「消費社会白書2024」概要

新しい価値世界の再起動―消費社会から価値社会へ

2023.09.21 代表取締役社長 松田久一

 ネクスト戦略ワークショップの開催に先立ち、当社代表取締役社長 松田久一が「消費社会白書2024」のポイントを紹介しています。

 11月の「消費社会白書2024」の発表イベント開催にあたり、ふるってご参加いただけるようお願い申し上げる。今年度の白書では、多くの人々の持つ「日本は変わった」「夢も希望もない日本」の内実を明らかにしている。

 結論は、戦後に花開いた分厚い中流社会と消費によって個人の欲望を解放するという消費社会が終焉し、新たな階層ライフスタイル社会と、個人が価値を追求する社会へと変わったということだ。従って、社会に価値を提供できない企業は時代の役割を終え、退出せざるを得ない。売手企業は、差別化戦略を磨いて、ST(セグメントとターゲティング)をベースにした価値差別化戦略に昇華させ、「利他的マーケティング」の仕組みでより高い価値(WTP)を獲得していく必要がある。この結論を実務に落としたのが今回のプレゼンテーションである。

日本は変わった

 コロナ禍が感染者数とは裏腹に「終息」して2年、日本は諸外国のような「反動消費」もなく、遅れたコロナ前への回復過程で、ウクライナ侵略による世界の分断を迎え、世界の多極による「多分割の時代」を迎えている。この一連の世紀的な出来事を経験し、日本は変わった。何かが大きく変わったという認識を持つ人々は多い。

見えない変化

 何が変わったのか。見えないのが率直なところだ。

 そこに近づくのが弊社の「消費社会白書」の狙いである。バブル崩壊後を「消費社会」への転換と見定め、消費が経済の基軸となり、90%以上の人々が「中流」と考え、必需支出と選択支出が拮抗する欲望と価値観の行方を、リサーチ専門の立場から追ってきた。「嫌消費」、「バブル後世代」、「単独社会」、「中流崩壊」というキーワードは、マスコミで話題になるよりも2~3年は先んじていたという自負はある。この分析も20年の継続的蓄積により、人々の求める価値観の変化を統計的に分析できるようになった。

 例えば、価値意識や社会意識の変化が何によって変化しているかを特定するには、変数の分散分析を行い、年代効果、時代効果、そして、世代効果に分離するモデル(コーホート分析)の検証によって行い、最近では、AIによる多変量解析でシミュレーションして明らかにする。地味で地道な作業で、常識を覆すような帰結は得られないことが多い。従って、経験による仮説が大きな役割を果たす。

横断(タテ)から断面(ヨコ)を読む

 さて、2023年に実施した消費研究の中間総括をするにあたり、まず、最初に特筆したいことは、断面的(synchrony)データを通時的(diachrony)に読むことの重要性だ。

 本来なら明治維新を準備した江戸後期から話を始めたいが、それは別項に譲ることにする。2024年の消費を読む上で、据えたい歴史的視点は、戦後、日本が築き上げた世界に誇れる分厚い中流社会の崩壊という視点だ。明治維新以降の日本の近代化の到達点は、誰もが、努力を積めば社会の中流層に参入することができるということだ。中流層とは、職住分離で郊外に持ち家と自動車を持ち、性別によって、収入、家事と子育てが効果的に分業され、消費生活を文化的に謳歌できるというものだ。一般層の90%までが自らを中流とみなす社会が1990年代には形成された。それがゆっくりと崩壊していく過程がこの30年である。この意味で、こころの風景は戦後の「焼け野原」と同じ「新しい戦後」である。

 焼跡から30年後の中流生活が見えなかったように、現在の課題は、新しい焼跡から中流後の生活はどこに向かうかを予兆的に見据えることである。ここでは、14のキーコンセプトとして集約してみる。

1.世代のデータによる存在-価値意識の星座分析
世代のデータによる存在-価値意識の星座分析
2.長期的な共通意識の低下-長期の歴史的変化
長期的な共通意識の低下-長期の歴史的変化

【1】インフレ予想で変わる消費のリブート

 消費はリブートに点火する直前である。将来よりも現在の消費に重点を置こうとする意識は醸成されている。しかし、行動には繋がっていない。決め手は、物価上昇のうまい政策コントロールと所得の上昇である。そして、何よりも、供給サイドによる新製品・新規事業による新価値の提案である。

【2】価値起点の消費

 価値とは、「人々の欲求や欲望を満たす、商品サービスの有用性」である。人々の生きる目的や生きがいに資する大切なものである。現代経済学の基礎となっている「効用」ではない。多くの会社が、人々の生きがいに役立つように、お菓子、加工食品やエレキ製品を拘りをもって製造販売している。

 従って、人々の意識あるいは無意識で大切にしていることが、事業の出発点であり、終点になる。

 現在、注目される価値意識は何か。今年度、測定している項目は65項目、20年間、継続している項目は約20変数ある。

【3】共通意識と未来の喪失

 全体として確認できることは、過半数を超える支持項目が少なくなったことである。20年前の共通意識であった「自分の能力や可能性を試したい」という自己実現志向や「あたたかな家庭や社会をつくりたい」という利他志向は、ともに低下した。ある意味で、「夢や希望」もないという意識が支配している。そのなかで、もっとも高い「自由気ままに生活したい」が58%である。

 これらのことは、人々の社会意識の共通性が失われて、「刹那的な享楽志向」が強まり、未来志向や利他志向が失われていると言える。その結果が、現状を維持しようという「感情保守」を生み出している。

3.年代で変わる快・利・正・愛の価値意識
―見田価値意識論
3.年代で変わる快・利・正・愛の価値意識 ―見田価値意識論
4.年代で変わる価値-愛から利へ、利から正へ
4.年代で変わる価値-愛から利へ、利から正へ

4.年代で変わる価値-愛から利へ、利から正へ
(男性ベース)
年代で変わる価値-愛から利へ、利から正へ(男性ベース)
4.年代で変わる価値-愛から利へ、利から正へ
(女性ベース)
年代で変わる価値-愛から利へ、利から正へ(女性ベース)

【4】非干渉家族と「かろやかな」個人主義

 中流社会の根底には、家族と「イエ」意識があった。イエ意識とは、家族意識に起源を持つ擬制的な家族関係である。日本は、特に、母子関係を基軸に家族を形成してきた。「母」は過度に家事と育児を期待されてきた。このような母子関係は、個人-自我形成に大きな影響を与えると共に、心理的に重い家族関係になる。その反動が非婚化や少子化でもある。その結果、「互いに干渉しない家族がいい」が45%を占めている。明確な強い自我的な個人よりも「自分らしさにこだわりたい」(49%)のような「かろやかな」個人主義が志向されている。家族と自分を大切にする価値の生活感覚に切り込んだ深読みが望まれる。

【5】階層ライフスタイルへの転換

 価値意識の共通性が失われているのは、性、年代、世代差があるからである。20年20項目の価値意識をコーホート分析すると、変化が年代による加齢、世代交代、そして、時代の変化のいずれによって起こっているのかを分けることができる。その結果、価値意識の20年変化は、およそ3分された。特に、世代意識は、5年刻み区分を、10年、20年区分に代替する方法でみてみると20年間世代内で共通している価値があることがわかった(見田宗介の世代の星座的存在証明「見田宗介著作集」より)。

 共通性の喪失は、これらの社会的属性だけでなく、収入階層化が進んでいることも大きい。そして、主に、世代差と階層差が生み出しているのが、「階層ライフスタイル」である。これは、身分的な階層ではなく、食や住という暮らし方のスタイルと結びついた「価値ライフスタイル」である。自分の価値観にもとづいて、食や住生活をし、購入財や所有のパターンを持つ規範的集団である。

 この階層ライフスタイルの詳細は本論に譲るが、セグメンテーションのア・プリオリ基準である性、年代、世代、ライフステージなどと併用すると、断面的な顧客アプローチだけでなく、通時的アプローチも可能となり、市場や競争の急激な変化に対応できるものである。

5.戦前から現代への格差の変化
戦前から現代への格差の変化
6.階層格差をベースにしたライフスタイルの位置付け
階層格差をベースにしたライフスタイルの位置付け

【6】子供中心の食規範とジャンク食化

 コロナ後に、大きな外食もどりの変化は起こっていない。中食も同様である。内食を中心とした食生活になり、作り手の負担は大きくなっている。この背景には、内食の健康への影響などが評価されているだけでなく、切りつめやすい、節約しやすい家計費目として認識されているからである。さらに、食はおいしさを求めるだけではなく、価値観や食規範を具現化する領域として捉えられている。そして、「子育て家庭」の「子供中心の食生活」が理想とされるようになっている。実際には、単品を中心としたジャンクフードに依存しながら考えは、「子供中心の食生活」規範に従うようになっている。「時間制約」、「収入制約」に加えて、「規範制約」のもとで、階層ライフスタイルごとに、食生活のメニュー選択がされている。

【7】広さと距離の住選択から便利な住む都心機能へ

 住生活は「新しい利便性」による再編が進むようだ。

 東京一極集中はより強くなっている。教育機会と就業機会は、東京に偏在している。さらに、余暇レジャー関連の施設やレストラン、さらには医療機関なども東京偏在であり、それを東京の重層的な交通システムが支えている。東京の利便性が高まり、東京への人口が集中し、さらに、様々な便利なサービス業が参入して利便性を高めるという「多様性の経済」が働いている。

 さらに、異次元金融緩和やコロナ対策予算が投機的マネーとなって首都圏の土地に流れ込み、戸建てやマンションなどの持ち家は、平均的な年収では持ちにくい1億円を超える価格となっている。

 その結果として、広さと移動時間のトレードオフ関係で、住宅を選択するという図式は崩れている。どの利便性をとるかの選択になっている。その結果、食生活と同様に、価値観の集約である階層ライフスタイルに好みが集約されている。

【8】買物の効率化と付加価値化

 人々の買物意識を捉えてみると、欲しい商品を、時間や手間をかけずに、もっとも安く手に入れたいという効率ニーズと購入場所や商品を選んだり、店頭で様々な楽しい経験をしたりという楽しさニーズに2分できた。その割合はほぼ半々である。

 このような意識と東京などの高度に集中した商業集積などで利用できるチャネル条件から人々の買物タイプを15抽出した。その集中度は低く、買物タイプは多様であることがわかった。そして、この多様性が、様々な業態(20業態)の使い分けを生み、業態の多様性を支えていることが確認できた。

【9】買物の習熟効果

 買物には、効率だけではなく、選ぶ楽しさや店頭での様々なプロモーションによるワクワク感を楽しむ期待がある。この期待感にもっとも大きな影響を与えているのは、年代である。これを解釈すると、20代から買物体験を重ね、当初は買物に多くの期待を持ち、店頭で感動し、購入体験を積む。次第に、30-40代になると、買物に楽しさだけでなく、時間や手間を省くという効率ニーズをもつようになる。60代になると買物の習熟から多くを期待しなくなり効率を求めるようになる。このような学習を「買物の習熟効果」と呼ぶ。この習熟効果が、ブランド認知にも影響を与えている。それは「ザイオンス効果」である。この習熟効果の高い層はブランドロイヤリティを形成している。他方で、ライバルは、習熟効果に対して「アンラーニング」で対応していくことが必要になる。

【10】浸透する「ブランドは割高」とブランドの直接効果と間接効果

 値上げは、「ブランドは割高」という意識を醸成している。特に、中高年の収入減少層で強い。日用品ブランドはノーブランドよりも同じ品質で10%ほど割高だと思われながら、品質重視で選ぶとブランドになる。従って、ブランド離れは起こっていない。ブランドには価値のアップ(価値上げ)が求められている。この傾向は、高級品でも普及品でも同じである。価値アップには、価値ニーズの強い層の選択、ブランドを捉える枠組み設定、価値を伝えるシグナリングアプローチが必要である。

【11】事前決定アプローチと購入現場(POP)アプローチ

 ブランドの選択は、実際に購入された店頭などの場所を起点に、決定時期を事前と事後に分けると、その比率は約半々である。事前決定者は、商品サービスの利用経験が長く、多くを期待しない買物の習熟効果の高い中高年層に多い。従って、STが最重要だ。事後=店頭決定者は、商品サービスの利用経験が短く、様々な期待を抱く買物の習熟効果が低い若者層に多い。従って、ワクワク感などの感情刺激がPOPアプローチの決め手だ

 ブランドは割高感を高めている。この間隙をぬって、ストアブランドなどの参入機会が増えている。ブランドメーカーのメジャーブランドは、ひと世代を超えるほど長寿化し、成熟している。ブランドの再定義で価値を更新し、高めていく必要がある。

【12】心理選択の歪み-フレーミング

 消費者は、ブランドの効用ではなく価値を選択している。ブランドは、属性や機能、ベネフィットや価値という三層で価値を形成している(Means-Endアプローチ)と考える。消費者は、この価値ブリッジ(ex.帰属価値-盛り上がる-飲みやすさ)の繋がりを認識し、評価している。

 この価値ブリッジは、どのようなもの(枠組み=フレーミング)として認識するかで意思決定と支払意思価格(WTP)が変わってくる。これは行動経済学的アプローチの応用である。例えば、ヘアドライヤーをエレキ商品として捉えれば、軽さを重視し1万円のWTPを持つ。しかし、女性で美容に関心の高い層が、ヘアドライヤーを美容器具として捉えれば「原理」が重視され、10万円以上のWTPが形成される。

【13】情報の非対称性-シグナリング

 人々の認識の枠組みをどう変えるかが鍵を握るが、どういう価値メッセージを流せば価値優位になるかが明らかになる。詳細は本論に譲るとして、フレーム(枠組み)による10%以上の決定率の差を生む要因と層が特定される。

 実際に、事後決定者が価値を認知する場が売場などの最終接点になる。ここでの心理的歪みは、「情報の非対称性」である。買い手は、価値の品質で選ぶ。しかし、売手のPOPや宣伝では品質を判断できない。売手はわかっていても買手はわからない。このような情況を非対称性と言う。このような情況では買手は、売手のだす様々な信号・シグナルを品質判断に使う。TVCMの投下が、売手の品質の自信である、という信念を強く持てば、TVCMがシグナルになる。オーディオの黒色、電気カミソリの低音、有機ELテレビのコントラストなど様々な要素がシグナルとなる。それを探してシグナルを活用することが価値を伝えることである。

【14】生成AIは消費者からは普及のカズムを越えられない

 ChatGPTなどの生成AIの普及元年は2022-23年である。月1億ユーザーの登録の勢いは止まったものの話題には事欠かない。今回の白書では、人々に生成AIがどこまで浸透するかを分析してみた。その結果、利用経験は約12%であり、30代の管理層を中心に仕事で浸透していることがわかった。消費生活での利用は、旅行計画程度である。また、今後の関心も利用意向も広がりがなく、15-20%が普及の壁であり、「カズム(混迷)」に陥っているようである。その理由は、AIが検索サービスよりも信頼性が低いということだが、実際には、買物などに使いたくても使えないのが現状であるからだ。従って、生成AIの普及は、AI→Cの普及プロセスから、AI→B→Cというビジネスサービスのなかに組み込まれて間接的に普及すると考えられる。AI浸透が生活を変える鍵を握るのは、AI導入によって付加サービスを提供できる情報サービスである。売手も開拓機会は多い。



 以上が、消費社会白書2024の14のキーコンセプトである。少しは関心を持って頂ければ有難い。少々、違うという方は議論を戦わせましょう。

 さて、2023年という微妙な時にこそ、情況を歴史的に分析することが必要だ。人々は本質の答えを求めている。ビジネス書は相変わらず売れないらしいが、哲学や思想の書籍が売れているのが証左だ。独自のマルクス理解にもとづく柄谷行人が「哲学賞」をとったのも驚きだ。

 しかし、ベストセラーの内実は寒々しい。近代思想、なかんずく、ヘーゲルやマルクスを真面目に読んだ形跡もみられないのに専門家ぶりをしていることに驚く。贋物が闊歩するのが「真贋」倒錯の現代らしいが、少々、嘆かわしい。

 まさに、現代市場と対峙する企業の戦略経営やマーケティングこそ、歴史的な分析が必要だ。ところが、現代の「戦略パラダイム」の代表的なポーター戦略論は、時代を断面的 (synchrony)に捉えた競争優位を構築する戦略論だ。1980年代以降は、この戦略論の派生に過ぎない。これに対して、時代を通時的(diachrony)に捉え、自社の理念と使命を定め、事業を展開する戦略論がある。代表的論者は、1970年代のドラッカーであった。しかし、さすがのドラッカーも現代の歴史的規定は難しいだろう。

 最後に、この歴史的観点から白書の総括として展望したいことは、消費社会の質的転換である。消費社会は、消費によって欲望を解放できる社会として展望されてきた。経済的に豊かになり、様々な経済制約で抑圧されていた様々な欲望が満たされていく社会だ。また、産業の高度化によって消費の対象は、情報コンテンツに向かっている。そして、情報の生産は資源制約もなく、消費もエコロジカルなので、無限に成長できる。これは、吉本隆明や見田宗介的な消費社会の展望である。

 このような未来の消費社会論に限界があるのは、人々が、消費とは何かを規定していないからである。実体を消費する世代だったからだ。消費はそれ自体が目的ではなく、価値を求めて消尽する。現代の消費社会の21世紀的課題は、それが実体を越えて、情報サービス的であろうが、時代の要請する価値がわからないことであり、売手はそれをどう創造するかである。この意味で、現代の消費社会は価値社会への転換を迫られている。

 時代の価値をどう捉えるか。1980-90年代を代表する日本の哲学者、廣松渉が20世紀末に21世紀の展望を語っている。「21世紀は、コロンブスから五百年続いたヨーロッパ中心の産業主義の時代がもはや終焉しつつあるのではないか?もちろん一体化した世界の分断はあり得ない。しかし、欧米中心の時代は永久に去りつつある。新しい世界観、価値観が求められている。この動きも、欧米とりわけヨーロッパの知識人によって先駆的に準備されてきた。だが、所詮彼らはヨーロッパ的な限界を免れていない。混乱はもう暫く続くことであろうが、新しい世界観や価値観は結局のところアジアから生まれ、それが世界を席巻することになろう。日本の哲学屋としてこのことは断言してもよいと思う」(廣松渉著作集14)。

 そして、廣松は、21世紀の新しい価値観として「エコロジカルな価値を中心に据える価値観」と「物的世界像から事的世界観への推転が世紀末の大きな流れ」であり、21世紀に席巻すると予言している。

 この予測は、戦前の西田幾多郎の「近代の超克」を担うという日本の位置づけと同じである。廣松は、西田を意識して非共産党系左翼の立場として展望している。

 予言からおよそ30年、廣松の予測は完全に外れた。何よりも、世界がひとつに向かうという展望は崩れた。世界は分断され、現状では東北アジアの日中が連携することは自由と民主の価値を掲げる限りはあり得ない。経済でも、GAFAやAIの領域でも、明らかに、アメリカ経済は復活している。加えて、日本経済は方向性を失い失速して30年、中国も人口ピークを迎えて、経済も少子高齢化に抗えずに下降トレンドを免れ得ない。しかし、廣松哲学は北京大学をはじめ、欧米ではない中国で盛んに研究されている。

 恐らく当たっていたのは、事的世界観への転換と物的産業主義の限界ということだ。事的世界観=構造主義なしでは理解できなくなったということだ。分断分割世界でどう実現していくかにかかっている。中流崩壊の焼跡で新しい価値を見つけて再起動し、社会を再生する段階にある。



【注釈】

ビールを事例に、構造方程式を使ったブランド価値測定を行った結果、
・ブランドが、支払意思価格(WTP)を上げる効果(直接効果)
・ブランドが、商品評価を通じて、支払意思価格(WTP)を上げる効果(間接効果)
の2つの経路が確認された。

7.ブランド価値の二つの効果
価値意識の星座分析


「消費社会白書2024」発表会 ネクスト戦略ワークショップ
新しい価値世界の再起動―消費社会から価値社会へ(仮)
【オンライン開催】2023年11月09日(木)10:00~12:00



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