15分の接客が営業の鍵

2006.03 代表 松田久一

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 長い間コスト高と言われてきた人的販売が注目されている。

 伸びる小売業はどんどん変わってきた。駅前の商店街に立地する業種別の小売店から郊外の総合スーパーへ、総合スーパーから近所のコンビニエンスストアへと消費者の利用が移行してきた。この変化は、長い間、無人販売の進行と捉えられてきた。そして、その主役はコンビニだった。数年前には、自動販売機だけで展開されるコンビニさえも登場した。売り手と買い手が対面しながら無言で買い物を済ませることが評価されていると思われてきた。その結果、買い物の満足度は地に落ちた。コンビニでの買い物機会が増える一方で、1年内に約18%の人が「不愉快な体験」をしている。この数字は「お役所の窓口」を少し上回るほどの高さだ(弊社調査)。

 そのコンビニで、お客さまの名前を覚え、挨拶をし、声をかけ、商品サービスを推奨する取り組みが始まった。人口が増えないなかで、コンビニの出店が増え、特定の立地ではコンビニの隣にコンビニを出店させるほどに競争が激化していることが背景にあるが、何よりも顧客満足に立脚しないビジネスなど長続きするはずもない。

 そこで注目されるのが応対であり人的販売である。約15分の移動時間をかけて、およそ20分で、5,000円程度の商品サービスを、週に2~3回購入するというのが日本人の平均的な買い物である。この買い物の満足度にもっとも大きな影響を与えるのが接客である。顧客の満足と不満を判別しているもっとも大きな要因は接客時間である。商品サービスによっても異なるが、およそ15分程度の接客ができると顧客満足度は大きく高まる。しかし、それ以上長くても変わらない。それ以下なら無人販売と変わらない。

 販売員や営業マンにとって、「天国」と「地獄」を分ける境目は15分の接客である。具体的な内容を把握するために事例研究を重ねると、お客さまに用件を伝えるならおよそ10分もあれば事足りることがわかる。問題は残りの5分にある。この残りの5分は、子供の話、事件の話などの雑多な内容であり、いわば売り手と買い手の「世間話」である。実は、この雑多で無駄に思える時間が満足を形成している。この時間は売り手と買い手が信頼関係を形成した、あるいはしているという証である。お客さまが売り手のアドバイスを受け入れ、購入に満足する条件はふたつである。ひとつは、売り手を信頼していること、もうひとつは、売り手が本当に自分の問題の解決に取り組んでいると推測できることである。このふたつの条件を満たしている証拠が約15分の接客である。