変貌する公共施設と公共サービス

1994.10 代表 松田久一

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不況で伸びるサービス

 不況になると強い商品、業種、業界がある。ディスカウンターはその典型である。もうひとつ典型的なものを挙げるとすると「公共サービス」である。

 市場原理以外の原則にもとづいて提供される財のことである。住民票、戸籍謄本、パスポート等の交付業務から、身近なところでは、ゴミ収集。日常不可欠なものとしては、水道、ガス、電気、郵便サービス等の提供。テレビでお世話になっていると言えば公共放送(NHK)までの幅がある。警察が提供してくれている治安サービスも忘れてはいけない。

 これらのサービスは、多くは地方公共団体やさまざまな法人によって提供されている。民間サービスと異なるのは、市場原理や営利のみの原則では運営されていないということである。

 つまり、空気、水、安全などのもっとも「基底的なサービス」を、公的セクターによって提供されているのが公共サービスである。

 毎日、忙しく暮らしている人にとってこれらのサービスは、「面倒なもの、嫌いなもの、サービスがよくないもの」の代名詞のようなものであった。極端に言えば、「お金を払って不愉快な思い」をするのが公共サービスであった。

 この公共サービスが大きく変わっている。私的な経験の範囲に限定されるかもしれないが、区役所や市役所の窓口業務も、近頃は大変好感がもてるようになってきているように思う。しかしここでとりあげようとしているのは、「愛想がよくなった」といった類のことではない。公共サービスが益々重要になることは言うまでもない。米の配給、猛暑の水不足、水によって生まれる電気、外国人居住者の増加による治安への不安、これまで当たり前であった「安全で安心なサービス」が、そうではなくなってきている。米不足、水不足のことを思えばすぐ気づく。

 ひとつひとつの重要性が増しているだけではない、公共サービスの範囲である「基底」が大きく変わろうとしている、そして何よりも「基底」の範囲にあったものが社会にとってたいへん重要なものに変質していることである。見逃せない変化となっているのである。