家電流通の国盗り物語

2007.12 代表 松田久一

本稿は、東京新聞による松田への取材内容(11/14)をもとに、合田が再編集したものです。。

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急激に進む家電流通の寡占化

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10社65%-驚異の寡占市場

図表1.家電流通上位10社の経営実績
図表

 家電流通の寡占化が急激に進んでいる。

 日本の家電流通市場の規模は、約7兆5,000億円、約5万1,300店によって担われている(2004年商業統計)。家電流通市場における上位企業の顔ぶれをみると、売上高第1位がヤマダ電機(1兆4437億円)、次いでエディオン(7,403億円)、ヨドバシカメラ(6,463億円)となっており、上位10社の売上高は合計で約5兆2,000億円にのぼる(図表1)。

 この規模は家電流通市場の実に65%を占める(2005年度)。上位10社の売上高集中度は2000年度にはまだ38%であった。それが数年で27%も上昇したのである(図表2)。上位の流通企業への売上高集中度がこれほど早く、しかも高い業界は他にない。

図表2.上位10社の売上高集中度
図表

(2)

縮む市場とデジタル技術が助長する価格競争

図表3.家電流通の市場規模推移
図表

 家電流通の寡占化が進んだ原因はふたつある。

 ひとつは、市場規模がシュリンクしていることである。商業統計によると家電流通市場の規模は99年の7.7兆円を境に減少基調にあり、04年で7.5兆円となっている。凡そ2,500億円も減少したことになる(図表3)。市場の規模が小さくなっているため、生き残れる店の数が少なくなる。家電製品を取り扱う小売店の数は、99年には5.7万店だったが、04年には5.1万店と6,300店も減っている。

 ふたつは、メーカーがつくる製品のベースとなる技術がデジタル技術になり、製品の同質化が進んでいることである。例えばテレビでは、ブラウン管テレビが主流だった頃は、ソニーのトリニトロンなど、各社が独自なアナログ技術をベースに独特の画質を創り出し、それが固有のファンを形成していた。しかし、デジタル技術になると、色の再現の仕方に若干の違いがあるだけで、中身は殆ど変わらない。中国製や韓国製であっても実はあまり変わらなくなってくる。

 市場がシュリンクして製品の同質化が進むと、小売店は品揃えで差別化できなくなる。サービスで差別化する方法もあるが、デジタル化され、商品が難しくなっているために容易ではない。消費者からみれば、ヤマダ電機で買おうがヨドバシカメラで買おうが、街の電器屋で買おうが、どこで買っても、どのメーカーの商品を買っても同じなので、1円でも安い方がよくなる。従って、小売店間の競争は、どれだけ消費者に安く提供できるかという、価格競争一本にならざるを得ない。

[2007.12 MNEXT]