眠れる獅子への挑戦

2001 代表 松田久一

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 失われた10年、1990年代の企業の持続的成長を決したのはふたつだった。永遠ではない持続的な競争優位を機動的に変更していく戦略とその場しのぎではない営業力だった。その結果が同一業界内での業績の格差だった。もうひとつ驚くべきことは、バブル崩壊の後遺症として生まれた節約の習慣化と、GDPの約1.5倍に匹敵する760兆円の家計の現金、預貯金である。膨大な潜在購買力が形成された。消費者は、今の自分を豊かにする商品サービスを選択するよりも、将来の次世代の可能性にかける預貯金を選好した。すべての企業が達成できなかったのは、消費を活性化し、現在の生活を豊かにすることだった。

 21世紀初頭の最大の課題は、預貯金という眠れる獅子を起こすことである。この獅子を起こすことができるのは、企業の商品開発力しかない。政府の経済政策で消費者のマインドに切り込めることは限られている。「現在」と「私」の価値を呼び起こさせるマーケティングが必要である。その価値を創造していくための機動的な組換え型の活動プロセスも必要である。

 デフレ圧力の本質は、日本の二桁違いの低労賃を膨大に供給できる人口が約13億人の中国などの近隣諸国にあることである。高品質と量産優位による「よいものを安く」の戦略はまったく通用しなくなった。桁違いの差別的な価値を提供するマーケティングシステムが必要である。その日暮らしではない21世紀の新しいマーケティングへの挑戦の時代である。