I. 消費社会をどう読むか

1.消費トレンドを読む

高失業率下の消費回復

1999.10 代表 松田久一

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9×5ショック

 1999年9月9日、「9」が5個並んだ日に意外な速報値が発表された。経済企画庁からGDPの四半期結果が公表された。「1999年4~6月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、前期比で0.2%(年率0.9%)となった」。この発表が意外だったのは言うまでもない。多くの専門家の予測とは異なるものであったからである。景気の失速懸念が大手シンクタンクなどの予測の大勢であった。この発表を契機に、円高が一挙に進展した。この結果は一種のショックを与えた。経験から導き出される原則、「予測は大勢を形成し常にはずれる」という命題を見事に検証した結果でもあった。同時に、経済予測は予測のなかでもっとも精度が低いことを実証した。しかも、その景気の回復を支えていたのは、個人消費であった。なぜ、個人消費が回復しつつあるのか、この分析を通じて、現在の消費傾向を捉えてみたい。

 消費低迷は、1997年4月の消費税率上げから顕著に見られ始めた。その要因は、まずは心理的なものであった。失業不安や年金、医療費などの将来の先行きに対する不安感が社会不安を生み出した。さらに、98年度からは企業のリストラなどによる失業者の増加と賃金カットなどの収入要因が消費低迷の要因に加わった。心理、収入の両面からの消費低迷のなかで、不安の癒しと節約が消費トレンドを支配してきた。