ものづくりを持続的な高収益事業へ転換する戦略
-競争優位の経済学

2005.03 代表 松田久一

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ものづくり復活は持続可能な高収益か?

 ものづくりとは、顧客の期待を越える製品サービスを提供することです。驚くような製品・サービスを開発して市場導入することです。ものづくりで、日本企業が次々と復活を遂げています。よく頑張ったものですが、ふたつのことが気になります。ひとつは、高収益を得ているのか、ということです。もうひとつは、ものづくりが持続的な高収益に繋がっているか、ということです。ものづくりの中心的な分野であるデジタル家電、情報家電では刻々と新しい動きが生まれています。三種の神器のひとつ、液晶テレビに関してビッグニュースが続々と報道されています。

 2004年に入って、シャープの液晶パネル及び液晶テレビを生産する第6世代の亀山工場が立ち上がりました(1月8日)。サムスン電子とソニーが約2,000億円を投じる第7世代のTFT液晶モニター合弁会社「S-LCD」が公式にスタートしました。シャープの約5倍の生産能力を持つ工場の量産開始は2005年5月と発表されています(7月10日)。シャープが亀山工場に第2期ラインを導入しました(7月28日)。 アメリカ市場では、デル、ヒューレット・パッカード(HP)などが液晶テレビ市場に参入して価格競争が激化していると報道されました(8月31日)。日立・東芝・松下電器の3社が約1,100億円を投じて液晶パネルを生産販売する合弁を発表しました(8月31日)。台湾の液晶パネル大手の奇美電子(Chi Mei Optoelectrics)は新しい液晶パネル工場の建設を断念しました(9月10日)。ソニーがアメリカの名門映画会社を約5,000億で買収することで合意に達しました。ソニーは、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントと合わせて約8,100の映画コンテンツを入手しました(9月15日)。三菱電機が大型液晶テレビ用液晶パネル生産を断念し、中小液晶に集中することを表明しました(9月21日)。

 これらの激動する変化はどのように読めるのでしょうか、虚々実々の情報が錯綜するなかで一貫する競争の原則を解説しながら持続的に高収益構造が得られる戦略を提案したいと思います。