ブランド・ひとつの切り口

1992.03 代表 松田久一

 ひとつの仮説を提示してみたい。

 日本人のこころの風景に合うように、新しいブランドを創ったり、リニューアルしてみたらどうか、という提案である。

 複雑で多様な流通構造、非階層的なマス消費、時速1,000Kmで進む口コミ、世界中のブランドが集積する競争環境のなかで、欧米型の取引先を絞りプレステージを高める戦略も、認知率を高め、リピート購入率を高めるマスブランド戦略も、この国、日本では通用しない。

 日本で、大正期から歌い継がれている童謡がある。

 「赤とんぼ」という童謡だ。

 現在でもベスト3にはいる童謡だ。

 この歌詞は、日本が農業会社から工業会社への転換期に、田舎から出てきた青年が、故郷を思って、根なし草になった自分と昔背中におぶってもらった姉さんの安否を夕焼けの風景に重ねた詞になっている。日本人のこころの風景とはもしかしたらこんな幻の心像にあるのかもしれない。

 多くの日本人は、大きな変化や急激な変化に出会うとこうした心像に引かれる、あるいはもどっていくような気がする

 「きんさんぎんさん」、「少年時代」、「シコふんじゃった」という一連の表層ヒット現象の背景には、戦後日本が大股で歩んできた結果、忘れてきたものへの反省があるように思う。多くの日本人が安心感や安全感をもてるものは、変わらない日本人の共通のこころの風景に触れたもののような気がする。

 ブランド、ひとつの切り口は、変わらない日本人のこころの風景へリンケージさせる事のように思う。サラリーマンの創った車はどうしても買いたくないという気持ちはよくわかる。ブランドは、開発者の価値観や理念が、そして、その人のもつこころの風景が問われているのだと思う。