2010 Winning Marketing Style
21世紀の競争優位のマーケティング

2001.06 代表 松田久一

01

持続成長力の格差

 企業の中長期の経営目標は、顧客への価値提供を通じ、持続的に売上、収益を成長させることである。弊社では、大手消費財14業界のメーカーの40事業を任意に抽出し持続的な成長という指標を基軸に、90年代の実績推移、戦略展開とその経路の研究を行った(戦略を読む 2 「21世紀の競争戦略―ネット時代の戦略原則」もあわせてご参照ください )。

 90年代の40事業の業績を精査すると、業績格差は、経済成長や属している業界という環境に依存したものでなく、企業の個別の努力、採られた戦略、あるいは競争優位のシステムによって生じたというのがひとつの結論である。

 格差の源泉はふたつある。第一は、競争優位である。競争優位とは、顧客に、競争相手よりもよりうまく価値を提供する仕組みである。40事業の戦略分析から99年時点で「競争優位がある」「維持・確立されている」「部分的に維持・確立されている」「未確立」に分け、10年間の事業成果をみると、競争優位が確立されている事業ほど、売上成長性、期間営業利益率、期間利益率変動が高く、収益性が高いことが明らかになった。

 もうひとつは、短期的、近視眼的な政策ではなく、マーケティングスタイルを持っているかどうかである。政策がころころと変わる会社は多い。マーケティングスタイルとは、短期的な政策ではなく、一定の持続的なスタイルのことである。40事業を「スタイルがある事業」と「ない事業」に分け、同じように収益性を見ると、ここでも大きな格差が確認された。競争優位とマーケティングスタイルが持続成長の格差を生んだ要因であった。

図表1.格差を生む源泉-競争優位
図表
図表2.格差を生む源泉-マーケティングスタイル
図表

02

持続競争優位のシステム

 1980年、マイケル・E・ポーターは「競争の戦略」を著した。しかし、その競争戦略はあまりに静的すぎ、現在の市場変化に対応できるだけの戦略・発想力を持たなくなったのが90年代であると指摘できる。この証拠のひとつは、競争優位にはライフサイクルがあり、長続きしないということである。「第一回持続競争力調査」では、90年前後に競争優位を確立していた事業をベースにし、10年後それが持続されているか否かを検証した。「競争優位が維持されていた」は僅か14%で、ほとんどが「部分的に崩壊」又は「完全に崩壊」している。

 これは、ひとつは競争優位システムが寿命を持っていることを示している。寿命を持っているということは、逆にいえば、持続競争優位の仕組みをいかにして創造し、維持し、確立していくかが、戦略上大変重要だということだ。競争優位をいかに作り出すかだけでなく、それを維持し、確立し、また再創造していく仕組みを作ることこそが、90年代には重要であった。

 もうひとつは、いったん作られた持続的な競争優位は、部分的崩壊しかしないことの重要性である。部分的崩壊しかしないということは、これまでの仕組みを捨てられないということである。その結果、後述する「手詰まり症候群」というかたちの企業習慣病に陥る可能性が高くなる。

 40事業の研究で明らかになったことは、競争優位のシステムにはライフサイクルがあり、戦略転換が必要だという事実だ。このことは、戦略とは極めてダイナミックで時間依存的だということを再認識させてくれる。旧の崩壊と新の創造というジレンマの中、競争優位のシステムの進化を考えていかねばならない。この事実を前にポーターの競争戦略はあまりに静的すぎる。