II.現代の戦略とマーケティング
1.戦略思考を鍛える
使える戦略思考−ダイナミックな競争優位創造のマーケティングエクステンション
第5回 ダイナミックな競争優位へのマーケティング
代表 松田久一
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本シリーズの目指すべきところは「自分で戦略を組み立てるようになる」ということです。戦略思考を学び使えるようになりたい人のために解説をします。
構成
はじめに 戦略思考は統治意識に始まる
第1回 戦略の起源と本質
1.戦略の起源−戦略思考はどのように生まれたのか
(会員限定公開)
2. 戦略経営の発見−戦略主体としての企業の発見
(会員限定公開)
3.戦略とは何か
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4.日本的経営と戦略
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5.戦争戦略から学ぶこと
(会員限定公開)
第2回 戦略の構想
1.戦略の構想とは何か
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2. 戦略の要件と目的設定
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3.優れた戦略を構想するための鍵
(会員限定公開)
4.戦略構想の要諦
(会員限定公開)
第3回 ポーターに学ぶ戦略思考
1.戦略プランニングの基礎−ポーター戦略論
(会員限定公開)
2. ポーター戦略論のエッセンスとフレームワーク
(会員限定公開)
3.ポーターに学ぶ戦略思考の鍵
(会員限定公開)
4.補論−ポーター戦略論を土台に戦略思考を自分のものに
(会員限定公開)
第4回 RBVに学ぶ戦略思考
1.RBV(resource-based-view)とは何か
(会員限定公開)
2. RBVのエッセンスとフレームワーク
(会員限定公開)
3.RBV戦略論のメリットとデメリット
(会員限定公開)
4.補論:ポストポーターとしてのゲマワットの戦略論
(会員限定公開)
第5回 ダイナミックな競争優位へのマーケティング
1.競争優位の源泉はどこにあるのか
(会員限定公開)
2. ダイナミックな競争優位とマーケティングの役割
(会員限定公開)
3.ダイナミズムを生むイノベーション優位
(全文公開中)
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3.ダイナミズムを生むイノベーション優位
(1)競争優位を自律的にイノベーションさせるとは
100年目のマーケティングというのをどう考えるか。結局、要素市場、内部資源、要素市場を取り込んで価値を創造して対象市場との関係を構築するのが、マーケティングの現代戦略発想の鍵となります。つまり外部を内部化して内部を外部化する過程、これがマーケティングで、真似のできない競争優位、相互依存関係というようなものになります。ブランドとリソースという考え方をすれば、差別的な価値を独占供給・資源制約する、それがブランドなのかもしれません。需要をコントロールできるのはブランドしかありません。
例えばカルビーのスナック菓子でポテトチップスはトップシェアを取っています。その強みを考えていくと、誰でもいいからオーバーオールのノンセグメントで、大手組織小売業という外部と、それから内部資源としてのじゃがいも農地の全国配置、それでシーズン限定素材や独自船を使ったような独自の物流システムを構築しています(図表1)。それを結びつけるのが内部資源である農地の全国配置。つまり「じゃがいも前線」が違うわけです。それを利用してシーズン開発(=季節限定商品)します。それから会社名ブランド、マスキャンペーンを通じた認知、それから鮮度管理型の営業です。つまり内部資源と外とを、マーケティングの四つの仕組みによって作り上げているということです。静的な競争優位とは何かと言うと、「シーズン限定素材で、高鮮度が維持されていて、ポテトチップスがうまい」ということになります。しかしこの仕組みがダメなわけです。この仕組みがなぜダメかと言うと、前に述べたように短期と長期の矛盾があるからです。カルビーの静的な競争優位は完璧です。「これはもう真似できない」というほど完璧です。しかしこの競争優位は「ポテトチップスを食べる」というジャンクフードブームの前提条件の上で初めて成り立つわけです。今問題なのは、この競争優位を自律的にイノベーションさせていくためにはどうしたらいいかということです。それがイノベーション優位ということこです。そうすると結局、内部資源を使った能力拡張するRBVの形でイノベーションしていくかどうかということです。そういう観点とそれからもうひとつは、三つのイノベーションの仕組みをどう組み込んだらカルビーが動的なダイナミックな競争優位を持ち込めるかということです。
図表1.カルビーの強み
ポーターの仮説からいうと、競争優位は要するに工場立地です。工場立地と本社立地です。カルビーは地域別事業部で各地域に工場を持っています。そうしたらもう強みはないということです。イノベーションが生まれるためには、もの凄く強い競争相手が必要です。それから相応の工場やカルビーの資源になっている人材、ヒト・モノ・カネの要素とお客様、それともうひとつ関連支援産業。そういうものが育っていないとダメです。そういうイノベーションが自律的にできるような条件というのは産業がモジュール化されているかということです。それからイノベーションが特定地域においてクラスター(群)として形成されているか、あるいは非常に戦略的に先を見込んで多角化していくという感じの戦略的な経営力を持っているかどうかです。
(2)21世紀の戦略発想のキーポイント
こうした事例を10個くらい、工場や歴史とか、要するにポーターの言うダイヤモンド分析みたいなものが必要だと思います。そうでないと自律的なイノベーションはできないのではないでしょうか。化粧品メーカーで言えば、もっとパッケージメーカーとの関係、原料供給メーカーとの関係などを作り直さないといけないと思います。要するにダイナミックな競争優位というのはお客様との関係も含めて、再構築しなければならないものです。カルビー、セブン−イレブン・ジャパン、パナソニック(松下電器)やソニーのAVでも、それから花王のシャンプー、資生堂の化粧品、トヨタ自動車の車。それからキユーピー、味の素、サントリー、キリンビールなど、消費財メーカーの見本となってきたマーケティングを全部取り上げて、今市場と内部の資源との関係を作り直さないといけない。そのフレームを考えてみたいなと思っています。
伊藤園も需要条件の上でオーバーオール、ノンセグメント、大手組織小売業で、茶葉先行開発で、会社名ブランド使って、マスキャンペーンして、店頭支配型の営業をおこなって、茶葉農家とのよい関係、他社利用の製造資源、それから独自の営業物流システム、こういうものをつないだマーケティングを行っているわけです。結局、競争優位を作っているのは原料支配力と営業配送の統合というものです(図表2)。
図表2.伊藤園の強み
単発的にはVRIO分析すればいいでしょう。競争優位が内とどのような関係を作り出していけるか、それがマーケティングの鍵です。特にVRIO分析で競争優位が短期的なものか長期的なものか、結局そういうふうに考えていくと、カルビーが何をやらないといけないかというと、農地戦略を取るしかないわけです。それから市場が逆風になったとしてもそれを自ら変革できるイノベーション力というのは本当に持っているのかどうかというのが分析のポイントになります。
他にも資生堂なども短期的な競争優位があるけれども、いわゆる持続的な競争優位というのがありません。ないものをどこから突破していくかというと、戦略商品でもって次の見通しを持っていく。具体的にはコスメシューティカルなどにボカーンと集中的な投資をやるとかあると思います。それから内部の持っている資源をストレッチしていく。ストレッチしていって違うところに展開していく。もしくは産業をモジュール化していってオープン化していく。どちらかというとマイクロソフトみたいな位置になればいいわけです。しかしこれは超難しい。それにモジュール化はあまり儲かりません。産業として衰退しています。そういう分析をやってみるためには、主力工場はどこにあるかとか、やっぱりヒト・モノ・カネを生み出し、作り出している条件、そういうふうにして「競争力は外にある/競争力は内にある」という両面の見方からダイナミックな戦略というものを考えないといけないのではないかと思います。それが21世紀の戦略発想のキーポイントです。つまりそれがこれからの新しいマーケティングをどう作っていくかというふうに今のところ考えています。
[2005.02 J-marketing.net]
【参照コンテンツ】
戦略思考を鍛える
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