「嫌消費」世代
経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち

2009.12 代表 松田久一

本稿は、「週刊ダイヤモンド」2009年12月26日号掲載記事のオリジナル原稿です。

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 「クルマ買うなんてバカじゃないの?」。こんな話を東京の20代の人達と話しているとよく耳にする。車がなくては生活ができない地方でも「現金で買える車しか買わない」と言う。これはクルマだけの話ではない。衣食住などの様々な市場で、欲しがらない若者達が増えている。「アルコールは赤ら顔になるから飲みたくない」、「化粧水に1000円以上出すなんて信じられない」、「大型テレビは要らない。ワンセグで十分」、「デートは高級レストランより家で鍋がいい」などの発言を聞く。

図表.世代・収入別支出削減意向
図表

 20代の彼らは、非正規雇用が多く、低収入層が多いからだと思われがちだが、実際は、他世代に比べて、男性の正規雇用率は65%、年収も300万円以上が52%と見劣りする条件にない。

 彼らは、消費をしない訳ではないが、他世代に比べて、収入に見合った消費をしない心理的な態度を持っている。このような傾向を「嫌消費(けんしょうひ)」と呼んでいる。顕著に嫌消費の傾向を持ち、消費好きの世代には予想できない発言をするのは特定の世代である。80年代前半生まれの「バブル後世代」である。

[2009.12 週刊ダイヤモンド]

書籍イメージ

2009.11 東洋経済新報社 発行
定価 1,500円+税

「嫌消費」世代の研究

独自の大規模調査をもとに、若者の「買わない心理」の深層に迫る。

「クルマ買うなんてバカじゃないの?」
若者の消費が変化している。若者はなぜ、物を買わなくなっているのか。そこには巷間ささやかれている「低収入」「格差」「非正規雇用の増加」以上に深刻な、彼ら独特の心理=「劣等感」が強く影響している。本書では「収入が十分あっても消費しない」傾向を「嫌消費」と名付け、大規模な統計調査とインタビュー調査をもとに、「嫌消費」を担う世代=20代後半の「買わない心理」の原因と深層に鋭く迫る。「世代」という観点から市場を捉え、世代論の手法で将来を遠望した一冊。