういう世界なんです。いずれにしましても、コンテンツとハードウェア、その両方揃ってはじめてお客様の価値を達成するということを考えていきますと、それを結ぶ、消費財メーカーからいきますと、情報と、それから、物事を結ぶ、その結びつけ方こそに、この産業融合の時代の成功の鍵があるんではないかと、いうことでございます。ハードとコンテンツを結ぶ、そういうその社会プラットフォーム、そういうものが、第四番目に必要になってくるのではないかと思います。法規制とか、あらゆるコンテンツをどこでも楽しめるというような、社会インフラも含めたプラットフォーム、大きな意味でのプラットフォームを、その国ごとにどうやって作っていけるかということが、大きな勝負のポイントになっていくんではないかな、というように考えております。
 最後に、これは少し、放送とかエレキとか、ネットの世界によりましたけれども、これからのコンバージェンスの方向を、この三次元で整理しておりまして、どんな風に、それぞれの製品が位置づけられて、競争が行われるかというのを、三次元の図で表現しております。

図表13.コンバージェンスの方向


5.プラットフォーム戦略による競争優位づくりのポイント

 そういうことも含めまして、最後にふたつご提案させていただきます。皆さんにご提案させていただきたいのは、この融合の時代、つまりお客様のニーズがどんどん高度化して、実際、価値の実現というものを、目的にされているお客様、それも高度なお客様がどんどん増えていくことは間違いありません。そういう形で、高度なユーザーニーズを捉えていくためには、少し市場をプラットフォームとして捉え直してみられてはいかがだろうかということであります。で、市場をプラットフォームとして捉え直すことによって、新しい収益要因、つまりそれは、競争力に繋げることが出来るんではないかということを、申し上げたいと思います。で、今まではといいますか、これはニュートン力学と、アインシュタインの相対性理論のような関係としてお考えいただきたいわけですが、この考え方は捨てる必要はございませんけれども、最もベーシックな考え方で、現代はもう少し違う考え方をしたらいいのではないかということです。業界の収益性を決めるのは、力だということです。五つの力だということであります。これがハーバードのマイケルE.ポーターがずっと唱えていることです。つまり、業界の中で、売り手との力関係で、出来るだけ安く仕入れる、そして、買い手に高く売りつけることです。これは何によって決まってくるかというと、パワー関係で決まってくるんだというのが、ポーターの伝統的な考え方でございます。新規参入業者を排除し、そして、代替品との競争力を上げて、業界内での競争相手を叩き潰しながら、パワーで勝っていく。パワーによって安く仕入れて、高く売る。この世界は現実に生きてるわけです。中国との競争、韓国との競争におきましては、情報家電メーカー、日本の情報家電メーカーは、このことは、現に頭に置いておく必要があるわけです。
 しかしながら、もう少しそれを高度にしていくと、どんな考え方が出来るかと言いますと、売り手と買い手、両面を捉えたプラットフォームというようなものが重要で、その魅力が収益を決定していくんだと言うことができます。つまり、売り手と買い手との協調関係を作りながら、お客様に対する市場価値を大きくすることです。そういう考え方をとるような市場の捉え方をすると、今までとは違ったビジネスモデルが描けてくるんではないでしょうかと、いうことであります。

図表14.市場をプラットフォームとして捉えなおすー収益要因


 プラットフォームという言葉を、定義しないで、使っておりますが、これは別名「二面市場」と言います。私どもがご指導いただいております、現在ハーバードの若手の先生で、ハギウ・アンドレイ先生という方がいらっしゃるのですが、そういう新しい産業組織論の人達が提唱しているひとつのコンセプトでもあります。その「二面市場」というのが、ひとつのプラットフォームの正式な定義になります。どういうことかと言いますと、買い手と売り手と、両方の市場があるということです。一方通行ではなくて、両方の市場があるということです。買い手と売り手との間で色々な相乗作用が形成されている、こういう市場を「二面市場」と呼ぶというのが定義になります。一応仮の定義と考えております。具体的には何かと言いますと、カードビジネスを考えていただければいいと思います。AMEXだったらAMEXというカードがございまして、それをAMEXはユーザーに提供するわけですけれども、もう一方で、ユーザーからカード発行代を取って、もう一方でそれが使えるお店に対して、そのお店が使えることを保障して、お店からもお金を取る。つまりこれは二面、売り手と買い手という関係からいきますと、これは二面市場ということになるわけです。そして、売り手の、ユーザーから見ますと、使えるお店がどんどん増えていきますと、そのカードの利用価値は上がりますし、あるいは、それを使えるお店の方からいきますと、その発行をしている枚数が増えれば増えるほど、お客様は増えますから、AMEXから紹介されてるお客様は増えると、そういう相乗作用があるわけです。そこで、市場をそんな風に捉え直すということです。ハードウェアがあったら、ハードウェアのマーケットがあって、そのハードウェアのマーケットに対して、何らかのコンテンツ、情報提供をする。そういう開発業者がいるということ。そのようにして、消費財とかいろんなものを取り上げていくと、市場を二面化することが出来る。そうすると、一面市場で勝負している会社よりも、二面市場で勝負している会社の方が優位に立てる。それがこれからの新しい競争優位の考え方ということになってこようかと思います。典型的には、カード業界ということが考えられますし、不動産業界もそうですし、それから、基本的には先ほど申しましたように、携帯電話、あるいはパソコン市場もそうであります。
 パソコン市場で考えますと、プラットフォームで一番成功しているのはマイクロソフトということになります。マイクロソフトは、OSを提供して、そのOSに基づいてアプリケーションを開発する、開発業者に対して、自分達のOSでもって、色々アプリケーションを作ってくれるという、そういうサポートをします。で、もう一方で、MS-DOSという、つまりMSのオペレーションシステムを、ユーザーに売ります。もちろんこれも二面市場です。そこで、開発業者がどんどんどんどん作ってくれれば作ってくれるほど、ユーザーにとってのOSの価値は高まりますし、ユーザーが増えれば増えるほど、開発メーカーはやろうとするようになります。これがBREWとJAVAのアプリケーションシステムの違いということになります。そんな風に二面化していくわけですね、市場を。その市場を二面化していく所は、なかなか他社には模倣出来ないということになります。で、こういう考え方を、例えばデジタルテレビとか、薄型テレビなんかでもってやっていくことはできます。なかなか上手くできないんですけれども、色んな試みが今行われております。例えばフォースメディアを基本的に利用出来るような形にして、セットトップボックスを内蔵した、東芝の新しい液晶のテレビだとか、あるいはパナソニックでいいますと、Tナビという、ナビゲーションシステムを入れたテレビとか、そういう実験的な試みを含めて、ソフトウェアとハードウェアを上手く組み合わせた、二面市場化への試みというのは、色々なことが、成功とは言えないまでも、いくつか行われております。そのような形で、市場を対立、力関係で接していくという考え方から、協調関係によって、総合作用によって、お客様に対する価値を上げていく、そういう風に考え方を変えていくことによって、新しくビジネスモデルを考え直すことが出来る、ということであります。
 食品もそうですけれども、なかなか野菜は売れませんけれども、30品目、RF1でサラダを売りますと、飛ぶように売れるわけです。情報が入ってるということです。単純ではありませんけれども、情報コンテンツとハードウェアを組み合わせていく。そういうプラットフォームを作っていくことによって、色々な関与者構造を変えていくことによって、これからの収益というのは、上げていけるんではないかというのが、au、あるいは、情報家電、産業融合の時代のモデルが示していることではないか、と思っております。
 最後に、そうしたプラットフォームによる競争優位作りのポイントについて、いくつか申し上げてみたいと思います。ポイントは五つ挙げております。収益は業界の魅力度と競争上の地位で決まるということに対して、収益はプラットフォームの魅力で決まるんだ、ということであります。二番目に、業界の魅力度は、関与者間のパワーで決まるということですが、これもそうなんですけれども、更にTSP的な考え方をするならば、TSPの魅力は、関与者の相互作用で決まるということができます。TSPと言いますのは、two sided platformの略であります。で、三番目に競争地位は、競争優位の持続性で決まるということに対しまして、競争地位は、TSPが模倣出来るかどうかで決まると言えます。競争優位は、差別化か、コスト優位しかないというポーターの主張に対して、TSPというのは、もっと多面的で、お客様に対して、魅力度を引き上げる。そういうことについて、コスト面からも、いろんな、多面的な要素で、TSPの魅力を上げることが出来るということでございます。auが提供しているひとつのプラットフォームの魅力というようなものを考えていただければと思います。

図表15.プラットフォームによる競争優位づくりのポイント


 良い戦略とは、他社が模倣出来ないことをすることであるという、ポーターの定義があるわけですが、最後に申し上げたいことは、良い戦略とは、ネットワークによって、価値を最大化することであると、TSPの分析からは言えるのではないかと思います。
 以上、皆様に申し上げたかったのは、情報家電、ネット、そういう世界で今、産業融合という、産業革命のようなことが起こってるわけですけれども、その産業革命というのは、よその業界の話ではなくて、あらゆる産業で恐らく通用することだと思います。その背景にありますのは、お客様の多様化と、お客様のニーズへのこだわり、そして高度化だと思います。DVDを欲しい人は少ないですが、冬ソナを見たい人は多いわけです。それが今の市場の本質だという風に考えております。で、そういう状況の中で、産業が融合していく中で、価格競争を狙うとすると、これはもう世界シェアを狙うしかないということになります。もう一方で、世界シェアを狙わないということで考えていくならば、それは、何らかの形で、今までの市場とは違うビジネスモデル、その参考になるのがプラットフォームという考え方だと思いますが、そういう風に市場を二面化して考えていくことによって、きっと新しい競争優位作りの方向性が見えてくるのではないかと、いうことでございます。
 来年、アンドレイさんと、それからエヴァンスさんという先生がいらっしゃいますが、もう一度議論をして、皆さんにプラットフォーム戦略について、また提案出来る機会が持てればと考えております。私の報告はこれで終わらせていただきます。どうもご静聴ありがとうございました。
[2005.11 『NEXT VISION 2006』講演]


【参照コンテンツ】
産業融合による情報家電産業の時代 −デジタルコンバージェンスが変える産業と戦略 (2005年)
高収益事業へのシフト戦略 −次世代戦略経営 NEXT VISION 2005より



 SESSION 1. NEXT MARKET PLACE 2006
 SESSION 2. NEXT CONSUMER − 趣都 アキハバラ
 SESSION 3. NEXT MARKETING 2006
 SESSION 4. NEXT STRATEGY 2006 デジタルコンバージェンス時代の新しい競争優位づくり
−プラットフォーム戦略
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