「生活研究所報」巻頭言
メーカーサバイバル戦略 -多様性優位のマーケティング

1998.09 代表 松田久一

 「消費の反乱」と「世界資本主義の暴走」の時代です。

 現代社会の駆動源は、政治から経済へ、経済から消費へと移行してきました。その消費を突き動かすものが社会的欲望です。日本は、この社会的欲望と世界の純粋資本主義化によるエンジンの暴走によって振り回されているという状況にあります。

 特に、日本国内では、消費しないという消費の反乱が起こっています。この根源である社会的欲望を分析してみました。中流という生活様式の成熟がその根底にあると歴史的なアプローチで解釈をしてみました。この歴史的な展望のうえで、これからの市場は分裂化し、多様性を高度化させていくという理解図式を組み立ててみました。もちろん、理論仮説にすぎません。この市場の理解図式からマーケティング革新の方向とそのスキルとノウハウについて、事業の競争優位、商品、ブランド、流通、営業の領域で理論と実践スキルについてまとめてみました。

 基調となる21世紀に向けた問題解決のコンセプトを「多様性優位のマーケティング革新」と提言しています。それぞれの領域で、事例研究、事実の分析、新しい理論構築や紹介を行っています。

 さて、約4年ぶりにクライアントのみなさんへの「生活研究所報」としての総合的な報告と提案になります。この編集に到達するには、私どもなりの反省とこれまでの理論や提案に対する批判がありました。決定的に抜けていると痛感したのは、経営、マーケティング理論が歴史認識に欠けるということでした。少々、迂回しようと思い、江戸、明治、大正の消費社会の誕生期を研究する機会を得たのを契機に、約4年かけて自分なりの歴史解釈と歴史理論の手がかりをもつことができました。

 この土台のうえで、クライアントのみなさんから提示頂く課題とプロジェクトの成果、弊社社員との議論を通じ、「多様性」、「生活様式」、そして「進化」という概念がキーワードとして仮説化されてきました。まず、総論が完成し、その総論をもとに各論が事実、事例整理、理論の整理のうえで骨格が形成され、さらに修正するというプロセスを経て編集されました。それぞれの論文で、新しい事実、事例研究、理論が紹介され、新しい解決スキルが提案されています。自信作です。是非ともご批判頂けるよう重ねてお願い申し上げます。

 この論文集は、多元的相対主義の立場で分析がなされ、評価相対主義への収斂をめざしています。「あれも、これも真実かもしれない」という科学的懐疑からスタートし、「ほんとうの真実はひとつ」というプラグマティックな行動へ結論を導いています。また、現代生物学や進化論がひとつのモデルとなって理論構築の試みがなされています。学際的アプローチに関心のある方はこうした観点からも読んで頂けると思います。

 要約、キーワードをつけ、多忙なクライアントのみなさんへの配慮も努力してみました。しかし、限られた時間と予算のなかでの論文集です。ご不興な点も多々あると存じますが、何卒ご容赦頂きますようお願い申し上げます。

 最後に、幹部社員の夏休みの頑張りで編集に漕ぎ着けました。すべて書き下ろしです。時速数行の歩みで書き上げてくれた幹部諸氏に感謝します。ここまで成長させて頂いたクライアントのみなさんに深くお礼を申し上げます。

 日頃のみなさま方のご支援に重ねてお礼を申し上げるとともに、みなさんのご恩に少しでも研究論文というソフトでお返しできたら幸いです。そして、どうか厳しいご批判を頂き、お役に立てる知識へと昇華させていきたいと思います。

[初出 1998.09 「生活研究所報 Vol.3 No.1」 JMR生活総合研究所]