I. 消費社会をどう読むか

3.時代の流れを読む

買い物の変化と小売及び流通産業について[2006.06.06版]
1.はじめに -小売及び流通産業を巡るマーケティング課題

2006.06 代表 松田久一

本コンテンツは、ある勉強会での松田の講演をもとに、主催者に許諾を得て編集したものです。

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 「買い物の変化と小売及び流通産業について」というテーマでお話ししますが、私どもの仕事の経験からお話しするので製造業の流通政策という視点がベースになります。マーケティングというのは、お客さまを大事にし、自分たちの会社はお客さまのために存在している、あるいは自分たちはお客さまから給料をもらっていると社員が真に思っている会社をつくれるかという理念から成り立っています。売上、利益、シェアなどの経営目標の改善を目的とする経営や競争戦略論とは全く違う特徴を持っています。私どもは、このマーケティングの理念から、企業、特に製造業は、お客さまのために存立する会社にならないといけないと考えています。その結果が売上や利益です。私どもは、消費者側の動きとものづくり製造業の動きと、その両端から今日のテーマである流通産業を見ているので、流通に対してはかなり批判的な観点も持っていると思います。

 大きく四つのお話をします。ひとつは、今、ものづくり製造業はどういうことで悩んでいるのかということです。特に流通の観点からお話しします。二番目に、流通産業の寡占化と小売業態の進化を中心に今後流通産業はどうなっていくのかについて述べます。三番目に、流通業の変化というのは流通業のなかからは見えない。井の中の蛙のような業種であり、業界です。そこで、お客さまの買い物、消費行動分析から、逆に流通を予測し、これからの変化についてお話しします。流通というのは、お客さまに対応していって変わっていくものですから、やはりお客さまの動きから変化方向を考えていこうということです。四番目に、これからの小売業というのは、メーカー、卸、小売という、明治から大正にかけて確立された「垂直三層分業」のパラダイムから脱皮し、「垂直非分業」の時代になっていくのではないかという話です。これからは「プラットフォームビジネス」として小売業、流通業を捉えていってはどうだろうか、あるいはそういう形で新しい考え方ができるのではないかということを最後に触れたいと思います。

 さて、本題に入る前に、江戸時代の日本橋界隈の商業流通の賑わいを表している「熙代勝覧(きだいしょうらん) [1] 」という絵をご紹介します(図表1)。「三井呉服店創業200年」、日本橋周辺の再開発などに関連して、今、ベルリンから日本に帰ってきて、「江戸東京博物館」に展示されている絵です。現在と同じように商店のようなものが並び、商店街を形成し、メインの通りがあり、全体では、日本橋から神田までの約760メートルに、九百数十人のお客さまが、お客さまかどうかというのは後でお話ししますが、歩いている。これが江戸時代に始まる近代流通の原点で、ここから現代につながる流通産業の発展があります。ここに隠されたおもしろい点は、最後にお話ししたいと思います。

図表1.江戸の日本橋- 「煕代勝覧」
講談社「大江戸日本橋絵巻―『煕代勝覧』の世界」より
図表

[2006.6 MNEXT]

【脚注】

[1] 「熙代勝覧」の意味は「輝ける太平の世のすばらしい景観」。ドイツ・ベルリン東洋美術館所蔵の12メートルに及ぶ絵巻物。舞台となっているのは神田今川橋から日本橋までの760メートルで、江戸の町を南北に貫くメインストリートであった。