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(2017.02)
ドアを守るアイホン
-巨艦メーカーに立ち向かう名古屋発の専門メーカー
本コンテンツは、「ITmedia」(アイティメディア株式会社)に2017年2月3日に掲載された記事のオリジナル原稿です。
ディレクター 大場美子



 「ピンポンは、アイホン」というキャッチコピーを聞いたことはないだろうか。一般的な知名度は低いが、アイホン株式会社はトップシェアを争うインターホン一筋のメーカーだ。名古屋市に本社を置き、創業約70年。ふだん何気なく玄関の出入りに使っているインターホンのおよそ2分の1はアイホン社製のはずだ。冒頭のキャッチコピーはラジオ宣伝のオリジナルCMソングの最後に流れている。

 アイホンのユニークなところは、インターホンという特定の商品カテゴリーに集中していることと、自社製品とそのブランドへのこだわりの強さにある。それは、アイホン創業の歴史に育まれて、商標をめぐる世界企業との攻防に表出している。


アイホンのブランド(商標)へのこだわり

 アイホンは、1948年に先代社長の市川利夫氏が名古屋に東海音響電気研究所を創業したところからはじまる。当初は、ラジオや拡声器の組み立て、修理を行っていた。その後、下請けから脱却し最終製品メーカーとして生き残る道を模索した。しかし、自社でラジオ製造の準備をはじめた直後に、三洋電機からプラスチックラジオ1号機が発売され、その完成度の高さにアイホン社はラジオ製造を断念した。

 「大手が手を出さない商品は何か」を考え抜いた結果が、当時国内メーカーが未参入だったインターホンだったという[1]。1951年、インターホンの生産を開始。1952年には愛興高声電話機合資会社に社名変更した(高声電話機とはインターホンのことである)。好景気の波に乗り、旅館や病院などで引き合いが急増して、飛躍的に業績が拡大していく。1954年、製品名を「アイホン」(社名の一文字"愛"とインターホンの"ホン"を組み合わせた)と改称し、同時に「アイホン」を商標登録している。1956年にナースコールインターホンを納入、1959年には社名をアイホン株式会社とした。現在から58年前のことである。

 既に知られている商標に関わるエピソードがある。2008年3月、アイホン社から「商標に関するお知らせ」というニュースリリースが出ている(同社HPより)。「アイホン株式会社は、Apple Inc. と同社の携帯電話『iPhone(アイフォーン)』の商標に関し、弊社が保有する国内および海外の商標権について交渉を行ってきました。このたび、両社は、日本国内においては弊社がApple 社に使用許諾を、日本以外の地域においては両社の商標が共存することで友好的な合意に至りました。」という内容だ。あのiPhoneがカタカナ表記で「アイフォーン」になっている所以である。

 アップル社がアメリカで初代iPhoneを報道発表したのが2007年1月、発売が2007年6月、日本市場には2008年7月にiPhone 3Gで参入した。2006年9月には日本で「iPhone」の商標登録を申請したが、既にあったアイホン社の登録商標に類似しているとの理由で特許庁が拒絶した。そのためアップル社は自社による商標登録をあきらめ、アイホン社から独占的使用権を得るために交渉したと推測される。前出のリリースにあるように、アップル社のiPhoneのカタカナ表記を「アイフォーン」とすることと、アイホン社が「iPhone」の商標をアップル社にライセンスすることに合意する。

 以来、アイホン社はアップル社からロイヤリティ収入を得ているようだ。実際アップル社のリリースやiPhoneの外箱の裏には、「商標『iPhone』は、アイホン株式会社の許諾を得て使用しています。」と明記されている。

 また、アイホンは1970年にアメリカでAIPHONE U.S.A.,INC.を設立。海外では「AIPHONE」の商標権を得て(日本国内では1966年に英文商標「AIPHONE」登録済)、現在70ヶ国で製品を販売している。アメリカにおいては「ピンポン」というアイホンの呼出音を「音」の商標として登録した。日本でも2014年の商標法の改正により、「音商標」が2015年4月から登録できるようになり、「ピンポンはアイホン」の音商標が出願され現在審査中である。

 アイホン社は、一貫して大手との差別化を図り、「アイホン」ブランドによってインターホンを一般家庭に普及させた。トップメーカーとして約70年かけて市場を作りあげてきたといえる。しかし、数年前から大手メーカーが本格参入し、その地位が揺らいでいる。


国内ではシェア争いが激化。アイホンの生き残り戦略は
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参考文献

[1]  『素顔のけいざいじん5』(2007)中部経済新聞社
アイホン株式会社HP アイホンの歴史
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