半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2017年10月27日

スイーツのジレンマ
欲望と罪悪感の狭間で成長するチョコレート市場
戦略研究チーム



 チョコレート市場が好調だ。健康・美容意識の高まりから、チョコレートに含まれるポリフェノールの効果に消費者の注目が集まっている。「チョコレート=健康」というイメージが浸透し、その人気は今や不動のものだ。また、三越伊勢丹が毎年開催する、世界中の有名チョコレートを集めた祭典「サロン・デュ・ショコラ」も年々大規模になり、バレンタインはいつの間にか、"自分のために良いチョコレートを買う日"になってきている。そんな人気が沸騰するチョコレートのこれからの可能性や、人々を引きつける魅力について、考えてみる。


1.絶好調のチョコレート市場とその要因
(1)-1 絶好調の実態その1:売上は好調に推移、高カカオチョコレートが市場をけん引

 2015年のチョコレート市場は小売金額ベースで5,040億円と、初めて5,000億円の大台を突破した。2016年は5,260億円とさらに売上を伸ばし、10年前と比べて3割近く増加している(図表1)。中でも、高カカオチョコレートの人気が高い。高カカオとは、一般的にはカカオ分が70%以上のチョコレートを指す。明治の「チョコレート効果」や森永製菓の「カレ・ド・ショコラ」などが代表例だ。


図表1.チョコレート小売金額の推移
図表

(1)-2 その要因:「チョコレート=健康」というイメージの定着

 ではなぜ、ここまでチョコレートは支持されているのだろうか。理由のひとつは、今までは「チョコレート=お菓子」だったものが、「チョコレート=健康によい食品」というイメージに転換してきていることにある。

 ポリフェノールを含むチョコレートは、血圧低下、動脈硬化の予防、脳の活性化など、幅広い効果があるとされる。特に高カカオには、ポリフェノールが多く含くまれている。そういったポリフェノールに興味のある消費者をターゲットとして発売されたのが、明治の「チョコレート効果」だ。

 高カカオ商品のほかにも、グリコの「GABA」は「ストレスを低減する」機能性表示食品として、会社員の仕事中のお供としてうまく入り込み、女性だけでなく男性にも間口を広げることに成功した。また、ロッテの「乳酸菌ショコラ」は、生きた乳酸菌を常温で、いつでも食べられる食品として広まった。このように各メーカーも、消費者の健康志向を反映させた商品を次々と市場に投入している。

 健康に良いといわれる食品や商品が星の数ほど出ては消えていく中で、チョコレートに注目が集まっている。売上げが伸び、定着してきている背景には、やはりその「おいしさ」が影響しているのではないだろうか。おいしくなければ、たとえ健康に注目が集まっているとしても、ここまで市場が伸びていくとは考えづらい。


(2)-1 絶好調の実態その2:バレンタイン催事を中心とする、チョコレート催事の人気が過熱

 一方で、三越伊勢丹のサロン・デュ・ショコラや、高島屋のアムール・デュ・ショコラといったチョコレートの催事の過熱ぶりも話題だ。例年伊勢丹新宿店で開催されていた日本でのサロン・デュ・ショコラは、年々来場者が増え、15回目の今年はとうとう東京国際フォーラムでの開催となった。ツイッターでは会場の待ち時間や混雑状況がつぶやかれ、インスタグラムでは1箱何千円もするようなチョコレートの数々が戦利品として連日投稿されていた。また、今年で17回目だった高島屋のアムール・デュ・ショコラも年々売上は伸びてきており、16年には70万人を集め、売上は18億円を超えるほどだったという。


(2)-2 その要因:嗜好品としてのチョコレートと消費者の知識の深まりとこだわり

 チョコレート人気が過熱し、消費者の中には作り方や作り手にとことんこだわる人たちも増えている。特にカカオ豆の厳選から、チョコレート製造までを一貫して行う「bean to bar」を売りにした商品やお店が増えている。このトレンドは2015年頃から始まり、大手メーカーの明治も2016年秋に新生「明治 ザ・チョコレート」を発売して人気となった。このシリーズは、一部販売中止となるほどの売れ行きだという。

 サロン・デュ・ショコラでも、bean to bar専門店が多く出店している。作り手にフォーカスしているのも特徴だ。今やショコラティエはスター的存在であり、購入したチョコレートの箱にサインを書いてもらう消費者もいるほどだ。2017年のサロン・デュ・ショコラではショコラティエのポートフォリオがポスターとなるなど、より作り手に注目が集まっていることがうかがえる。

 モノの背景にあるストーリーも含めて、消費者はその価値を理解して購入しているようだ。

 「チョコレート=健康」というイメージが定着し、さらには「健康は気になるけど、甘いものが食べたい」という心理的ジレンマの解消や罪悪感が軽減できるスイーツとしてチョコレートが人気となっている。さらに消費者の知識が深まり、とことんこだわったチョコレートが求められるようになり、市場は拡大しているようだ。


続きを読む
「健康志向とスイーツへの欲求のジレンマ」

続きを読むには有料の会員登録が必要です。


参照コンテンツ


業界の業績と戦略を比較分析する


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

2024.04.22

JMR生活総合研究所 ゴールデンウイーク期間中の営業のお知らせ

新着記事

2024.04.24

24年3月の「チェーンストア売上高」は既存店で13ヶ月連続のプラス、食料品がけん引

2024.04.24

24年3月の「コンビニエンスストア売上高」は4ヶ月連続のプラスに

2024.04.23

24年2月の「旅行業者取扱高」は19年比で78%に

2024.04.23

24年2月の「広告売上高」は、3ヶ月連続のマイナス

2024.04.22

企業活動分析 カルビーの23年3月期は需要堅調もコスト高吸収できず減益に

2024.04.22

企業活動分析 亀田製菓の23年3月期は国内外好調で増収もコスト増で減益着地

2024.04.22

企業活動分析 大正製薬の23年3月期はOTCなど好調で増収増益

2024.04.19

企業活動分析 森永製菓の23年3月期は、「inゼリー」等好調で2年連続最高益更新

2024.04.18

24年2月の「商業動態統計調査」は36ヶ月連続のプラスに

2024.04.17

24年3月の「景気の現状判断」は14ヶ月ぶりに50ポイント割れに

週間アクセスランキング

1位 2024.04.12

成長市場を探せ ビスケット市場、4年連続プラスで初の4,000億超えに(2024年)

2位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

3位 2022.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2022年5月版) 「レッドブル」「モンスター」認知率拡大、上位の牙城揺るがず

4位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

5位 2021.05.25

MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(1)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area