ブランドパワーの時機

1991.04 代表 松田久一

 近年のメーカー、製造業の戦略トレンドが、商品の多品種化、配送の小口化にあったことは、間違いない。

 生活者の多様化に対応し、多くの新製品を投入していくというマーケティングだ。そのピークは、1988年、約3万品種である。GMSの平均的扱い品種が約2万品種であることを考えあわせるといかに膨大な努力が新製品に投入されたかがわかる。半年間に導入される菓子パンの新製品は181品種、そのうち、半年以上生存できるものは31%という結果もある。

 ターゲットを定めて、新製品を射つという伝統的なライフルマーケティングが終りを告げ、瞬間弾数の多いショットガン方式がある面で優位性をもった。

 この戦略の結果が何をもたらしたか。

 消費者が支払う価格と製造業が流通に出荷する差を流通マージンと呼ぶ。1970年、そのマージン率は29%であった。1985年は37%である。8%、流通マージンは増えた。流通の利益率は、この間、約1%減少している。その差は流通の従業員の給与に転形した。

 結局、多品種少量生産は、メーカーのパワーを弱め、力をもった流通は土日に働く従業員のパワーに負けた、ということになる。

 ブランドが壊れた。広告投資は分散し、店頭の棚は分断、縮小され、営業体質が新製品依存を高めた。系列はマーチャンダイジング力を失い、メーカーへの依存体質を強め、返品力を強めた。そして、新製品在庫の山ができ、本音で物を言うことができにくくなった。

 これを「地獄の多様化サイクル」と言う。

 品種を絞りブランドのパワーを復活させる時がきた。

 メーカーのパワーとは、結局、ブランドのパワーだ。品種を絞り、マス広告をせず、技術、製造、営業を統合し、店頭に密着する。その集中力と組織全体の勢いが、新しいブランドパワーを創造していく時機だ。