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III.経済・情報産業組織について
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3.時代の流れを読む
産業融合による情報家電産業の時代
−デジタルコンバージェンスが変える産業と戦略 <前編>
代表 松田久一
プリント用画面(PDF)
1.ビッグバンとデジタルコンバージェンス
2.強いはずの日本の情報家電メーカーの危機
3.デジタルコンバージェンスが生む情報家電産業
4.産業フュージョン−産業間融合
5.コンバージェンスする機器、コンテンツ、プラットフォーム
6.ソニーの決断

1.ビッグバンとデジタルコンバージェンス

 企業は、常に収益性を追求していかねばなりません。なぜなら資本主義というシステムが、より高い収益性を条件に成立しているからです。企業は休む間もなく、より高い成長性、より高い利益率を求めねば、資本主義システムを維持できません。ゆっくりしたスローな経営などは、例外や個人の趣味としてはあっても社会的にはあり得ません。

 時代によって、技術や市場が異なり、産業も変わるので、企業が高い収益性を得るための原則や戦略は異なります。従って、企業は、常に自社の収益性に影響を与える環境条件と環境の中で、より収益性の高い地位を得る方法を探索し続けねばなりません。常に、新しい市場の捉え方と、より賢明な戦略が求められます。

 現代において高い収益性を求めるならば、「デジタルコンバージェンス」 1) という新しい市場とその変化の捉え方が必須になると思います。これは、情報家電やデジタル家電などと呼ばれる製品・サービスを提供している産業で使われている言葉ですが、食品、医薬品、化粧品、トイレタリーなどの消費財でも同じことが起きています。

【 デジタルコンバージェンスとは 】
 私たちが住む宇宙の始まりは、ビッグバンと呼ばれる大爆発によって始まったと理論的には推定されています。最初の一撃が「神の手」によってなされたのか、なんらかの物理的な「ゆらぎ」で生じたのかは、まだわかりません。大爆発はやがて収斂(コンバージェンス)していきました。収斂の過程で、素粒子、原子、分子から地球、そして、生物まで様々なシステムが生まれました。それから約150億年が経過し、まだ、膨張を続けていると考えられているのが現在です。

 「デジタルコンバージェンス」とは、コンピュータと家電、放送と通信などの境界を形成していたアナログ技術の異質性がデジタル技術によって共通化し、それぞれ単独で成り立っていた産業の垣根が崩れ(ビッグバン)、異なる産業間の融合によって、再び、新しい産業へと収斂(コンバージェンス)していく過程を意味しています。

 現在、放送と通信の間で起きている現象は、ひとつの典型と言えます。NTTグループのぷららネットワークスなどは、映像や音楽のコンテンツを企画し、仕入れ、光ケーブルを利用した伝送技術の上で、視聴者に、通信とコンテンツ配信サービスを提供して対価を得ようとしています。フジテレビなどの放送局も、映像や音楽のコンテンツを企画し、仕入れ、地上波を利用した伝送技術の上で、視聴者に、コンテンツ配信サービスを無料で提供して、企業から広告収入という対価を得ています。それぞれ異なるアナログ技術で区分けされていた通信と放送の業界ですが、アナログ技術のデジタル技術化、インターネット・プロトコル(IP)などの伝送技術の共通化が進み、同じデータを地上波で流すか、光ファイバーで流すかの違いだけで、役割は同じになってきました。ユーザーからみれば、目的のコンテンツが視聴できれば、地上波であろうが、光ファイバーでも、どちらでも構わないのです。結局、放送と通信の違いは、法規制だけになりました」 2)

 通信業界に属するNTTグループと放送業界に属するフジテレビは、今やソフトバンクやライブドアを含む、より大きなひとつの産業に融合しつつあります。コンピュータと家電においても、デジタル技術への共通化が進み、同様のことが起きています。放送と通信(コンテンツ・サービス)、コンピュータと家電(ハードウェア)は、これらを繋ぐソフトウェア産業をも吸収し、今やひとつの巨大な産業へと生まれ変わろうとしています。新たに出現した巨大な産業の中で、従来の業界の枠組みを越えるような新たな製品・サービスが生み出され、全く異なる産業へと姿を変えつつあります。

【 ビッグバン以後のデジタルライフ 】
 技術の共通化によって進むビッグバンとコンバージェンスは、産業革命に匹敵する巨大な変化といっても過言ではありません。この変化は、私たちの生活を、音楽や映画などのコンテンツを、HDTV(高精細テレビ) 3) や携帯端末などのハードウェアを通じて、よりタイムレスに、よりスペースレスに、楽しむ生活へと一気にシフトさせる革命的なインパクトを持っています。新たな生活への変化は、既に至る所で起きています。

 ひとつは、音楽や映像コンテンツの楽しみ方が根本的に変わったことです。アメリカでは、アップルの「iTunes Music Store」、リアルネットワークスの「Rhapsody」などの音楽配信サービスが定着し、SBCコミュニケーションズの「U-Verse」、コムキャストなどの映像配信が始まっています。日本でも音楽はauの「着うたフル」、映像はYahoo!BB光TV(ソフトバンクBB)、光プラスTV(KDDI)、IPV6マルチキャスト放送 4) のPlala.TV on 4th MEDIA(ぷららネットワークス)などが、次々とブロードバンド放送、オンデマンドサービスを開始しています。放送局はこうした無数の通信サービス業者と競争することになりました。このように、音楽や映像コンテンツは、買いに行くものから、会員登録して、クリックひとつでダウンロードやストリーミングで視聴するものへと変わっていきます。メジャースポーツとニュースを除けば、あらゆるテレビ番組は、オンデマンドで、いつでもどこでも、好きな時間に、好きな番組を視聴するようなスタイルにシフトしています。こうした視聴スタイルを可能にさせたバックボーンにあるのが、「帯域爆発」です。「ネットワークの速度は6ヶ月で倍になる」というギルダーの法則 5) の通り、ネットワークにおける総通信量は、90年代半ばの数百メガビット(百万)/秒から、テラ(兆)ビット/秒級になり、今もなお、通信の帯域が爆発し続けています。ブロードバンドの普及は、まず韓国や香港、台湾などアジアの一部の地域で先行しましたが、アメリカや日本でも総世帯の約3割を超える水準にまで浸透してきました。ブロードバンドの普及と帯域の拡大によって、家庭に音楽や映像コンテンツを容易に配信できるようになりました。

 ふたつは、新たなハードウェアの進化と普及が進んでいることです。テレビについては、日本や、韓国などアジアメーカーの大規模な設備投資によって、薄型テレビ、中でも液晶テレビの価格が累積生産量の拡大に伴うコストダウンによって急速に低下し、1インチ1万円の需要のブレークポイントを越えました。各社の投資計画をベースにすると、2009年までには、さらに50%価格が下がります。こうした低価格化による普及拡大と、ブロードバンド回線を通じた家庭への映像配信によって、薄型テレビが家庭を埋め尽くしていきます。ユーザーはテレビの解像度に見合う、より高精細な映像配信、大容量回線を求め始めています。一方、携帯電話は、全世界で13億人と言われるユーザーが、2007年には20億人にまで膨れあがります。端末の進化により、いつでもどこでもインターネットにアクセスして、電話やeメールだけでなく、音楽、映像コンテンツを利用することがきるようになっています。日本でも、CDMAなど第三世代携帯電話の普及に伴い、音楽のダウンロードや、映像コンテンツ配信サービスの利用が拡大しています。auの「着うたフル(2万2,000曲配信)」が、半年で500万曲もダウンロードされるほど、浸透しています(4月3日時点)。

 現代の市場は、テレビや携帯電話などのハードウェア、音楽や映像などのコンテンツ、それらをつなぐサービスとの相互依存性が高まり、もはやそれぞれが単独では成立しえなくなっています。このインパクトは、ハードウェアをはじめとして、音楽や映像コンテンツ、サービスのあり方を根本から変えていくものです。

2.強いはずの情報家電メーカーの危機

【 乗り遅れた日本企業 】
 アメリカのビジネス誌では、デジタルコンバージェンスをリードする5社としてサムスン、マイクロソフト、IBM、インテル、コムキャストがあげられています 6) 。ここに日本企業は1社もありません。日本企業は35位にNTTドコモが入っているに過ぎません。これが経済産業省や、RIETI(経済産業研究所)のAndrei HAGIU氏 7) をはじめとして、様々な所で、懸念材料になっています。なぜ日本企業はトップ5に入っていないのか、デジタルコンバージェンスの時代に、日本企業はどんな戦略を構想していくべきか、ということを、本気で考えなければいけない段階になっています。

【 根強いかつての強者への幻想 】
 80年代のVTRにみられるように、世界を席巻した日本の家電メーカーというのは、こういった領域には結構強いと思われてきました。しかし、2004年度の主要家電メーカーの実績をみると、決してそうではないことがわかります(図表1)。

図表1.日本の情報家電メーカー10社の収益性


 2004年度の主要家電メーカー10社の売上高は合計で49兆円、対前年成長率は104%です。GDPの伸び率よりは少々高いものの、伸びている企業と、伸びていない企業があり、104%という数字になっています。東京では、新宿西口ヨドバシカメラ、ビックカメラ、さくらやと、大変な流通の厳しい競争が行われています。ヨドバシカメラの売上成長率は101%、あるいは100%と言われています。数量は確かに伸びているのですが、売上は殆ど伸びていません。価格競争をシビアにやっているためです。104%であっても、ものづくりで本当によくがんばったと言えるかもしれません。

 利益をみると、10社合わせて2004年度の見通しは1兆1,060億円になります。ところが最近、これが続々と下方修正されています。10社の利益の合計は、対前年で93%と前年度を下回る見込みです。利益率は、シャープが最高で5.5%。平均すると、2.2%になります。これは大変、情けない事態です。

【 簡単に買えてしまう日本の情報家電メーカー 】
 その情けなさは、株式時価総額に表れています。松下電器で約3兆9,936億円、ソニーで4兆673億円ですが、サムスンは6兆9,964億円です(3社とも、2005年4月8日時点の数字)。税額の計算もありますが、サムスンの2004年度の経常利益が、約1兆787億円と言われていますので、サムスンの4年分の利益で松下が買えるということになります。アジアの家電メーカーの中で、最大の株式時価総額を持っているのは、実はサムスンなのです。その規模は、NTTと同レベル(7兆5,715億円)です。

 もう一方、トヨタ自動車は、サムスンと同じで、1兆2,000億円の経常利益があります。売上高は18兆で、経常利益率が6.6%あります。トヨタ1社と、情報家電メーカー10社の合計の利益が一緒なのです。情報家電メーカーは、売上が大きくても、利益率が大変低い水準にあると言えます。利益率が低いということは投資競争で勝てないということです。また、株式時価総額という観点からみても、かなり問題があります。このような低利益で許されるのは日本だけです。サムスンの株主は6割が外国人の投資家であり、20%ぐらいの利益率を要求します。ソニーで10%、松下電器で5%を利益率の目標として掲げていますが、これはかなり低い水準です。しかもその水準ですら、日本の情報家電メーカーは達成できていない状況なのです。

【 10社60%の衝撃−流通の寡占パワー 】
 利益が出せない大きな理由は、競争の激しさと流通の寡占パワーです。ある意味で10社の情報家電メーカーの技術にほとんど差はありません。従って、代替的な製品はどこでも作ることができます。ひとつの製品がヒットすれば他のメーカーも一斉に追随します。現在なら携帯音楽プレヤーがいい例です。各社同じものが作れる条件があって、売り先である流通は寡占状況です。

 国内の家庭電器製品市場は約10兆円ですが、流通段階では市場の6割が、たった10社で占められています。さらに、その10社のうちの1社、ヤマダ電機が1兆円で市場の1割を占めています。こうした流通企業が、圧倒的な寡占パワーを持っていて、これを背景にメーカー間に価格競争をさせて、結果として、低価格条件を提示し、様々なインセンティブを供給するために、たとえ、トップシェアをとったとしても儲からない構造になっています。自前流通中心のアップル、自前のネット流通のデルが日本市場で利益を出せているのは、日本の寡占流通市場に依存していないからです。

 アメリカでも同じです。アメリカの紙オムツ市場の32%、ヘアケア製品の30%、歯磨き粉の26%、ペットフードの20%をウォルマート1社が支配しています。メーカーはウォルマートの意向を無視しては、ものをつくれない状況になっています。アメリカで中国からの輸入が増えているのは、ウォルマートが中国から仕入れている商品が増えているからです。これを解決しない限りメーカーは全く儲かりません。

 トヨタ自動車が1兆2,000億円の利益を出していますが、これは何もものづくりが凄いということではありません。情報家電は、ものづくりでは負けていませんが、利益が上げられないのです。その理由は、流通構造の違いにあります。自動車業界は、車種別ディーラー制になっています。車種別ディーラー制ということは、ユーザーの欲しいものが必ずしも店頭に並んでいるわけではないということです。車種別に、トヨタのカローラ店、ネッツ店、ホンダのプリモ店、クリオ店、のようにわかれていて、土日にお店まで行かねばなりません。ユーザーにとって不便な流通構造になっているわけです。しかし、こうした自動車業界に固有の流通構造がメーカーの収益を維持しています。

 逆に情報家電は、自動車ディーラーと違ってヨドバシカメラにいけば何でも揃います。ただ、新宿の西口をみればわかるように、さくらやがあって、ビックカメラがあって、ヨドバシカメラがあり、3社とも同じものを売っていて、お互い値段では絶対に引き下がりません。産業組織論の基礎的な理論 8) が説明するように、襷がけ構造になっているために、価格は限界費用、すなわち利益ゼロの所までとことん下がっていくことになります。メーカー段階での価格競争と、小売段階での価格競争が起こって、最終的には小売もメーカーも利益が出ない構造になっているということです(図表2)。

図表2.流通の寡占化(10社60%)


3.デジタルコンバージェンスが生む情報家電産業

【 GDPの10%以上を占める巨大産業 】
 異なる産業の融合、デジタルコンバージェンスという大転換期にもかかわらず、日本の情報家電メーカーは低収益から抜け出す糸口をみいだせない状況にあります。この原因は、伝統的な家電産業が壊れ、魅力を失う一方で、デジタルコンバージェンスの方向が見えないことにあります。さらに、それに対応する戦略がみいだせないことにあります。顧客と市場を見極め自社の限られた資源を集中するという当たり前のことをやればいいのですが、なかなかそれができません。特に、流通では小売業との人的な繋がりなどのしがらみがあってなかなか改革が進まない、という見方もあります。しかし、こうした「しがらみ」論以前に、市場が見えないのでどこに集中していいかわからず、近視眼的な利益基準で判断して、投資分野の選択と集中を間違え、失敗を繰り返し続けて、消耗し続けているというのがメーカーの姿です。

 従って、日本の情報家電メーカーがグローバル市場で躍進し、日本経済に雇用面で貢献し、結果として、日本を含めたグローバルな消費者余剰を高めていくには、まずは、自社の属する産業が大きく変わりつつあり、どこかに収斂していく過程にあるという市場の見方をすることが大切です。デジタルコンバージェンスが進む過程で、家電産業は、他の産業を巻き込みながら巨大な情報家電産業へと姿を変えつつあります。この新しい産業と市場の理解は、高収益をもたらす戦略の全ての出発点となりえるものです。こうした捉え方の背景にある技術、製品の進化と戦略意図について説明します(図表3)。

図表3.情報家電とは何か − デジタル家電、IT産業との関連


 情報家電とは、経済産業省によって「携帯電話、携帯情報端末、テレビ、自動車等生活の様々なシーンにおいて活用される情報通信機器及び家庭電化製品等であって、それらがネットワークや相互に接続されたものを広く指す」と定義されています。「e-Lifeイニシアティブ」という報告書の中で、整理されています。

 デジタル家電とは、情報家電とほぼ同義で「DVDレコーダ、デジタルカメラ、液晶・プラズマテレビなど、信号の入力や制御、編集などをデジタル技術で処理する家電製品を指す」と定義されています。情報家電は経済産業省、デジタル家電は日本経済新聞社を中心にマスコミで使われている言葉です。

 情報家電、あるいはデジタル家電が、家庭用向けの機器及びソフトウェアサービスを指すのに対して、IT産業という場合は企業向けのものが含まれます。さらに、色々なソフトウェア産業も含まれます。IT産業というのは、情報家電プラス企業向けのもの、になります。

 経済産業省では、2003年時点で日本の情報家電の規模を約10兆円とみており、2010年には約18兆円の規模に成長すると予測しています。ここで言う10兆円、18兆円というのは、主として国内需要です。日本の情報家電メーカー主要10社の売上高を全部合計すると約50兆円、簡単には比較できませんが、GDPの約10%を占める巨大な基幹産業です。ここにNTTの7兆円、NTTドコモの5兆円、さらに、いくつかの産業を付加し、日本のいわゆる産業別の日本経済への影響力というのを考えると、途方もなく大きな産業であるといえます。自動車産業についても、昔は車といえばエンジンでしたが、今はもう家電になり、これからは通信機器になろうとしていますので、自動車も情報家電のひとつと考えてもいいのではないかと思うぐらいに、デジタル化や、通信機器化が進んでいます。

【 独立した産業ではなくなる家電 】
 この「情報家電」を技術的側面から捉えると、五つに特徴づけることができます。

 ひとつは、「デジタル技術をベースとしている」 9) ことです。情報家電は、半導体やメモリを使う機器であるということです。これまでは、オーディオ、テレビ、カメラなど製品カテゴリー毎に特有のアナログ技術というものがありました。それが真似のできない技術となって蓄積され、日本企業の家電製品における強みになってきました。しかし、今後はこれが全てデジタル技術に置き換わります。このことは、個々のハードウェアの違いが事実上なくなるということを意味しています。

 ふたつは、機器間、ネットワークを介した相互接続性があることです。個々のハードウェアの単独性がなくなって、IPをベースにした、機器間の相互接続が進んでいることです。

 三つは、ソフトウェアとの相互依存性が非常に高いことです。OS(オペレーティングシステム)には、マイクロソフトのウインドウズやオープンソースで知られるリナックスなど、様々なものがありますが、情報家電はこれらのOSをベースに動いているものもあり、ソフトウェアの動作環境と近くなっています。

 四つは、情報コンテンツ、サービスなどとの相互依存性が非常に高いということです。iPodという、アップルの携帯音楽プレヤーが爆発的にヒットしました。2001年11月に発売され2004年末までに累積で1千万台、去年だけで800万台という驚くべきヒットです。ヒットの要因のひとつは、インターネットを通じて音楽をダウンロード出来るサービスを提供したことです。ダウンロード可能な曲は100万曲です。この曲数は他を圧倒しています。しかし、日本では、著作権処理の問題でこの優位性はありません。現代のハードウェアは、情報コンテンツ・サービスとの相互依存性が非常に高いものです。

 五つは、ウィンテル帝国(マイクロソフトのWindowsとインテル)と一線を画した「使い易さ(easy-to-use)」への対応があります。これはふたつの側面があります。ひとつは、機器の起動に時間がかかったり、ブルースクリーンになったりすることに耐えられないユーザーへの対応という側面です。松下電器は4月にDVDレコーダの起動が1秒という機種を発売しますが、情報家電という言葉が持っている意味合いのひとつに、ユーザーが「使い易く(easy-to-use)」、信頼性があり、途中でブルースクリーンになったりしない、という安心感があります。

【 「テレビスター」になりたいマイクロソフト 】
 もうひとつの側面は日本企業の戦略的意図です。90年代、いわゆるウィンテル帝国に日本の家電メーカーは大変手痛い目に会いました。半導体のチップを作っているインテル、OSを作っているマイクロソフトの収益率が高く、真ん中のアセンブルは非常に収益率が低いというスマイルカーブと言われるものがあります。日本の家電メーカーは、収益率の高いOSとチップをウィンテルに押さえられたために、悪戦苦闘しました。従って、ウィンテルとは一線を画す展開が強く志向されています。

 しかし、ビル・ゲイツが最近こういうことを言っています。かつてワープロという製品があったが、その機能はもはやパソコンが全て取り込んだ、今後はAV側の機能がコンピュータに移る時代だ、と。マイクロソフトは、現在、ケーブルテレビ会社のコムキャスト、通信会社のベライゾン、SBCコミュニケーションズ、ベルサウスと組んで、IPTV 10) を積極的に普及させようとしています。「テレビスターになりたいマイクロソフト」(Microsoft wanna be A TV Star) 11) ということです。コンピュータの世界だけでなく、テレビの世界でもマイクロソフトが、大きな脅威になってきています。

【 情報「家電」に込められた思い 】
 情報家電の中身は、限りなくパソコンに近づいていますが、日本ではあえてパソコンとの融合ではなく、パソコンがやってきたことを家電でできるようにしようというのが、情報家電に「家電」という言葉を使っている理由です。「家電」という言葉には、潜在的にはウィンテルあるいはマイクロソフトのOSと分離して、もっとユーザーにとって「使い易さ(easy-to-use)」が実現できる安定性の高い、信頼性の高い、そういう機器を作っていくんだという思いが込められています。

[2005.4 J-marketing.net]

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1) デジタルコンバージェンスとは、もとは、Nicholas Negroponte(米国マサチューセッツ工科大学メディアラボの設立者)によって、デジタル技術や通信技術の発達によって、電話、放送、通信、出版など、異なるメディアがひとつに統合されるという「メディアの収束」を表すものとして使われ始めた言葉です。(「Being Digital」1995)。本論文では、メディアの領域だけでなく、音楽や映像コンテンツなどのエンターテイメント、コンピュータ、家電、ソフトウェア、あるいは自動車まで含めて、もっと多くの産業の融合と相乗効果によって、再び、新たな産業へと収斂していく過程を意味するものとして広義に捉えています。
2) 法規制が異なるというのは、放送業界と通信業界が、異なる法律で規制されていることを指します。日本の放送業界には、電波の混信を防ぎ、秩序ある運営がなされるように、電波の周波数を各放送局に割り当てた「電波法」と、電波を使用して情報提供することの社会的責任を勘案して放送の内容や運営方法について記した「放送法」があります。地域を限定した免許事業として、放送事業者には厳しい制約が義務づけられています。例外として全国放送が認められているのはNHKだけです。一方、通信業界には、電気通信事業に関する詳細な規定を定めた「電気通信事業法」があり、免許事業として制約が義務づけられています。このように放送と通信は異なる法規制のもとで、放送事業者は「放送免許」、通信事業者は「通信免許」を国から与えられ、事業を運営しているという違いがあります。最近では、「電気通信役務利用放送法」(2002.1〜)により、通信ネットワーク(衛星通信の場合と有線ネットワークの場合がある)をインフラとして利用し放送を行うことが可能になりました。有線ネットワークを利用する場合の放送は、有線役務利用放送と呼ばれています。映像を個々のユーザーに対し、通信ネットワークで伝送するため、利用するインフラはADSLやFTTHのブロードバンドインフラとなっていることから、有線役務利用放送は一般的にブロードバンド放送と呼ばれています。ブロードバンド放送の代表的なサービスに、Yahoo!BB光TV(ソフトバンクBB)、光プラスTV(KDDI)、IPv6マルチキャスト放送のPlala.TV on 4th MEDIA(ぷららネットワークス)などがあります。放送と通信の境は事実上なくなってきているにもかかわらず、IPをベースとするブロードバンド放送では、著作権の処理が複雑なことや、地上放送の再送信が認められていないなど、法規制が壁となって、放送と通信は完全には融合できない状態にあります。
3) HDTV(High Definition Television)とは、高精細テレビ、高品位テレビのことで、現在のテレビより走査線の数を増やして画質を向上させた次世代のテレビ方式の総称です。現在、日本やアメリカで普及しているNTSC方式(National Television Standards Committee)地上波アナログカラーテレビ放送の方式を策定するアメリカの標準化委員会の名称)は、走査線が525本であるのに対して、HDTVでは1,125本または1,250本に増え(有効走査線は1,080本)、画質が飛躍的に向上します。画面の縦横比も、現行の横4:縦3から、映画などで採用されている横16:縦9の横長のサイズに変わります。逆に、一般的な家庭用テレビの標準的な解像度をSD(Standard Definition)と表し、その解像度のテレビはSDTVと呼ばれ、区別されています。
4) IPv6マルチキャスト放送とは、インターネット・プロトコルにIPv6(アドレス資源の枯渇が心配される現行のIPv4をベースに、管理できるアドレス空間の増大、セキュリティ機能の追加、優先度に応じたデータの送信などの改良を施した次世代インターネット・プロトコル)を使って、ネットワーク内で、複数の相手を指定して同じデータを送信することです。単一のアドレスを指定して特定の相手にデータを送信する「ユニキャスト」方式では、視聴者が2人いるとサーバ側がコンテンツを2回出さなくてはならないため、配信に負担がかかり、視聴者数に制約がありました。一方「マルチキャスト」方式は、こうした問題を解決するために、今までのオンデマンドの方式を変えて、複数のあて先を指定して1回データを送信すれば、通信経路上のルータやハブで、あて先に応じて自動的にデータを複製し、回線を圧迫することなく効率よく配信できる方式です。その意味で、不特定多数の相手に向かってデータを送信する「ブロードキャスト」(一般のテレビ放送)に比較的近い形で、配信には負担をかけないで、多くの人に見せたいという需要に応えた方式になっています。
5) ギルダー(George Gilder)の法則とは、「帯域(周波数の範囲のこと。データ通信は搬送に使う電波や電気信号の周波数の範囲が広ければ広いほど転送速度が向上することから、「通信速度」とほぼ同義として用いられます)の上昇ペースは、コンピュータのパワーの上昇ペースより、少なくとも三倍速い。コンピュータパワーは18ヶ月毎に倍になるが(ムーアの法則)、コミュニケーションパワーは6ヶ月毎に倍になる」(テレコズム2001.11)というもの。
6) 「Big Bang!- DIGITAL CONVERGENCE IS FINALLY HAPPENING」Business Week June 21,2004
7) Andrei HAGIU氏(RIETI研究員)。「The Importance of Multi-Sided Platforms for Innovation and Competitive Advantage in Digital Home Appliance Industry」
8) 産業組織論の基礎的な理論とは、ここでは「ベルトラン競争(価格を選択変数とした寡占競争)」を指します。市場に参入している全ての企業が全く同質的な製品を供給しているならば、消費者としては最も安い価格で売っている企業から買うのが合理的です。このことを全ての企業が認識している以上、全ての企業には、可能な限りで他の競合企業よりも少しでも安い価格に設定しようとする誘因が、常に存在しつづけることになります。国内の情報家電流通は、メーカー段階、小売段階で、ベルトラン競争が起きているために、最終的には価格は、限界費用=利益ゼロの水準まで下がり続けることになります。
9) デジタル技術をアナログ技術の違いから整理してみます。音声や映像の情報は、すべて「波」でできています。音の情報は空気の振動を「電気信号の波」に変えたもので、映像の情報は光の強弱を「電気信号の波」に形を変えたものです。これらの光や音の波をどのように表現するかといったときに、電気信号である電圧や周波数などを連続的に変化する物理量として表現するのがアナログ、電圧や周波数が0以上を1、それ未満を0とするような2値の数字で表現するのがデジタル、ということになります。アナログの時代には特有の記録技術がありました。波の形をそっくりそのまま記録するアナログ技術は、昔のレコードに代表されるように振動の波がそのままの形で刻み込まれていて、レコード針はその溝をトレースすることで、振動し、もとの電気信号の波に復号されて音声が再生されるという仕組みでした。しかし聞き込むほどにレコードが劣化したり、時にはノイズが入るという問題がありました。デジタルの場合は、0と1の2進法を使って、数字で記録されるために、恒久的に、元の情報を正確に伝えることが可能になります。ただ白黒の間の色のように、無限の値をとる色の場合は、0か1で表現することは大変難しくなります。従って白と黒で究極に表現された黒澤映画などはデジタル技術では再現できないと言われています。
10) IPTV(Internet Protocol Television)は、マイクロソフトの圧縮技術をベースにしたテレビ用のソフトウェアのこと。Windows Media Series9の動画圧縮技術を利用して、電話線やケーブル回線経由で、インタラクティブ番組ガイドや、映像コンテンツのオンデマンド配信、デジタル録画サービスをサポートするソフトウェアです。米国最大のケーブルテレビ会社コムキャスト(2004.11)、アメリカの通信業界第1位のベライゾン(2005.1)、第2位のSBCコミュニケーションズ(2004.11)、3位のベルサウス(2005.1)、がそれぞれ採用を発表しています。
11) Business Week February 7,2005


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