「時代環境」に起因する価値観の大変化

1992.01 代表 松田久一

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 10年くらいにわたって、価値観を軸にした生活者研究を続けています。

 その中から気になる点をいくつか報告します。

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価値観の大きな変化

 まずひとつ目は、生活者の側に大きな価値観の変化が起こってるということです。

 このような大きな変化は1985年のときにも感じました。ちょうど今の景気が始まるぐらいのときです。筑紫哲也が「新人類」と言われる新しい世代のことを言い始めました。また、新人類に対応して旧人類というものの考え方がでてきたり、それから差異化という価値観が議論されたり、山崎正和の『やわらかい個人主義の誕生』や「自己実現」などのような議論が出てきた頃です。ちょうどそのときに合わせて「人とは違うものが欲しい」「人とは違う生き方をしたい」という価値観が賛成率では最も高くあがっていました。

 それがずっと続いたのですが、ここに来てその価値観ががらっと変わりました。

 現在、賛成率に高いものであがってくるのは、日本という国が戦後を大またで歩み大変な成長を遂げてきた中で、「何か大切なものを失ってしまった」という意識です。それが非常に強くなっています。その中でも「日本」「伝統」「文化」などといったものを尊重していきたいという志向が強くなっています。それだけでなく、地球とか社会とかという観点を持った価値観というものが上位にずっとあがってきています。そしてその分「自己実現的な」「人とは違うもの」、あるいは「自由に生きていきたい」などのミーイズム的な価値観が逆に下がってきているという状況にあります。それが価値観として大きく変化してきてる点です。