利回り時代のマーケティング革新
第1回 利回り時代-格差市場

1999.07 代表 松田久一

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 今、企業が直面している課題は、大きくふたつあると認識する必要があります。

 ひとつは消費不況ということです。日本のGDPが約500兆円ありまして、その約6割にあたる300兆円分の個人家計消費の部分が低迷しているということです。この消費不況にどう対するかということが大きな課題であります。

 もうひとつが資本効率ということです。これまでの企業は売り上げとか利益、あるいはシェアというものを経営目標にしてきたわけです。けれどもそれだけでは経営がやっていけないということで、新たな目標として提示されているのがROEと言われる自己資本利益率や総資本利益率であったりとか、あるいはキャッシュフローとなっているわけです。これが売り上げや利益とは非常に違った経営目標になっています。この経営目標に新たにどのように対応していくかというのがもうひとつの大きな課題になっております。

 背景には、近代社会の中でひとつの大きな役割を果たしてきた工業経済がネット経済化していくという時代的、歴史的な転換が起こっているということがあります。産業革命が作り出してきた工業経済の電気、水道、鉄道というふうなインフラに代わって、情報ネットワークが新しい経済のインフラになりつつあります。

 結論として申し上げたいことは、この直面するふたつの課題に対して、これまでのマーケティングではすまない。否定というより、これまでのマーケティングを継承して新たに進化させていく必要があります。キーワードは「多様な格差」、「ギャップ」です。この多様な格差ということを切り口にして、いかにしてこれからの新しい時代環境に適応してマーケティングを推進していくかが、企業の課題であるということになります。