不信・不安の時代のデフレ対策

1995.10 代表 松田久一

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 はっきりしていることはふたつある。

 将来への不安感から財布のひもが締まる。競争相手への不信、流通への不信から価格競争が始まる。日本経済のデフレシナリオは、不安、不信の蔓延が根底にある。もうひとつ、幾ら公共投資をしても、近い将来に不良資産40兆円を処理しても、景気は消費が回復しないかぎり望めないということだ。

 つまり、個々の企業のマーケティング努力しか不況という平均概念を超える道はない。日本経済の構造改革という幻想に期待をもつのは「夢のまた夢」の話である。予測どおり、日本のメーカーの「ナショナルブランド」が復活してきた。しかし、その力はまだまだ弱い。安くして、パフォーマンスをよくしただけのものだ。

 この状況で打つ次の手はひとつだ。商品の価値の創り込みとそれを他社が真似の出来ない仕組みに仕立てることだ。

 商品の価値とは「生きがいに役立つ」ということだ。価値をベネフィットと考えたら大間違いだ。たかが商品でも、20~30万の品種が集まって私たちの生活を支えている。商品のそれぞれの用途が生きがいを構成しているのである。だから、「凄い」とか、「きれい」とか、「速い」といっても生活にとって何の魅力もない。

 私たちは「食うために働いている」のではない。全収入の約30%は貯金と保険等に回り、残りの約70%の半分が衣食住の必需支出に回っているにすぎない。「食うために働いている」部分は収入から見ればもう40%を切っている。私たちは、生きがいを求めることを「余儀なく」されている。見つからない生きがいをたかが商品の用途で見せることが、ほんとうのほんとうの価値だ。不信と不安はこのことによってしか解消されないことは自明だ。

 製造業が、企業が、生きがいを、価値を、商品の用途を提案することが求められている時代である。次の一手は価値の創り込みだ。