消費回復をリードするデジタルネットワーカー

1996.04 代表 松田久一

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デジタルネットワーカー

 景気回復の兆候がはっきりしてきた。円高や公共投資の下支えによって、ようやく企業収益が回復し、株価も上昇傾向にある。しかし、この流れが確実なものとなるための鍵は、なんといっても家計消費である。つまり、私たちの財布の紐である。

 これまでの消費は受け身であった。賃上げ、失業率などの予想収入に依存して、財布の紐がゆるくなったり、きつくなったりしていた。しかしながら、もはや企業の収益が回復したからと言って、雇用が拡大したり、賃上げが進むことなどあり得ない。従って、消費が自立することがこれからの日本経済の成長条件となっているのである。

 誰が消費をリードするのか。「デジタルネットワーカー」をその有力な候補として上げてみる。そして、これらの人々がどんな需要をもたらすか分析してみることにする。

 95年度の最大のヒット商品が「パソコン」であることは言うまでもない。約570万台という出荷台数であり、今年度はさらに7~8百万台が予想されている。こうしたパソコンの普及に従って、他のコンピューターと接続されるパソコンも急増している。むしろ、4千万人の利用者をもつインターネットや150万人の加入者をもつ「ニフティサーブ」などの商用ネットワークに加入するために、パソコンが普及していると言っても過言ではない。「ソフトなければただの箱」と言われたパソコンも「ネットワークなければただの箱」と言われかねない程である。それほどネットワークの魅力が増えている。ネットワークの魅力に惹かれ次々と消費を拡大している人々をここでは「デジタルネットワーカー」と呼ぶことにする。約100万から200万人の人々である。京都市の人口が約150万人、京都府の人口が約230万人であることから、仮想上の「京都」クラスが消費のリーダーになっているとみることができる。日本でのインターネットの加入者数も同数である。その数は幾何級数的に増大している。

 ネットワークにはこれまでのパソコンの用途にはない魅力がある。電話やFAXにもない魅力がある。ネットワークとはコンピューターとコンピューターを繋ぐことにすぎない。「インターネット」という言葉もその繋ぎ方の統一規則の名称にすぎない。ただ、繋ぐことによって情報の共有が可能になるのである。人々は生活を営むなかで様々な人との関係をもっている。家族があり(血縁)、近所があり(地縁)、会社がある。こうした関係は、ふだん、挨拶などの言葉、モノやサービスを交換することによって成り立っている。これらの関係の共通点は、自分の行動が時間や場所(空間)に限定されていることである。アメリカ人や中国人と情報交換しようとすれば、なんらかの機縁や移動が必要になる。ところが、インターネットなどのネットワークを利用すれば、情報発信をしている4千万の世界中の人々と関係を結び、静止画から動画までデジタル情報として交換することができる。わずか20万円前後の投資をすれば電子的な「新社会」の「市民」(ネチズン)になることができるのである。

 この強い期待を背景にパソコンも大きく変貌しようとしている。マイクロソフト社やインテル社も、このネットワーク化の波のなかで「もはや時代遅れ」と言われている。それぞれのパソコンが1台ごとにOS(95などの基本ソフト)や巨大なアプリケーションソフトをもつことが非効率的であるからである。ネットワークだけに特化したパソコンが急速に現実味を帯びてきている。

 デジタルネットワーカーを引きつけているのはこの「時間と空間を超えた関係志向」の魅力なのである。