使える戦略思考
-ダイナミックな競争優位創造のマーケティングエクステンション
第2回 戦略の構想

2004.09 代表 松田久一

本シリーズの目指すべきところは「自分で戦略を組み立てるようになる」ということです。戦略思考を学び使えるようになりたい人のために解説をします。

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1.戦略の構想とは何か

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戦略とは経営トップの持つ構想を表現したもの

 戦略の構想とはどういうことでしょうか。これについて最初に理解しておいて欲しいことがあります。それは、「戦略の立案」というものを「戦略の構想」と「計画の立案」とに分けて考えた方が良いということです。戦略、あるいは戦略思考というのは、事業の目的を定め、その目的を達成するための手段を追認させて考えていくということです。戦略の構想とは、最も抽象的な言い方をすれば、夢というものであり、逆に、最も具体的に言えばシェア目標などになります。これを定めて、具体的に実現するために何をどうしていけば良いのかということを決めることが企業戦略ということです。

 戦略というものは、色々な形をとり、その実行のプロセスに入っていくものです。戦略の形のひとつはプランニングで、年間計画とか三ヵ年計画とか長期計画といったもので、戦略が謂わば計画として表現されるものです。これは、具体的にいうと予算です。ふたつめには、人材配置、組織編成というものになっていきます。三つ目は、どの建物を使うとか、会社のどの工場を使うかといった資産配分です。戦略というのは、構想をこの三つの要素、つまり人・物・金に落としていくことになります。金というのは計画の部分ですが、どういう予算を立て、夫々を推進していくかということも含め、この三つに落としていくというのが、現場に落ちていくということです。

 また、それを推進して事業戦略を具体的に展開していくためには単に、この三つだけではなく、経営者が従業員とか社員に喋る言葉とか色んなルールとか制度などが必要になります。これについては、丸山眞男*1さんが、経営トップによるシンボル操作という旨いことを言っています。色々なものを、従業員の行動に結びつくようなシンボル操作で戦略を推進していく、そういうことが必要になってくるわけです。

 このように、最初に理解しておかなければならないのは、戦略というのは、経営トップの持っている構想、共同幻想のようなもので、それが具体的な計画になったり、予算配分になったり、言葉になったりして、従業員にとって目に見えるようになるということです。「戦略=計画」という見方は、ひとつの見方としてありますが、戦略が形として目に見えるというのは様々であり、「戦略=計画」という見方は、あくまで、ひとつの表現形態に過ぎないということです。

[2004.09 MNEXT]

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