はじめに(要旨)
本稿は、AIをめぐる不安を解体し、その本質を規定したうえで、企業活動への影響を分析する。第1章では、AIの暗い未来像が、失業への不安を投影した自己表出にすぎないことを、SF映画の分析から示す。映画が描く擬人化されたAI像は、来たるべき真実の予示ではなく、払拭すべき誤像である。第2章では、AIの本質を規定する。AIは表出済みのデータ(コーパス)の分布を学習する確率予測であり、表出に先立つもの――異和・発話欲望・言語化以前の感情――を原理的に持たない。それゆえAIは純粋な指示表出の知性にとどまり、自己表出も欲望も持たない。危険があるとすれば、それはAIの欲望ではなく、AIを道具として用いる人間の欲望にある。第3章では、この本質を企業の収益構造へ翻訳する。AIは指示表出=スキル資本に依存する活動と力を急速に商品化する一方、収益の源泉は固有資本=自己表出の側へと移る。超過利潤は、誰もが使えるAIにではなく、AIに代替されない独自データとドメイン知識に宿る。