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(2013.04)
ネクスト戦略ワークショップケース報告「市場プラットフォーム発想の事例に学ぶ」
前編: 市場プラットフォーム発想で、ビジネスモデルそのものを変える
ビジネスディベロップメントマネジャー 合田 英了

本コンテンツは、2012年11月20日に行われた当社イベント「ネクスト戦略ワークショップ 不況対策集中コース 激変期の市場深掘り戦略」の講演録と、同日使用したプレゼンテーションをもとに構成したものです。
>> 後編: プラットフォーム発想を取り入れて、事業を活性化する


 今この不況下で収益をあげている企業が、実際にはどのように市場プラットフォーム発想をビジネスに取り入れているのかご紹介していきます。紹介する企業事例はいずれも、ITやソフトウエア、卸や小売といった特定の業界に限られる話ではありません。市場プラットフォーム発想は、メーカーや、その他の色々な業種で取り入れることが可能なモデルです。いくつかの事例を通して、ご自身の会社ではどのように応用すればいいのかを考える手掛かりになれば幸いです。

 まず、ビジネスモデルそのものを市場プラットフォームにしてしまった事例ということで、アマゾン、森ビル、JR東日本、の3社をご紹介します。

アマゾン
 ひとつ目は、アマゾンです。アマゾンの売上高は全世界で480億ドル、世界最大の小売業であるウォルマートは4,200億ドルですので、アマゾンのボリュームは、ウォルマートに比べて約10分の1となります。しかし、昨今の伸び率には断然違いがあり、ウォルマートは前年比8%、アマゾンは前年比41%のペースで伸びています。2024年にはこの2社の売上が逆転するという試算もあります。また、アメリカに"ターゲット"というディスカウントストアがありますが、そこでは「競合のレジをみすみす店頭に置いているようなものだ」ということで、キンドルの販売を中止したそうです。ウォルマートやターゲットを含む世界の小売業が、軒並みアマゾンに対して脅威に感じているようです。
 アマゾンが実際にどのようなビジネスをしているのかというと、私たちがよく知っているのは、書籍の通販です。作家やライター、出版社がコンテンツをつくり、印刷会社や製本工場で本にして、書籍の卸をおこない、アマゾンがお客さんからの決済に応じて配送するという流れです。アマゾンには16カテゴリーにわたる商品があって、現在ではおよそ5,000万アイテムを扱っています。
 それからアマゾンは電子書籍販売も行っています。話題のキンドルは、端末が7,980円、日本でのコンテンツ販売は5万アイテムほどでスタートするようです。端末の初回出荷分は早速売り切れだそうですが、この端末の規格も書籍の電子化フォーマットも、基本的には全部アマゾンが考えています。そして、コンテンツを端末で見られるような仕組みを通じて配送し、利益を得ているわけです。
 このアマゾンの通販事業・電子書籍販売事業での売上は、全体の約6割だそうで、残り4割についてはまた別の顔があります。それが、第三者の取引を仲介するビジネスの「マーケットプレイス」です。古本や中古CD・DVDなど、誰かが出品しているものを買うシステムで、マーケットプレイス上で出品者と消費者とをマッチングして決済するビジネスです。アマゾンは大きな倉庫を持っていて、配送も自前でやるという話は有名ですが、倉庫も配送システムも使わずに、出品者と消費者をつなげるだけのビジネスにして儲けています。
 マーケットプレイスのビジネスは、配送コストがかからないので、高い収益率で回っているはずです。アマゾンは、マーケットプレイス事業を2017年までに全体の55%を超えるようなボリュームにしていきたいという計画を立てています。従来は小売りモデルだった会社が、市場プラットフォームを取り入れることによって大きな収益を得て、成長をしている例です。

 では、マーケットプレイスとはどのような仕組みになっているのでしょうか。
 毎月アマゾンにアクセスする人は、日本だけでも月間延べ4,300万人ほどだそうです。すると、「それだけ利用者がいれば、自分の家で眠っている本も誰かが買ってくれるだろう」ということで、どんどん出品者が出品してきます。本やDVDや電化製品など、出店数が増えれば、「アマゾンに行けば、ブックオフになかった商品があるかもしれない」と思う人も増え、どんどん消費者も集まってくるようになります。出品者が増えるほど消費者も集まり、消費者が増えるほど出品者も集まるという、外部性が非常に強く働くシステムを持っているのです。
 実際にマーケットプレイスが持っている機能は「マッチング」と「決済システム」です。家に眠る本を買ってくれる人を探すのはとても大変ですが、この仕組みに入ることで、アマゾンがお客さんを探してくれるわけです。本を売りたい人のサーチコストを削減してくれるのです。もう一方、消費者側としては、出品者がたくさんいるから、一人一人と決済するとなれば手間が増えます。これを、アマゾンを通せば決済が1回で済むことになるのです。このように、マーケットプレイスでは、出品者のサーチコストを下げ、消費者の重複コストを下げる機能を持っています。
図表1.【アマゾン】マーケットプレイスの
プラットフォーム
 消費者が実際に商品を買うときには、出品価格+配送料を支払うようになっています。ここで回収したお金は、実は出品者にそのまま渡るわけではなく、様々な手数料が引かれることになっています。販売手数料が15%、カテゴリーの成約料が60円、それから、基本成約料が100円。例えば1円の本が1冊売れると、160円ほどはアマゾンに入ってくるわけです。アマゾンは、出品者と消費者をつなぐことだけしかしていませんが、非常に高収益な仕組みを持っています(図表1)。

 この仕組みがなぜ成功したのかを考えていくと、三つのことが考えられます。ひとつ目は、やはり、小売モデルでたくさんの顧客基盤を作ったことが大きいです。4,300万もの利用者は大きな強みです。この顧客基盤をもとに、市場プラットフォームの機会を見つけ、ビジネスをつくり出したこと、そして、うまくネットワーク外部性を取り込んだことが成功のポイントだと思います。ふたつ目としては、ビジネスを実現するために、出品者と消費者をつなぐ機能、特に取引コストを劇的に減らす機能を開発したことです。最後に三つ目として、マーケットプレイスでの品揃えがロングテールになっていることです。書籍をはじめ、家電や文房具、食料品に至るまで17カテゴリーと多様ですし、書籍だけでも60万点という膨大な品揃えが強みです。
図表2.【アマゾン】成功のポイントと課題
 今後の課題としては、ネットワーク外部性をどう強化していくかということだと思います。楽天やYahoo!もそれなりに策を講じています。例えば、楽天では楽天ポイント、ヤフーではTポイントを取り入れて、スイッチングコストを高めることでお客さんが離れないような仕組みを作っています。それから、楽天のオークションサイトを見ると、最近は中古車や衣料品、家電製品、家事サービスまでやり取りするようになっていて、どんどんロングテールの競争が広がってきているようです。このような競合相手がいるなか、アマゾンは現在のネットワーク外部性をどう強化していくか、対策を打っていくことが必要かと思います(図表2)。

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