激変する市場と寡占化する流通にどう対応するか

2013.01 代表 松田久一

本稿は、社外勉強会での講演録を元に作成しております。

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 本日は大きく分けて四つのことをお話したいと思います。

 まず、「政権交代で2013年の消費は回復するか」ということです。弊社の見解としては、上期は消費の回復が見込めると考えています。アベノミクスは今のところ成功していますし、消費が上向く可能性があるのです。

 ふたつ目に、世代交代によって消費の質が変わり、消費市場での需要も変わっているということです。

 例えば、よく若者はクルマ離れをしている、などと言われますね。「ローンまで組んでクルマを買うなんてバカじゃないの?」となるわけです。この消費の価値観の違いを、世代論を交えてお話します。

 三つ目に、新しいマーケティング戦略への転換をご提案します。今、日本企業の経常利益というのは10%もあればいい方だとされています。ただ、アメリカでのP&Gなどは25%が普通です。日本でも経常利益を15%以上出すためには、今までどおりの売り方から、新しい売り方にシフトする必要があります。その新しい売り方というのが、関与者同士をつなぐ仕事、「市場プラットフォーム発想」と呼ばれるものです。この新しいビジネスモデルについて、詳しくご紹介していきたいと思います。

 そして最後に、市場プラットフォーム発想による事業革新のポイントを具体的にお話したいと思います。

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政権交代で2013年の消費は回復するか

 まず、現在の消費動向を追ってみます。弊社では毎月、各業界における消費動向を調べており、2012円10月時点では図表1のようになっています。対前年度比で100を割っていれば赤、100以上であれば水色となっています。

 例えば、下から2段目の家電製品売上で見ると、2011年10月から、ずっと前年同月比でマイナス続きなのがわかります。これは、2011年3月まで実施していたエコポイント政策で、家電の先食いが起こった結果です。

 消費税が増税されるとわかってから、消費のマインドが冷えたように思います。今まで積極的に消費をしていた40~50代の層が、「60代になったときに1億円を貯めておいた方がいい」と先々を考えて支出を減らしたいと考えたのではないでしょうか。

 3~4月ごろから全体的に赤い部分が増えてきていますが、こう見ると、財布の紐を締めて節約をしようとする時は、まず食から削られて、次に衣料、というのがわかります。

図表1.消費インデックス ― 2012年10月
図表

 では、図表1に11月のデータを加えたものを見てみましょう(図表2)。

 11月は、真っ赤だった部分に水色が増えています。好転しているということですね。

 なぜ11月は好転したのでしょうか。この背景にあるのは、衆議院の解散です。

 消費マインドを下げてしまった民主党に代わり、自公連立政権が生まれるということで、景気がもう少し良くなるというイメージがわいたのでしょうか、財布の紐が緩んでいます。

 実際に、今、軽自動車は売れているようです。販売店が、エコカー減税のあった時と同レベルの値引きを行っていることも大きく影響していると思います。また、新型クラウンなどのように、メーカーが新製品を出し始めています。もちろん新型クラウンなどは、若者層に対してではなく、クラウンにロイヤリティーを持っている年代層を狙っています。現在の消費は、このように上の年代にクルマを売ることで保たれている状況だと言えます。

 11月の消費インデックスを見ますと、ここからもう一段、消費は良くなる傾向にあるのではないか、と考えられます。ただ、財布の紐が緩んだのは11月の一瞬だけで、長期的には落ちていくだろうとも予測でき、両方の見方ができます。